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無詠唱魔法講座(魔皇国出張版)

予定よりかなり時間がかかっての更新となりました。遅くなってすみません。殆ど完成という所で寝落ちし、目が覚めるとデータが全て消え去るという地獄を見たダメージが大きく書き直しが慎重になってしまいました。以後寝落ちには気を付けます。

 皇都観光をした翌日の昼、訓練場に集まった人たちに向けて僕は新しい訓練の始まりを宣言する。


「本日から魔法師団の方々に向けた無詠唱魔法の訓練を開始します。訓練の内容としましては、無詠唱魔法の発動に必要な魔力の動かし方の修得及び無詠唱魔法の理論の理解、最終的には無詠唱魔法の完全修得となっています。一日で可能な内容ではない為、焦らずじっくりと時間をかけて確実に修得していただけるようカリキュラムを進めて行きます。皆さん無詠唱魔法自体初めてだと思いますので、質問がある場合は遠慮せず何時でも質問してください。それでは、訓練に移ります。」


 僕が話を終えると魔法師団の方から声が上がった。


「早速質問してもよろしいでしょうか。」

「ええ、どうぞ。」


 まあ十中八九無詠唱魔法が何なのかだろう。まだ説明してないから全く情報が無いしな。


「ありがとうございます。ではまず無詠唱魔法とは具体的にどのようなものなのでしょうか。」


 だよね。


「そうですね。無詠唱魔法はその名の通り魔法を発動する際に詠唱を必要としない魔法です。魔法にはそれぞれ決まった詠唱がありますが、それはあくまでも魔法の発動を補助するものであり、本来複雑である魔法を簡単にする為のものなんです。ですがこの詠唱にはデメリットもあって、簡単に発動出来るようにする代わりに全て決まった形であり、細かい調整をすることが出来ません。そこで詠唱を無くし細かい調整が出来るようにしたものが無詠唱魔法となります。」


 こんな感じで大体分かったんじゃないかな。どうだろうか?


「成程、詠唱魔法にはそんな仕組みがあったのですか。詠唱を無くして魔法を使うなど考えたこともありませんでしたが、その方がより戦力の強化には繋がりそうですね。」


 取り敢えず納得してくれたようだ。


「他に質問のある方はいらっしゃいますか?」


 一通り周囲を見回したが、特に声を発する者はいなかったので次に進めることにする。


「では改めて実際の訓練を行います。まずは……そうですね。無詠唱魔法を修得するに当たって魔法そのものの理論から説明しましょうか。」


 そう言って隣に視線を送ると言葉が軽く頷いて口を開いた。


「ここからは私が引き継ぎます。まず詠唱魔法を発動する際には魔法陣が使用され、この魔法陣によって発動する魔法がどんな魔法であるかが決定されます。具体的には魔法の属性、攻撃系等のタイプ、出力、速度、形状、含有魔力量、魔力密度等の構成要素が決定され、実際の魔法となって発動に至ります。この時どんな魔法陣を使用するかを指定しているのが詠唱であり、それによってあまり考えずとも魔法を使用出来る様になっています。その仕組みを利用して詠唱及び魔法陣に任せている構成要素の決定を自らすることで、自身の思い描いた通りの魔法を自由自在に使用出来るようになります。これが皆さんに修得していただく無詠唱魔法となります。理論だけではあまり信じ難いという方も多いでしょうし実際の魔法を見れば訓練に対するモチベーションも上がると思いますので、今から私が無詠唱魔法を実演しようと思います。威力が高いので少し離れますね。」


 そうして距離を取った言葉が数秒瞑目し、目を開けると同時に魔法を発動した。



火属性魔法『極炎煌玉アルティメットファイアプラネット



 瞬きの間に小型の太陽が生み出される。それが発する熱はある程度の距離をものともせずに、この場にいる者を一人残さず呑み込んだ。特に最前列の魔法師団長の全身からは汗が止め処なく流れている。最後尾の団員ですら額から滝のような汗が流れていく。そんな状況の中、魔法師団長が声を漏らした。


「これ程までの魔法をほんの一瞬で組み上げたというのですか………」


 どうやら無詠唱魔法の凄さを理解してもらえたようだ。それにあれは言葉のオリジナルだから、あれが紛れもなく無詠唱魔法によるものであるとの証明も出来ただろう。詠唱魔法にはあんなこと出来る物は無いからね。


 少しして言葉が魔法を解除し、次いで氷系統の魔法で周囲の気温を適温まで下げる。それから一つ息を吐いて言葉を紡ぐ。


「これが無詠唱魔法です。皆さんも無詠唱魔法を修得し、鍛え上げて行けば同様のことが出来るようになります。流石に先程の魔法は制御や明確なイメージをすることが難しく容易ではありません。しかし不可能という訳でもありませんから、是非積極的に無詠唱魔法を修得していただけたらと思います。」


 その言葉を聞いた魔法師団の人たちは先程までの信じ切れないような表情から一転して、皆やる気に満ち溢れた顔をしている。


 よしよし。まずはしっかり興味を惹きつけられたな。あれぐらいやる気を出して貰わないと序盤の訓練をやりきるのは難しいだろうからな。


「皆さん興味を持っていただけたようなので、実践的な訓練を始めたいと思います。まずは無詠唱魔法を組むのに必要な魔力操作を覚えていただきます。これは体内を循環している魔力を制御し自らの意志で望んだ形に動かす技術です。既に出来る方は次に進めますが、修得済みだという方はいらっしゃいますか?」


 言葉が魔法師団全体を見回して尋ねたが手を挙げる者は一人としていなかった。やはりそもそも無詠唱魔法以外では魔力を操作する必要が無い為に発想そのものが初めてのことらしい。


「分かりました。ではゆっくりと時間をかけて覚えていってください。とはいえ目指す完成形が分からないと鍛えようがないですよね。ですから私たちが一人一人個別に回って直接魔力操作の感覚を教えていきます。三人しかいないので時間がかかりますから、順番が回ってくるまでは休憩時間とします。その間通常通りの訓練をしたいと考える方もいらっしゃるとは思いますが、訓練の為に魔力と体力を万全の状態にしておいて下さい。恐らく全て使い切ることになると思いますから。」


 そう前置きをして僕たちは一人一人に触れて体内の魔力を動かして回る。


「これはまた変な感じがしますね。むず痒いというかなんというか。」


 初めて魔力を動かされた彼らは皆等しく戸惑いを浮かべていた。無理もないだろう。身体の中を自分の意志とは関係なく動き回られるのだから。そうして幾許かの気持ち悪さに耐えてもらいつつ魔力を動かすとはどういうことかを身体に覚えさせていく。

 

 その後は只管覚えた動きを反復して徐々に自分の意志で循環を制御出来るようにしていき、最終的にはそれを用いて魔法の組み立てを行えるようにする。それが出来たらオリジナルの魔法を考えて実際に使ってみる。そうして晴れて訓練は完了だ。


 後は日々鍛錬を積み精度と速度を上げていけば、いずれ自由自在に魔法を扱える様になるだろう。流石に言葉レベルになるには特別な魔眼かスキル持ちでもないと難しいけどね。


「さてと、これで全員回れたかな。」

「あとは適度に見て回りつつ、各自頑張ってもらうしかないね。私たちは一旦休憩挟もう。自分の魔力を動かす時と比べてかなり消耗したし。」

「そうですね。次の段階に進める方が出た時の為に準備をしておく必要もありますから。今は回復に努めましょう。」


 こうして僕たちは一先ずの休憩を取った。その間、前に御影先輩たちに無詠唱魔法を教えた時の事を思い出して話をする。


「聖奈と御影先輩は結構早い段階で魔力操作覚えたよね。勇者ってやっぱり成長補正かかってるのかな。特に優遇職だし。」

「それもあるけど、聖奈さんたちが元々優秀っていうのもあるよね。理解力とか特に重要だし。」

「あとは詠唱魔法に触れる機会が少なく癖があまり付いていなかったのもあると思います。私もそのせいでやりづらいと思う所もありましたから。」


 そっか。その点僕たちはこの世界に来てそんな経ってないし、日本にいた時のラノベとかの知識で無詠唱とかの発想を受け入れ易かったのかも知れないな。


「それを考えると今日は魔力操作をマスターする所までで終わりかな。それでも全然問題無いんだけど。」

「そうだね。ゆっくりやっていこう。」

「はい。」


 それから時々訓練のサポートをしつつ次に教える内容を整理して、訓練時間の7割程が経過した頃、遂に魔力操作をある程度安定して行える人たちが出てきた。


「思ってたより早かったな。じゃあ少し休憩を挟んで詠唱魔法の再現に移りますか。」


 僕たちは魔力操作が十分出来ていると判断した人から順番に次の指示を出していく。


「流石は師団長ですね。一番乗りです。」

「そうですか。それは素直に嬉しいですね。それで次はどんな訓練を?」


 顔の汗を拭いつつ、やる気に満ちた顔でそう聞く師団長は新しい遊びを見つけた子供のように楽しそうだった。本当に魔法が好きなんだな。


「次は詠唱魔法の無詠唱再現です。本来同じようにしなくても無詠唱魔法は再現出来ますが、それには明確なイメージが必要です。なので最初は型にはめられた物を真似るところからやってみましょう。魔法陣の各部分の意味を一つずつ確認しながら同じように魔力を流して発動するんです。それがスムーズに出来るようになったらあとは最終段階の訓練です。」

「分かりました。今日中にそこまで到達出来るよう挑戦してみます。」

「応援しています。」


 そうして師団長と別れてから、特例でこの訓練に参加している騎士団長の所に顔を出す。


「ラグナさん、どうですか?」

「ああ、君が言っていた通り私は魔力操作が比較的得意なようだ。」


 成程、一昨日視て予想した通り上手く魔力操作出来ている。


「かなりスムーズに制御出来てますね。これなら先に進めますよ。次は詠唱魔法の無詠唱再現をして行きます。魔法の各要素をイメージしながら発動時の魔力の動きを真似てください。それが安定して出来るようになったら最終段階に進み、型のない完全オリジナルの魔法を組み立てます。恐らくですが、ラグナさんの場合は早い段階でオリジナル魔法を組み立てる感覚を掴めると思います。最低限出力、形状、速度、含有魔力量が決まっていれば発動は出来ますのでそれを考慮した上で組み立ててみて下さい。」

「分かった。やってみよう。」


 ラグナさんの素質を見込んで先の段階に必要な情報も伝えておいたが、多分無駄にはならないだろう。あの情報から教えた以上まで理解して自らで成長できるタイプな筈だからな。


 騎士団長に指示を出した後、魔力操作を修得出来た人がちらほらと現れ始めたので、一人一人個別にその人が理解しやすいように指示を出して回った。



 それから時間は過ぎて行き、訓練時間もあと少しという所で師団長が声を上げた。


「出来た、出来ましたよ!」


 額からダラダラと汗を流しながらやりきったという表情を浮かべている師団長の下に行き、労いの声を掛ける。


「お疲れ様です。今日中に出来るようになる方が現れるとは思っていませんでしたよ。ですがこれで次の訓練からはオリジナル魔法の組み立てが出来ます。無詠唱魔法の修得までもうすぐですよ。」

「そう、ですか。ここまで夢中で何かをしたのは久しぶりでしたから、本当に嬉しいですね。」


 そうして師団長は喜びを噛み締めつつ訓練を終え、休憩に入った。その背中を見送り、次に再現を完成させていそうな人に声を掛けに行く。


「ラグナさんお疲れ様です。もう少しで訓練終了の時間になりますが、再現出来そうですか?」

「ああ。再現自体はある程度出来るんだが、自分で魔法を組み立てるのがまだ上手く行かなくてな。どうも安定性に欠ける。」


 やはり見込んだ通りの結果になったな。無詠唱魔法を発動するのに大切なのは魔法への慣れよりも本質の理解の早さだから、この人ならきっとここまでやってのけるだろうと思っていたんだ。


「恐らく安定性に欠けるのは決定する情報の種類が不足しているからでしょう。ここまで進むと思っていなかったので最低限しか伝えていませんでしたからね。明日からの訓練では魔力密度を高めたり、何を目的とした魔法であるかを明確に指定してみてください。治癒魔法であれば切り傷が塞がるイメージや欠損した部位が生えるイメージを、攻撃魔法であれば飛んでいく軌道や着弾したあとに破裂するイメージをする等です。」

「成程、そこまで決めれば安定化出来るのか。ふむ、流石にかなり消耗したし、明日の訓練に響かせるのも良くないだろうから、今日はここまでにしておこうか。特に焦る必要も無いのだろう?」

「はい、寧ろ早すぎるくらいですから。ゆっくり身体を休めてください。」 

「ああ、君たちもな。」

「ははっ、ありがとうございます。」

 

 それからまもなくして訓練時間が終了した。結果としては各団長を含む数人が再現の段階まで進み、それ以外の人たちは魔力操作の修得まで進んだ。皆等しく気力と体力を使い果たしてぐったりとしていたが、同時に達成感に満ちた表情を浮かべていた。


 訓練終了を宣言して解散した後、城の自室に向かいながら三人で今日の訓練を振り返る。


「予定よりだいぶ順調に修得が進んだね。」

「皆すっごく頑張ってたよね。特に団長さんたちは再現を完成させる所まで行ったし。」

「はい、流石のお二人です。」


 本当に予想を超えて成長が早かった。


「この国一番の騎士と魔法師は伊達じゃないってことだね。正直もう少しかかると思ってたけど、教える側としてはありがたい限りだよ。」

「そうだね。」

「明日は皆さん無詠唱魔法の実践からです。恐らく皆さん今日以上にやる気になっているでしょうから、しっかりサポートする為にも私たちも身体を休めておきましょう。」


 ティアの言葉に二人で頷く。まもなく自室に到着した僕たちは聖奈を迎えに行き、四人揃ってお風呂に入った。


「聖奈、今日の学院はどうだった?」

「相変わらず詠唱魔法の勉強ね。無詠唱魔法に慣れてしまうと殆ど役に立たないから、取り敢えずノートを取るだけにしてる。魔法演習の時とかは四季さんに無詠唱魔法を教えつつ一緒に練習してるわ。私たちのクラスは自由行動が許されているからなかなか楽しいわよ。」


 そっか。実乃李さんにも無詠唱魔法教えてるんだ。あの人は聖奈の大切な友達だからな。しっかり自分で身を守れる術を身に着けてずっと仲良くして欲しい。


「それで、綴理君たちは今日はどうだったの?」

「ああ、今日の訓練はね………」


 それから魔法師団の人たちの修得具合と訓練の様子を三人で説明した。


「そっか、順調に進んでるのね。それで休みも結構挟めそうだと。それならまた一緒にデートも出来るのね?」

「やっぱり一人で学院にいるのは寂しいよね。こっそり僕も行こうかな。」

「私もちょっと興味あるんだよね。今度行ってもいいかな。」

「それなら私も行きたいです。」

「ふふっ、じゃあ今度訓練が休みの日にでも皆で行こっか。人が多いから多分バレないと思うし。」


 こうして次の休みの予定が決まった。楽しみだな。



 お風呂から出た後は皆で夕食を食べつつユリウスさんたちに今日の訓練の報告をした。


「今日の訓練だけでそこまで進んだのか。明日の実践を終えたあと何処まで強くなっているか楽しみになるな。」

「すれ違った魔法師団の団員たちもとても活き活きとした表情をしていたよ。君たちに任せて本当に良かった。」


 初日からだいぶ高評価だな。これはしっかり結果も出さないと。


「ありがとうございます。明日からも精一杯努めさせていただきます。」

「ああ、頼んだよ。」



 夕食を終えて自室に戻った僕たちは明日の用意を軽く済ませ、普段通りベッドに入った。そこでふと昨日疑問に思った事を思い出し、聞いてみることにした。


「そういえば言葉ってよく起きたら僕の上で寝てること多いけど、身体痛くならないの?」

「え?あ、うん。直接ベッドに寝るのと比べたら流石に寝づらいけど、綴理くんの上はあったかくて落ち着くから。それにその前に沢山運動してくたくたになって、起きてから治癒魔法かけるからあんまり変わらないんだよね。」


 心做しか言葉の瞳が妖しく光った気がする。気の所為……かな?


「そ、そっか。」

「そうだよ。だからどれだけ疲れても気にしなくていいの。なんならこれからする?訓練は昼からだから時間的にも問題無いけど。」


 ははっ、気の所為じゃなかったね!間違いなくその気だ。


「聖奈は学院あるから……」

「私は出席自由だから昼からの登校でも何も言われないわよ?」

「えっと、もしかして聖奈も結構やる気ある感じ?」

「そう見える?」


 言って聖奈は悪戯な笑みを浮かべた。


 うん、どう見てもやる気だね。そういう目をしてる。


「分かった。ティアは?」

「えっと、お二人がそのつもりなら私もいいでしょうか。」


 なんか忙しくなってから皆その気になることが多くなった気がする。まあ僕としては必要としてもらえて嬉しいからいいんだけど。


「うん、じゃあしようか。でも、誘ったからには覚悟してよ。無理って言っても手加減出来ないから。」


 そう言って僕は普段厳重にかけている理性のリミッターを外し、眠らない夜が始まった。




 思春期の学生って色々と元気だよね。………あれ、僕らだけ?

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