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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第12章

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第12章-38 前途多難?

 「モエギ?」


 「はい。守護精さまは代々の記憶を引き継ぐと伺っております。王宮のことならば、あの方が一番詳しいかと」


 「全部ではありませんよ」


 ハシドイの言葉に、かぶさるように応えたのはその守護精だった。いつの間に戻ってきたのか、モエギはライモンの隣で苦笑するように口元を上げていた。


 「ですが、今のライモンよりは詳しいと思います。そうですね、今からでも王宮での言い回しや言葉遣いを練習しましょうか。慣れていないと、すぐには使えませんからね」


 と、今度はライモンに笑みを向ける。ライモンが嫌そうに眉をしかめたが、それは意に介していないかのようだった。


 「俺がかよ……」


 「大丈夫ですよ、練習相手もいますからね。届いた荷物の中に、本もありました。少しずつ学んでいけばいいのです。ね、ライモン」


 苦虫をつぶしたように、ライモンはむーとつぶやいた。おそらく、モエギは容赦のない先生になるような気がしてならなかった。


 それから、ふとモエギの言葉に違和感を覚えた。


 「練習相手? 誰がだ。あ、シラフジさまのことか?」


 ライモンの言葉に、ハシドイが変な音を立てた。まるで笑いがこみあげて、押さえきれなかったかのようだ。ハシドイはこぶしで口元を覆い、それから「失礼」とつぶやくように言って軽く頭を下げた。


 「まあ、あまり長殿には期待なさらないほうがよろしいかと。陛下にもあけすけな物言いをされる方ですので」


 「そうなのか?」


 ライモンは少しだけ目を丸くして、モエギのほうを見やった。モエギは苦笑して肩をすくめる。


 「そのようですね。ですが、シラフジさまを指したわけではありません。まあ、シラフジさまがここにいらっしゃる間は手伝ってくださると思いますけどね」


 モエギが笑ってそう言うと、ライモンは両手で顔を覆いたい気分に襲われた。


 「俺、前途多難?」


 つぶやくようにそう言うと、それが聞こえたのか、モエギが小さく笑う。ハシドイはうつむいて肩を小さく震わせていた。セイジュはにやにやと笑っている。


 ライモンがうーとうなっていると、突然。


 「あ、姫さま」


 セイジュがこちらに向かって歩いてくるフヨウの姿を見つけて、手を上げて声をかけた。ライモンがそちらを見やると、彼女と、その後ろからアカネとシラフジがゆっくりとこちらに向かっていた。


 ライモンは小走りに彼女のほうに向かう。ハシドイとセイジュ、モエギは少しゆっくり目に後に続いた。


 「お待たせして申し訳ありません、ライモンさま」


 「あ、いや、待つというほどでは……」


 笑いながら、少し息を切らしながら言うフヨウに、ライモンは戸惑いながらも返した。それから再び口を開く。


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