表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第12章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

562/605

第12章-33 うらやましい

 「わたくしたちは知らないことが多くて。でも、それはこれから知ることが、学ぶことができます。知らなければ、知ろうとすればよいのですから」


 「そうそう」


 ライモンは少しおどけたように言った。


 「知らない分だけ、俺たちは成長できるんです。そう思えば、知らないことが多くても、知ることがたくさんあって得だと思いませんか」


 「そうですわね」


 フヨウはうなずくと、ライモンを少しまぶし気に見やった。そのややすねたような、うらやまし気なまなざしに、ライモンはちょっと首を傾げた。


 「フヨウさま?」


 「わたくし、ライモンさまがうらやましいのですよ」


 「俺が?」


 フヨウがこくりとうなずく。


 「ライモンさまはここで生まれ、暮らしてきた中の体験や知識をお持ちです。それは、わたくしにないものですわ。とても貴重なものをお持ちですのね」


 「俺の?」


 ライモンは心底驚いたように彼女を見つめた。目が丸く見開かれている。


 「でも、俺にはなんていうか、教養とか学問とか礼儀作法とか、そういった多分王宮で必要となるものは、なに一つ持っていませんよ」


 「いいえ」


 フヨウは静かに首を振った。それから優しいまなざしでライモンを見つめる。


 「わたくし、ここをほんの僅か、のぞいただけですが、ここでの体験がとても貴重で、大切なものと感じましたわ。ライモンさまにとっては、ここでの暮らしは生活でしかないのかもしれません。ですが、王宮のもの誰一人として、そう、学びの塔の教師たちですら持ちえない知識と経験をお持ちです。これは得難いものだと感じておりますの」


 「俺の暮らしが?」


 「はい。父もわたくしもそうですが、王宮でいるものたちは誰ひとりとしてこのような暮らしをしたことがあるものはおりません。むろん、ここの領主のように地方に領地を持って、そこで暮らすものもおりますが、民に交じって暮らすものはいないでしょう。ライモンさまのように、大地に根差して生きることを知るものは、いないのですよ」


 フヨウの言葉に、ライモンは返す言葉を持たなかった。


 「それが良いとか悪いとか、そういう話ではないのですよ。ですが、国を支える民がどうやって生きるのか、実際に知っていることは、ライモンさまにとって強みとなりましょう」


 「強み?」


 「ええ。誰も知らないことを知っているというだけで、ライモンさまは有利、ということですわね。それは将来、政を行うときに生きてくるかと思います。ですから、わたくしはライモンさまがうらやましいのですわ」


 そういって、フヨウは小さく笑う。ライモンは少し呆然としたようすで彼女を見つめていたが、やがて髪をかきながら首を横に振った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ