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リリィは不老不死の魔女のようです  作者: パンダ小太郎
第二章 吸血族の里
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第四十九話△決意



隣に座り同じようにご飯を食べていたバーグが私に話しかける。


「なぁ、嬢ちゃんは……人間なのか?」


「ううん。あたし吸血族。見た目は…違うけど…。」


「へ〜そうなんだ!世界って広いね。吸血族はみーんな黒い髪に赤い目を持ってて、目が合うとすぐ攻撃してくるのかと思ってた。メルリーナみたいに穏やかで可愛い子もいるんだね。」


「メルリーナちゃんは吸血族の里には住まないのかい?確か、吸血族はみんな一緒に住む種族なんだろう?……それとももうここがすでに里の中とか!?」


「嘘だろおい!」


確かに吸血族は排他的な種族なため、里の内部と外部を視覚的に遮断する結界を張っているが、知らずに里に入り込んでしまうケースも極稀に存在する。でもこの場所はその里と距離的には近いが内部では無い。


「違う。でも近い。早く帰った方がいいよ。」


吸血族は人間よりも、魔力量、身体能力がともに優れている。その上、人族とは良好な関係ではないため、人間は吸血族と会ったらまず逃げることに全力を注ぐのが普通だ。


「え、近い!?あ……そうなんだ。……実は、昨日俺たちで話し合ったんだが、俺たちはこの後すぐ街に戻るんだ。お節介かもしれないけど、メルリーナちゃんも一緒に来ないかい?吸血族だとしても君が小さな女の子であることには変わりないと思うんだ。それに君は他の吸血族とは少し違う気がするしね。」


「吸血族だが何だろうが、嬢ちゃんみたいな子供をこんな森の奥に残して帰るのは……なぁ?それはなあ、ほら………あ、あれだ、ほら、男の名が廃るぜ。」


「あんた、今忘れてたでしょ。」


「な!!んなわけ…ねえだろ……。」


本音を言えば一緒に行きたかった。初対面のときにあった恐怖心は嘘のように消えてなくなり、あたしはこの三人の会話が心地よく感じ始めていた。でも、それでも、


「あたしは……行かない。やらなきゃいけないことが、あるの。」


あたしの心はすでに決まっていた。この三人が羨ましかった。私も色々な人と話して色々な場所に行ってみたい。そんな気持ちがあたしの中で大きくなっていた。


三人は戸惑いつつもあたしの意思の強さに根負けし、渋々ながら約束通り朝ご飯を食べた後すぐにどこかに行ってしまった。きっと街に戻ったのだろう。たった数時間の出来事だったはずなのに物音のしなくなった静かな小屋の中に戻ると途端に寂しく感じた。


ずっと当たり前のようにこの小さな小屋に籠もって過ごしてきたけど、やっぱり納得いかない。自分がここにいなければならない理由と、今ではぱったり来なくなってしまったおじいちゃんが今どうしているのか、それから…たまに思い出す優しい顔をした女性の正体が知りたかった。


とりあえず、吸血族の里に行って様子を見てみよう。何か分かるかもしれないし。


あたしは姉との約束を破り、小屋から飛び出し吸血族の里へと向かった。それは丁度太陽が真上にある時だった。




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