これからのこと、これからの二人
甘い!と感じて貰えると嬉しいです。
さて、風呂も入ってさっぱりしたし、今後の方針を話し合わないとな。
「言葉、今後のこと話したいんだけど、いいかな?」
「うん、大丈夫だよ。準備は出来てるから。」
言葉の了承を得て、僕は話し始めた。
「よし、ならまずはこの周辺を見てまわって得た情報の共有から。取り敢えず、生活に必要な物は大体問題無く手に入りそうだよ。品質も結構良くて値段も良心的だったから、普通に稼げていればここで暮らして行けそうだ。日本での暮らしには流石に及ばないけどね。」
「やっぱりさっきはその為に出掛けてたんだ。一人でさせちゃってごめんね。今度は私もついて行くから。」
「いや、気にしなくていいよ。僕が好きでそうしたから。でも、そうだね。次は一緒にまわろうか。僕だけじゃ気付けない事もあるだろうし。」
「うん、約束だよ。……ちょっとデートみたいで楽しみだなぁ……」
「うん?……まあいいか。で、ここからが一番大きな問題なんだけど、稼げる仕事が冒険者くらいしか無かったんだよね。ほとんどのとこが個人経営のとこだし、募集とかも無さそうなんだ。だから結局冒険者やるしか稼ぐ方法は無さそう。」
「そうなんだ。でも私達って冒険者やれる程強くないよね?」
「そこなんだよなぁ。他の人達みたいに戦える力があったら良かったんだけどね。まぁ、そうだったら今ここにいないんだけどさ。」
「う〜ん、じゃあどうしよっか?戦えないと冒険者はきびしいよね。でも、他に稼げる方法無いんだもんね。」
「そこは多分薬草採取とかがあるはずだから、そういうので少しずつ頑張るしかないかな。登録自体は誰でも出来るはずだから、とりあえず登録はしておこう。明日早速ギルドに行こうと思うんだけど、どうかな。」
「そうしよう。やれることからやっていくしかないし。稼がないと今後生活出来なくなるから。」
「じゃあ決まりだね。大体の方針も決まったし、それ以上の事はまた今度考えよう。明日は色々動かなくちゃいけないし、もう寝ようか。」
「うん。」
「あ。」
ここで一つ問題に気が付いた。
「え?」
「そういやこの部屋ベッド一つしか無いんだった。言葉使っていいよ。僕はどこでも寝れないから。」
「そうなんだ……って寝れないの!?」
さらっと言ったけど流石に流されなかったか。
「うん、基本眠り浅くてしっかり寝れたこと殆ど無いんだ。だからどこで寝ても一緒だよ。幸い毛布は余ってるみたいだし、それだけあれば僕はいいよ。」
そう言ったんだけど、
「そっか。あ…のね。綴理くんさえ良ければ、ベッド一緒に使わない?」
「え?」
予想外の返答が返ってきた。
「あ、えっと、どこで寝ても一緒かもしれないけど、やっぱり床で寝たりしたら体痛くなっちゃうよ。それに、くっついて寝た方があったかいよ。今日もちょっと寒かったでしょ?だから、その……」
言葉が早口でそんなことを言った。
途中で恥ずかしくなったのか段々と声が萎んでいったがしっかりと聞き取れてしまった。
だからそれを頭でよく考えて答えを返す。
「……いいの?僕も一応男なんだけど。」
「私には何かされる程の魅力はないよ。告白とかもされたことないし。」
どうやら言葉は男子との関わりが僕くらいしか無かったからか、クラスの男子の間で密かに人気があったことを知らないみたいだ。
僕がクラスで浮いてたのはそもそも合わなかったからなんだけど、その後さらに孤立してたのって言葉と仲良くし過ぎてたからなんだよなぁ。
だからしっかりとそれを認識させようと思って、
「そんなことない。言葉は十分魅力的だよ。告白されなかったのはただ単に皆勇気が無かっただけだよ。」
そう心からの本心と事実を伝えたんだけど、
「あ、ありがとう。お世辞でも嬉しい。でも、綴理くんは何もしないでしょ?」
言葉は簡単には受け入れなかった。まあ普通はそうだよね。なら、
「そんなに簡単に信用しちゃっていいの?襲っちゃうかもよ?」
「……」
急に言葉が静かになった。下を向いて何かを考えつつ、どうするか迷っているようだった。心做しか顔がほんのり紅い気がする。
これは、どっちだ?よく見えないからどっちとも取れる。一応謝っておいたほうが良いか。
「あ…う……ごめん。怖がらせちゃった?ちゃんと離れてるから安心して。絶対に手は出さないから。」
「……」
ヤバい。調子に乗り過ぎたかも。追い出されることも考えとかないと。
「こ、言葉?」
「……よ。」
「へ?」
「襲っても、いいよ?」
「え…。」
今、なんて……
「綴理くんなら……いや、綴理くんだから、いいよ?」
「本気、なの…か?」
「冗談でこんなこと言わないよ。本気、だよ?」
不安げに瞳を揺らしてこちらを見つめる言葉の顔は真剣そのもので、その気持ちが本物だと痛い程理解出来る。表情から気持ちを読み取ることを普段からしている事で、なおさらそれが良く分かってしまった。
女の子にここまで言わせてしまったら、もう引くわけにはいかないな。
僕だって本当は分かってたんだ。他の人の心を読めて、誰よりも一緒にいた言葉だけ読めないなんて事は有り得ない。
言葉はずっと僕に好意を向けてくれていた。直接言ってくれたのは今が初めてだけど、それらしい表情、視線、行動はしていた。
ただ僕が繋がりを失うのが怖くて、ただの勘違いで嫌われてしまうかもしれないのが怖くて、逃げていただけだ。
だから、せめて今は逃げずに全てをかけて向き合おう。
「言葉。」
「は、はい!」
「君が好きだ。こんな僕で良ければ付き合って欲しい。一緒に、物語を紡いでくれないかな。」
「ふふっ、綴理くんらしい、本の台詞みたいな言葉だね。こちらこそ、よろしくね。どんな物語でも、ずっと一緒だよ。」
そう言って瞳を潤ませ笑いかけてくれた言葉の顔は、窓から差し込む月の光に照らされ儚さを感じさせつつも、それでいて目が離せなくなる程の存在感があった。
今まで出会ったどんな笑顔よりも魅力的だと思った。
「言葉っっ!」
「ふぇっ?」
言葉を抱き締めた。どうしても我慢出来なかった。言葉に触れたくて、その存在を感じたくて、今まで目をそらしていた分止まれなかった。愛しさが涙に溶けて、こみ上げては溢れていく。今までこんなに人を愛おしく思った事があっただろうか。絶対にないと言い切れる。一番長く一緒にいる家族にすら愛情はなかったのだから。この愛しさだけは絶対に失いたくない、何があっても失わせない。そんな気持ちを込めて、伝わる事を願って、言葉を抱き締め続けた。
「綴理くん、ありがとう。ずっと、ずっと一緒だよ。これからも二人で、ね。」
そう言って言葉は僕の背中を撫でてくれた。僕の涙が止まり、溢れ出す気持ちが落ち着くまで、ずっと。
気持ちが落ち着いた僕は、今日一日の疲れもあって、すぐに眠りについた。
一つしか無いベッドの中で、僕の手はしっかりと言葉の手と繋がれていた。
この日は久しぶりに深い眠りについた。
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