第12章-41 アカネの心配
「アカネさま……」
ふたりは馬車のそばまで歩いていた。ハシドイとシラフジがその数歩後で立ち止まる。
アカネはフヨウを振り向くと、笑みを浮かべた。どこか困ったような、情けなさそうな表情で。
「愚かでしょう」
その言葉に、フヨウは一瞬、驚いてアカネを見やり、それから慌てて首を振った。
「そのようなこと……」
フヨウはアカネの手を取り、ぎゅっと握りしめた。今度はアカネが驚く番だった。
「アカネさまの御心配は、母として当然のものかと存じます。我が子の行く末を憂うことのない母がおりましょうか。わたくしには母がおりませんが、アカネさまのお気持ちはわかる気がいたします」
「ありがとう」
アカネもまたフヨウの手をきゅっと握り返した。
「それにね、守護精さまに見初められたからには、あの子はいずれ国王になるのでしょう。牧童育ちのあの子が、国王になるなんて、いまだに信じられないのですよ。あの子に、国王なんて務まるのかしら、と」
「守護精さまが選ばれたのです。ライモンさまはきっと善き王になられると思いますわ」
フヨウの言葉に、アカネはふっと微笑んだ。
「陛下のお姫さまにそう言っていただけるなんて、ライモンはずいぶんと高く買われているのですね。それが買い被りではないといいんですけどね。私は今までのライモンを見ていますからね、つい心配してしまうのですよ」
アカネはふたたび小さく笑った。
「心配しすぎだと思われるでしょうね」
「そのようなことは……」
フヨウは二、三度首を振った。それかややさみしげに目を伏せた。
「わたくし、ライモンさまがうらやましいですわ。アカネ様のような母御をお持ちになっていらっしゃるのですもの。ライモンさまとアカネさまを見ていると、母がいるということは、このようなことかと思ってしまいます。母がいれば、アカネさまのようだったのかと思いますわ」
「そういえば、お母様がいらっしゃらないとか。でも、確かライモンは陛下の行列に王妃様がいらしたと言っていたような……」
「ああ」
フヨウはつぶやくように言って微笑んだ。
「それは叔母だと思います。わたくしと同じ馬車に乗っていましたから、ライモンさまはそう思われたのでしょう。街のものもそう呼んでいましたね」
「まあ、叔母さまでいらっしゃったのですね。王妃さまは亡くなられていらっしゃるのですか」
そう言った後、アカネははっとしたように口元に手を当てた。それから恥ずかし気に頬を染める。
「ごめんなさい、質問ばかりで。気を悪くされたでしょうね」
「いいえ、そのようなことはありませんわ」
フヨウは再び首を振る。アカネに静かに微笑んで見せた。




