強兵加速
今週はコロナウイルスワクチン接種をして数日間動けず更新が今日になってしまいました。すみません。
今日は一般騎士に対しての訓練を始める日だ。遂に国の戦力の殆どに対しての強兵策か。既に精鋭部隊では結果を出しているからある程度は自信があるけれど、それは彼らが特に優秀であり理解力の高い人たちであったことも多分にある。だから今一度気を引き締めて訓練に望まなければ。
「言葉、ティア、準備はいい?」
「うん。」
「はい。」
「それじゃ、行こうか。」
二人と固く手を繋いで自分を奮い立たせ、いつもとは違う訓練場へとぐっと足を踏み入れた。
そこでは既に訓練が開始されていた。騎士たちの真面目さを感じさせる大きな声が響き渡り、剣を打ち合わせる音がそこかしこから聞こえてきていて、精鋭部隊の時に感じた訓練に対する真摯さがその下でも変わらないということがよく分かった。これならきっとここでも受け入れてもらえるだろう。
「にしても聞いていた通りかなりの人数がいるな。」
ざっと学校一つ分くらいかな?これで日に分割してるっていうんだからだいぶ多いよね。言葉とティア、とたまに聖奈がサポートしてくれるとはいえ騎士団に関しては基本的に僕しか指導が出来ない。これほんとに僕一人で大丈夫かな………
「いや、その為に必要なものは手に入れたし、精鋭部隊の指導の中で僕自身も成長した。より的確に分かり易く効率的に出来る筈だ。」
今一度頭の中でこれからの流れを確認しつつ、改めて訓練場の中を進んで行く。
それから間もなくして目的の人物の下に辿り着いた。
「はじめまして。本日からこの訓練に参加するツヅリと、横にいる彼女がコトハです。それと、」
「私もツヅリさんの補佐として参加します。立場のことは一度無しにして一緒に頑張りましょう。」
僕の紹介に続いてティアが挨拶をする。
「ああ、あなた方が。それに、ティア様もご参加なされているというのは本当だったのですね。私はラグナ団長率いる第零騎士団所属で、この第一騎士団を任されているレン・スカルディアと申します。これから宜しくお願いします。」
「こちらこそ宜しくお願いします。そういえば第一から第五までの各騎士団長は第零から派遣されているんでしたね。」
そう。この国の騎士団は五十名程の精鋭部隊である第零騎士団を核とし、そこから選ばれた五人の団員を団長として第一から第五までの騎士団が編成されている。各騎士団は六百名前後で、第一は剣、第二は槍、第三は弓、第四は特殊武器、そして第五は女性騎士となっている。今回担当するのはそのうちの第一、つまり剣の部隊だ。
「はい。それで、早速ですが訓練について軽くご説明いただいても宜しいでしょうか。一度団員を集めますので。」
「もちろんです。」
「ありがとうございます。」
そうしてレンさんによって訓練が中断され、僕の前に綺麗な隊列が並んだ。
「では、お願いします。」
「はい、まずは自己紹介から。本日からこの第一騎士団の強化を担当させて…………」
それから第零騎士団でしたように説明を済ませて各人の質問に答え、実際の訓練を始めた。
「貴方は左側に重心を寄せる癖がありますね。出来るだけ中心に重心を置き、あらゆる方向へと移動出来るよう心掛けると咄嗟の反応などでの動きの無理が減ると思います。詳しくはこの紙を。」
「貴方はもしかすると剣よりも槍の方が向いているかもしれません。一度第二の方の訓練に参加してみることも考えてみませんか。その他の詳しい内容はこの紙に書いてありますので、それを参考にして下さい。」
「貴方は少し力に頼る癖があります。力があるに越したことはないのですが、せっかくならその力をより効率的に使ってみませんか?詳しい訓練方法についてはこの紙を見て下さい。」
というようにどんどんと個別指導を進めていき、今日の訓練で四十人程にアドバイスをすることが出来た。本来なら実際の動きを見ながら解析し、それから詳しい説明とアドバイスをするからせいぜい出来て一日十五人そこそこなのだが、第零と魔法師団での指導の中で習得したスキルのおかげでこれだけの効率化が可能になった。
そのスキルの一つが『登場人物紹介』だ。このスキルは僕が取得した情報や伝えようと思った点を自動で纏め、紙に印刷することが出来る。直接支援系ではないが、支援する際にこの上なく役立ってくれている。
そしてもう一つ訓練の効率を上げているスキルがあり、『転換の序言』という。これは物語の登場人物が何かを切欠に強くなる展開と似たような現象を作り出すというもので、簡単に言えば僕の指導がより深く迅速に相手に理解されるようになり、指導の成果である才能の開花を後押しするスキルだ。要は潜在能力開花系の支援スキルだね。これと『登場人物紹介』のおかげで一人当たりにかかる時間が大幅に短縮された。この調子なら半年以内には全ての騎士と魔法師への指導を完了出来そうだ。
「今日の分はここまでかな。」
「綴理くん、おつかれ。ほら汗拭いてあげる。」
「ああ、ありがとう。」
「ツヅリさんお疲れ様です。水も飲んで下さいね。」
「うん、ありがとう。」
区切りの良いところで作業を切り上げると、横で様子を見守ってくれていた二人がそうして疲れた身体を労ってくれた。やっぱりこの二人が居てくれると落ち着くな。っとレンさんが来たな。
「お疲れ様です。いやぁ、素晴らしいですね。聞いていた限りではあまりよく分かっていませんでしたが、実際に受けてみるとどれ程画期的な事かがよく理解出来ました。剣技の向上どころかその他の才能の開花までしてしまうとは驚きましたよ。」
「ありがとうございます。僕自身型などは詳しくないのでそれに反してしまう部分もあったかもしれませんが、僕個人の考え方に則って助言させていただきました。それで良い方向に後押し出来たのなら私としても嬉しい限りです。」
「団員も新しい発想を得て今後の訓練への熱が高まっていますし、それを見たこれから指導を受ける団員も期待に胸を膨らませています。かくいう私も貴方の助言により確かな手応えを感じています。是非明日からの訓練も宜しくお願いします。」
「はい、宜しくお願いします。」
ここまで喜んでもらえると頑張った甲斐もあるな。とにかく上手く行って良かった。この感じで明日以降も頑張ろう。
満足そうに訓練場を後にするレンさんを見送り、僕たちも城内へと移動する。
「ふぅ、お腹すいたな。」
「あんまり動いてないけど私もお腹すいたよ。」
「私もです。」
やっぱり訓練の後はお腹すくよね。動く動かないじゃなくて空気感でエネルギー使うもん。
「今日のご飯なんだろ?」
「結構ガツンとしたものが食べたいかも。太るかな?」
「大丈夫ですよ。そこはちゃんと考えてくれてます。気にせず沢山食べましょう。」
「はっ!」
ティアの発言に言葉が何か気付いたような顔をする。
「ティアのその完璧なスタイルは城の料理を食べて育ったから?そういえば私も最近小さかった胸が大きくなってきた気が……」
そして続く言葉に今度は僕が衝撃を受ける。
「なん、だと………」
「どうしたの綴理くん?」
どうしたのじゃない。これは大問題だぞ。
「言葉、今の本当?」
「胸が大きくなったってこと?」
「うん。」
「なんとなくだけど多分。それがどうかしたの?」
言葉はどうやら理解していないらしい。だがこれは大きな問題なんだ。
「どうかするよ。だって大きくなるんだよ?そんなの」
「そんなの?」
「困ります。非常に困ります。」
「なんで?男の子って胸は大きい方がいいんじゃないの?」
そういう人がいるのは確かだ。でもね言葉、僕はそうじゃないんだ。
「言葉のは大きくなられると困るんだよ。確かにどんな大きさでも言葉が好きなのは変わらないけど、僕は今の胸が小さい言葉が一番好きなんだ。」
「そうなの?ティアとか聖奈さんとか胸おっきいしそういう方が好きなのかと思ってた。」
それも間違いではないんだけどもそうじゃないんだ。
「いや、大きいのが嫌いな訳じゃないんだよ。それはそれで大好きなんだけど、言葉に関してはそのままでいて欲しいんだよ。欲張ったことを言ってる自覚はあるけど小さいのと大きいの両方欲しいんです。」
「そ、そうなの?」
「うん。女性の胸には夢と希望が詰まってるんだ。大きな胸には男としての夢が、小さな胸にはこれから大きくなるかもしれないっていう希望を孕んだ発展途上感があってどっちも魅力的なんだよ。これは簡単に選べるようなものじゃないんだ。少なくとも僕にとっては。」
僕は珍しく自分の性癖を力説した。それはもう残りの体力を使い切る勢いで。それを受けて言葉は、
「そうなんだね。私ずっと胸が小さいこと気にしてたけど綴理くんはこの胸が好きなんだ。じゃあこれからはもっと自信持つようにする。」
「そうしてくれると僕も嬉しい。」
「それにしても胸の話で綴理くんがここまで必死になるとは思わなかったなぁ。」
「お恥ずかしい限りです。でも僕だって譲れないものはあるから。」
普段は紳士を貫いているけど、本当の僕を見せられる人には隠し事はしない主義なので。後でバレて何か言われるくらいなら最初から全部知っておいてそのうえで一緒にいて欲しい。
「ツヅリさんがそんなふうに思っていたなんて知りませんでした。一応確認ですけど大きいのも好きなんですよね?」
「もちろん。普通の男子ですから。それにさっき言った通りどんな大きさでも僕は皆が大好きだし愛してる。そこはこの先もずっと変わらないよ。」
僕の人生にかけて誓おう。
「そうですか。安心しました。私もツヅリさんが大好きで愛してますよ。」
「私も大好きだよ。そして誰よりも愛してる。」
「こんな変態でも?」
「今更そんなこと気にするような仲じゃないでしょ。」
「それにツヅリさんがエッチなのは今に始まったことではないですし。」
言葉とティアの曇りの無い笑顔で全てを許され、僕も自然と笑顔になる。
「それもそうか。もう十分変態だと思われてるよね。なら今後ともそういうものとしてよろしくね?」
「うん、よろしくね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「じゃあ聖奈も迎えに行きますか。」
「そうだね。聖奈さんにも綴理くんがすごい力説してたこと教えてあげないと。」
「聖奈にもちゃんと認めてもらわないとな。」
「ふふっ、そうですね。」
そうしてまたいつものように魔術学院へと転移した。
「聖奈、迎えに来たよ。」
「あ、綴理君。今日も訓練だったよね。お疲れ様。」
「聖奈も会長お疲れ様。今日も四季さんに魔法教えてたの?」
最近はあの子に付きっきりみたいなんだよな。もしかしなくても聖奈にはSクラスに友達がいないのかもしれない。相変わらず御影先輩は自分の道を突き進んでいるみたいだし。まあ本人が困ってないし別にいいか。
「うん。あの子はすっごく素直だから飲み込みも早くてもう殆ど自分で魔法を組み立てられるようになったんだよ。」
「それは凄いな。今度実際に見てみたいし次の休み辺りいいかな?」
「その時はまた皆で学校行こうね。」
「うん。」
この前潜入した時結構楽しかったからなかなか待ち遠しいな。次は何しようか。後で言葉たちとも相談しないと。
「じゃあそろそろ帰ろうか。」
「あ、ちょっと待って。」
聖奈を連れて城へと転移しようとすると聖奈に止められた。何かあるのかな?
「ん、どうかした?」
「帰る前にキス、して?」
「っ……いいよ。じゃあ」
「んっ………はぁ。ごちそうさまでした。」
「美味しかった?」
「ん、美味しかった!」
はあああああバカップルだぁぁぁぁ!でも楽しい!
最後の聖奈の可愛さに半ば壊れた思考のまま城へと帰った。
城についてすぐに予定通り僕の性癖が聖奈にも説明され、特に何があるでもなく受け入れられた。聖奈も今更だしみたいな顔してたから、どうやら僕は自分が思っていたよりオープンな変態だったみたいだ。
それから皆でお風呂に入って汗を流し、待ちにを食べてほくほくした顔で自室に戻って来た。そのままの勢いでベッドに飛び込むとすぐに眠気に襲われたが、抗う力の残っていなかった僕は素直に飲み込まれることを選択した。
「ごめん、もう寝る。おやすみ。」
「ふふっ、今日一日頑張りましたね。ゆっくり休んで下さい。」
「お疲れ様。明日も一緒に頑張ろうね。」
「治癒魔法かけておいてあげるから、しっかり疲れとるんだよ。」
こうして今日もまた優しさに包まれながら一日を終えられた。つくづく僕は幸せ者だな。
面白い、続きが読みたいと思った方は星やブックマークをつけていただけると幸いです。感想、意見も気軽に書いて下さい。文章力向上の糧とします。
今回で七十部分目の更新でなんとなくきりがいいのでここで一度更新をお休みさせて下さい。
というのも同時に連載中のローファンタジー作品をコンテストに応募したいのですが、現在最低文字数に程遠い状態なんです。なので、そちらの方を締め切りに間に合わせる為、こちらの作品の執筆を控え、一本に集中して書きたいと思っています。
もしかするとたまにこちらの作品の方が書きたくなって書くことはあるかもしれませんが、恐らく更新は後回しになると思いますので、よろしければこちらの作品の続きを待つ間、ローファンタジー作品の方を読んでいただけると私としても嬉しいです。ペンネームは同じなので、作者欄からいけると思います。
完全に個人の都合で申し訳無いのですが、是非そちらの方も応援していただけたらと思います。




