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指導開始

区切り良くしようと思って書いているうちに長くなりました。

 ティアに案内されて訓練場に到着すると、そこには総勢百名程の騎士と魔法師が整列して待機していた。


「人数を見る限りまずは少人数での試験的実施って感じかな?」

「そうですね。この方たちは特に力があり、騎士団と魔法師団の核となる精鋭部隊です。まずは重要な所からということでしょう。お父様から説明はされているでしょうから、早速本題に入って良いと思いますよ。」


 ティアからの後押しを受けて全員から見える場所に立ち、一呼吸置いて声を発する。


「皆さん、はじめまして。私はツヅリといいます。ユリウスさんから説明は受けているようなので、簡単な説明のみとさせていただきます。これから私のスキルを利用して試験的に戦力の強化を行います。詳細は実際の訓練と共に理解していただける様にする予定です。いきなりの試みですが、これから宜しくお願いします。」


 まあ、最初の挨拶としてはこんなものかな。さて、反応はどうか。


「私から少し良いだろうか?」


 騎士団を率いる位置に立っていた、三十代くらいの見た限りかなり強そうな男性が一歩前に出て口を開いた。


「勿論です。」

「ありがとう。私は騎士団長をさせてもらっているラグナ・ハイトロアというものだ。まずは皆を代表して礼を言いたい。ティア様を救ってくれてありがとう。」


 そうして彼が深々と頭を下げると、それに合わせて他の騎士や魔法師たちも頭を下げた。


「ティアはとても慕われているんですね。助けることが出来て本当に良かったです。」

「あぁ、行方が全く掴めず皆とても歯痒い思いをしていたからな。本当に感謝しているよ。それで本題の訓練内容についてだが、具体的にどのように進めていくんだ?」


 まずはそこからだよね。


「私のスキルの特性上一度に全員を視ることはできなくはないのですが、スキルで視るのとは別に私自身の感覚でも見て判断しようと思いますので、一人一人個別に強化をしていこうと考えています。スキル自体についてはその時個別に話します。順番が来るまでは待ち時間がありますので、順番が来た方以外は普段通りに訓練していただければ問題ありません。」

「通常の訓練に君のカリキュラムを組み込む形だな。分かった。では早速始めようか。」

「そうですね。他の皆さんも質問はありませんか?」


 その問いに魔法師団含め全員が頷いたのを確認して、僕も気持ちを切り替える。


「分かりました。始めましょう。」


 こうして少し特殊な強化訓練が始まった。



「まずは私からお願いしよう。」


 そう言って僕の前に立つのは先程話した騎士団長のラグナさんだ。まずは僕がしっかりと役に立つのか自身で見極めようということかな。これは気合を入れていかないと。


「宜しくお願いします。まず、僕のスキルですが、効果は簡単にいえば個人情報の取得です。」

「直接的な戦闘系でも支援系のスキルでもないんだな。」


 予想通りラグナさんは意外そうな顔をした。


「そうですね。ですが情報というものの大切さは理解していただけていますよね。」

「あぁ、勿論だ。だがそれと方向性が同じではないように思えるんだが。」


 確かに普通のところでいう情報の価値というのは戦場での相手の状態や戦略などを予め知る諜報といった感じのものだ。それを考えれば個人情報を知れるのは相手の弱みをついて倒す方向に使えても、強くする方向には使えないように思える。だから当然違和感もあるだろうね。


「はい、また別の方向性ですよ。戦いの際に必要な使い方が出来るスキルもあるのですが、今回は個人の癖や得手不得手、潜在能力を私のスキルで調べ、それに合わせて実戦を交えたアドバイスをしていくというふうに進めていきます。」

「潜在能力もか。自分の癖や得意分野等はある程度理解しているつもりだが、眠っている能力までは分からないからな。それが出来るなら確かな強化が見込める。………なるほど。では実際にやってみるか。」

「分かりました、視させてもらいます。」


 そうして僕はスキルを起動する。



神創真理(ワールドノウン)



名前 ラグナ・ハイトロア

Lv 89

職業 【剣聖】

体力 5730

魔力 4362

物攻 3436

魔攻 2654

物防 3306

魔防 2450

スキル 『魔力回復(中)』『上級剣術』『斬撃』

    『剛力』『瞬歩』『騎乗』『統率』

    『魔剣適性』

魔法 水属性魔法Lv4 風属性魔法Lv5

   無属性魔法Lv6

称号 《魔剣使い》



 これは、強いな。レベルもそうだがそれに付随したステータス値もかなりのものだ。多分この人は僕の強化なしの現時点でも十分に戦える。でも僕が見るべきは今の強さじゃない。これからどれだけ強くなるかだ。


 もっと、詳しく。


 僕はさらに深く情報の海を探っていく。そして、


「………分かりました。では早速実戦で確かめて行きましょう。」

「模擬戦をするのか?」

「いえ、本気で構いませんよ。私自身そこまで強くはありませんが、死なないという点においてはかなり自信がありますので。気にせず全力を見せて下さい。」

「本当に良いのか?」

「はい。」

「分かった、全力でいかせてもらう。」


 そうして少し距離を置いて向かい合い、それぞれ武器を構える。とそこで、


「綴理くん大丈夫なの?いくら綴理くんが特殊なスキルを沢山持ってるとはいえ流石に真剣は危なくない?」


 心配は分からなくはないけど問題は無い。僕のスキルは使い方次第では異常な効果を発揮するんだから。それを今から実践して見せるんだ。


「安心して。僕のスキルにはまだ見せたことない使い方があるから。」

「………しょうがないなぁ。綴理くんがそこまで言うなら信じるよ。」

「ありがとう。じゃあ……」


 言葉とティアがしっかりと距離をとったことを確認し、改めてラグナさんの方を向いて視線を合わせる。


「……………いきます!」


 僕の方から先に仕掛ける。まずはあのステータスがどれくらいのものか体感して確かめるところからだ。手始めに『瞬間移動』で距離を詰めて剣を振るう。


「っ!」


 ガキンッ


 予想していた通り構えていた長剣で受け止められる。それからの切り返しに一度距離を取り直し、再びスキルの連続使用であらゆる方向から斬りかかっていく。前後左右どの方向に対しどう対処していくのか、足の運びはどうか、重心の位置は何処に置いているか、剣を振る力はどのように生み出しているか、慣性力・回転力などの発生した力をどれだけ無駄にせず攻防に活かせているか、動きを読ませない為に急な動作を織り込んで動いているか、そしてそれらの全ての技術度と効率など魔法を絡めない戦闘技術を余さず観察していく。


「私の方からも行かせてもらうぞ。」


 ある程度近接での観察を終えた頃、ラグナさんの動きが少し変わった。恐らくこれまでの攻防で少し残っていた遠慮というものが取り払われたのだろう。


 これは安全用のスキルの準備をしておいた方がいいかもしれないな。


「いくぞ!」


 その声と共に斬撃が飛んできた。遂に攻撃用スキルを使ってきたな。単純ではあるが使う人の技量次第では普通に強力だ。しっかりと見極めて動かなくては。


「ふっ!」


 斬撃の当たるぎりぎりをすり抜け距離を詰めた僕はそれに合わせて『魔法剣』で剣に魔法を付与し、身体を引き絞って振り抜く。


「はあっ!」

「っ!らあっ!」


 ギイィィン!


 やはり受け止めてくる。だがその為の魔法剣だ。触れ合った剣を伝って『雷撃』が流れ込む。


「っ!」


 それに気付いたラグナさんはすかさず距離をとり、去り際に斬撃を放った。


 対応が早いな。それにこの距離での斬撃は避けきれない。元々多少の怪我をしておく予定だったしここは甘んじて受け容れよう。


「がっ!……ィったいなぁ!」

「綴理くん!」


 言葉が焦った声を発したが、ここは堪えて見ていてもらう。


「大丈夫!予定通りだから!」

「え?それって………」


 困惑気味だな。まあ狙って怪我をしに行く変人は僕くらいのものだ。でもちゃんと目的があってのことだから今は見ていて欲しい。


「ぐっ……ァあああっ!」



『超回復』



 多分皆このスキル忘れてたんじゃないかな。固有のスキルが強力過ぎるが故に存在感があまり無かったスキルだけど、このスキル結構強いんだよ?通常スキルなのに部位欠損治せるんだからね?普通にやっても怪我はするだろうしせっかくだからこの機会に鍛えようと思ってたんだよね。という訳で、傷付くのは恐れず積極的に戦っていこう。



 それから暫く攻防を繰り返し、慣れてきたところで僕から質問を投げかける。


「ラグナさん、まだ本気出せますよね。」

「私は今でもかなり本気でやっているが?」

「本来の武器で戦いましょう。私もそれに耐えうる武器に変えますので。」


 言った瞬間、ラグナさんの顔付きが変わった。


「っ!そこまで分かっているんだな。……よし、武器を変えよう。本来殺傷能力が高過ぎることで戦場以外での使用を控えていたんだが、これまでの感じを見るにどうにかする手段があるようだからな。」

「ありがとうございます。最善のサポートの為に出来る限りの本気を知っておきたいですからね。」


 言葉を交わしつつ、それぞれがそれぞれの武器をより上位のものに持ち替える。ラグナさんは魔剣を。僕は聖剣を。



『武装召喚』『聖剣解放』



「それが君の剣か。成程、確かに相当なものだな。それなら私の魔剣で斬りかかっても問題無く受け止められそうだ。」

「聖剣ですからね。それくらいは出来てくれないと困ります。」

「驚いた。それは聖剣だったのか。道理で剣のもつ空気が違った訳だ。」

「ラグナさんの魔剣もなかなかの空気感ですね。心做しか聖剣も反応しているような気がします。全力で戦える相手を見つけたと。」

「そうだな。まだまだ楽しめそうだ。」




 一度戦闘を止め新しく武器を用意し始めた綴理くんたちを見ながら、私はティアに話し掛ける。


「綴理くんたち、本来の目的忘れてないよね?さっきから普通に楽しそうに戦ってるんだけど。」

「恐らく大丈夫なんじゃないでしょうか。お二人共よく頭の回る人たちですから、きっと楽しみながらも最大限の成果を得られるように考えている筈です。多分ですけど……」


 本当に大丈夫かな?ティアも自信なさそうなんだけど。男の子ってなんでこうも戦闘好きばかりなんだろうか?見ているこっちは心配なんだけどなぁ。当人たちがあそこまで楽しそうにしてると止めるのも憚られるから困ったものだ。


「はぁ、しょうがない。満足するまで見守ってあげるか。」

「そうしましょう。私たちではあのレベルの戦いに割って入るのは難しいですしね。」

「そうだね。」


 恐らく死にはしないだろうから言われた通り見ていることにしたけど、綴理くん、大丈夫だよね?




 離れて見ている言葉とティアの方から半分心配半分呆れといった視線を感じた。多分僕たちが楽しそうに戦っているから目的忘れてないよねってことだろう。あとは僕が怪我しまくっているからその心配か。実は今現在スキルの応用で保険をかけてるし、これが終わったあとに同じスキルで怪我も完全に治すつもりなんだけどな。まあなんの説明もしてないからそう思うのは仕方ない。あまり心配させるのも良くないから事前に言っておいた方がいいんだろうけど、ついついサプライズ的な演出をしたがってしまうんだよな。僕の悪い癖だ。今後はもう少し改善する努力をしよう。


「それはさておき、今は目の前のことに集中しないとな。ここからは一切手を抜けない。少しでも気を抜いたら一気に死ねるからな。」

「準備はいいか?」

「問題ありません。再開しましょう。」


 聖剣用に構えを変えてラグナさんを見据える。


 …………来る!


「はあっ!」


 気合と共に振り抜かれた魔剣から衝撃波が生まれ、僕の方へ向かってくる。なら僕も、



『閃光剣』



「ふっ!」


 真正面からぶつけ返す形で衝撃波を放つ。僕たちの間で触れ合れあったそれらは、瞬間的に強い光を放つ爆発を起こした。それを合図にお互いがお互いに向かって走り出す。


「ぁぁあああああっ!」

「おぉおおおおおっ!」


 ガギィイイイイイン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!カッ!キィン!


 先程までの通常の剣での攻防とは比べ物にならない速さで剣がぶつかり合い、その度に凄まじい音と衝撃を発する。それに伴い僅かに躱しきれない攻撃や漏れ出した衝撃波を受け、両者の身体に少しずつ傷が増えていく。その状態が十分程続いた頃、唐突に静かさが取り戻された。


「はぁ、はぁ。………ふぅ。粗方視れました。ここまでにしましょう。」

「そう、か。………はぁ。ここまで本気で戦ったのは久しぶりだ。なかなか楽しかったよ。」

「私も久しぶりに全力で身体を動かせたのですっきりしてます。」


 そうして弾んだ息を整えつつ周囲に目を向けると、いつの間にか皆動きを止めてこちらに注目していた。


「ははっ、これは……やり過ぎたかな?」

「あそこまで派手にやってたら流石に、ね。」

「だよね。」

「ツヅリさんお疲れ様です。身体は大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよ。ほらこうして………」


 ティアに労われつつスキルを起動する。



外界から覗く者(フリーダムキャスト)



 効果は一瞬にして現れた。僕の全身に刻まれた少なくない傷が瞬きの間に消えていく。


「それがはじめに言ってたスキルの新しい使い方?」

「そうだよ。ダメージの情報を無くしたんだ。」


 このスキルの元となる天の声の性質は物語内部とその外側の自分だけの空間を行き来出来ることだ。そこで物語を一つのファイル、その外側の空間をデスクトップもしくは他のファイルと置き換えて考える。それを元に僕というファイル内のダメージというデータを切り取って別のファイルへと貼り付ける。こうすることで僕の身体からは傷という傷が綺麗さっぱり無くなるという訳だ。恰も存在が無くなったように。それに加えて戦闘中は僕の命の根幹、つまり魂という概念を切り取って別のファイルに保存しておき、その制御権のみを残しておくことで、しっかりと存在しつつ致命傷を受けても死なずに済む身体になっておいた。だから一切を気にせず戦うことが出来たんだ。


 簡単な例を挙げてそう説明すると、


「なんかとんでもない事をさらっとやってるね。」

「ツヅリさんですから。」

「だね。取り敢えずは無事だったから良いよ。でもあんまり無茶はしないでよね。信頼してはいるけど心配なものは心配なんだから。」

「ごめん。」


 二人に少し呆れられてしまった。やっぱり死なないとはいえ怪我を全く気にしないというのは見ていて心休まるものではないよな。スキル開発も程々にしよう。


「さて、ラグナさん。私が見た限り動きに無駄というものが見受けられませんでした。力は効率的に運用されていましたし、重心の不自然な偏りもありません。足運びもとても綺麗でした。自分よりも下位の相手であればその戦い方で確実に勝てると思われます。ですが、私のように情報を読み取る眼を持つ相手や上位の相手との戦闘では効率的であるが故に読みやすいともいえます。あまりやり過ぎると型が崩れるので調整は必要ですが、変調も織り交ぜるとより自由度の高く読まれづらい戦い方が出来ると思います。そして、潜在的な能力につきましては魔法の制御の上手さが挙げられます。現時点でもある程度の運用はしているようですが、本来の使い方を知らないことで最大の効果を発揮出来ていない状況です。魔法には適性以外にも理論を体感的に理解しやすいかというものがあり、ラグナさんの場合はその点で優れているのでそれを踏まえた訓練をすれば現在よりはるかに魔法と剣を自在に組み合わせた戦い方が出来るようになると思います。」

「そうか。確かに私は基礎に重きを置いて力を磨いてきたが、そろそろトリッキーな動きも身につける段階なんだな。それに魔法か。あくまで剣を振る上での補助程度に思っていたしそれでも十分役に立っていたが、剣と対等な攻撃手段として運用出来る可能性があるのか。それは自分では気が付かなかったな。」


 僕の分析結果を聞いて、ラグナさんは一つ一つ受け止め精査していく。そして自分なりに納得したようで、顔を上げて僕の方に向き直り口を開いた。


「それで、これからの訓練はどういったものになるんだ?」

「ラグナさんに関してはこれから魔法師団の皆さんに対して実施予定の訓練に参加していただきます。そこで魔法本来の使い方を身に着けていただく予定です。」

「分かった。個人的に剣の訓練をするのは構わないか?」

「問題ありませんよ。」

「そうか。」


 そうして今後の訓練の方針を確認し、ラグナさんへの最初の個別指導が終了した。


 思っていたより時間と体力を使い過ぎたな。今回は騎士団長相手だったからしょうがないといえばしょうがないんだけど、もう少しペースを上げていかないとな。


 それから追加で十人程の指導をし、今日の分は終了とした。


「流石に疲れたな。明日は少し休ませてもらおうと思うんだけど、いいかな。」

「大丈夫だと思いますよ。今は試験的に行っている状況ですからゆっくりやって行きましょう。」

「うん。今日は傍から見てもかなり動いてたから休んだ方がいいと思う。私としてもそうして欲しいし。」


 そう言った言葉は少し口を尖らせていた。


 あ〜、これは思っていたより心配させたなぁ。明日は一日ずっと一緒にいて安心させてあげないと。


「分かった。明日は一日ゆっくりしよう。観光でも行く?」

「そうだね。まだ街の方は見れてないから見に行こっか。」

「では私がオススメの場所を案内します。楽しみにしていてくださいね。」


 そんなふうに明日の予定を立てつつ城の中へと戻って行く。それからお風呂で汗を流していつも通りに聖奈を迎えに行った。




「お待たせ。」

「あ、綴理君。迎えに来てくれたんだね。……ちょっと疲れてる?」


 僕に気付いて駆け寄って来た聖奈は僕の顔を見るなりそう言った。


「そんなに疲れた顔してるのか。まあ確かに結構疲れてるよ。今日は訓練の為に騎士団長と全力で戦ったからね。」

「騎士団長とって、怪我はしてないの!?」

「見ての通りピンピンしてるよ。なんなら隅々まで見て確認する?」


 聖奈がとても心配した顔をしているから、僕は少しからかうようにそう言ったんだけど、


「もう、そうやって誤魔化そうとして。そうするってことは怪我したんでしょ。見た限り傷は無いように見えるけどスキルで治しただけで結構無茶したんだよね?」


 バレてる。完璧に。これは傷が残ってないんだから結果オーライと言っても納得してくれなさそうだ。素直に話した方がいいな。


「ごめんなさい。軽く部位欠損くらいは何回かしました。スキル開発しようと思って自分から当たりにも行きました。」

「え?無茶したとは思ってたけどそこまでしたの?…………はぁ、もっと自分の身体は大切にして。貴方の身体はもう貴方だけのものじゃないんだからね?」


 また呆れられてしまった。慌ててまた誤魔化そうとすると、


「やっぱり分かってないみたいね。それなら私がしっかり分からせてあげる。」


 そう言って部屋にあった聖奈のベッドに押し倒されてしまった。


「聖奈?」

「なあに?」

「言葉たちも待ってるし、こういうのはせめてもっと暗くなってから……」

「拒否権はありません。私から言ったこととはいえ私だけずっと一緒に居れないのは寂しいんだよ?だからこの時間だけは私に一人占めさせて。」


 聖奈の少し拗ねたような甘え方を前にして、僕は抵抗する気が無くなった。だって可愛いんだもん。ただでさえ元々美少女なのに、そんな潤んだ瞳を向けられたら駄目なんて言えないよ。


 それから聖奈にされるがまま、求められるままに、聖奈が満足するまで全てを受け容れた。そしていざ城に帰ろうという時、ふと身体が軽くなっていることに気付いた。どうやら最中は別のことに集中していたから分からなかったけど、さり気なく治癒を施してくれていたみたいだ。本当どうしてこうも僕の彼女は最高なのかね。


「聖奈、ありがとう。」

「なんのこと?」


 あくまで何もしてないというつもりか。それなら、


「うん?……なんでもない、愛してるよ。」

「そう?私も、愛してるよ。」


 そうして転移の前にもう一度だけ軽くキスをして城へと戻った。




「ごめん、遅くなった。」

「いいよ。なんか元気になってるみたいだし。でも」

「その代わり今夜は私たちも可愛がって下さいね?」


 わあ、女の勘って鋭い!っていうかこれだけ時間かかれば流石にバレるか。まあ聖奈の気持ちも理解した上で怒っている訳ではないのは分かってるし、僕としても寧ろ臨むところなので、勿論答えは一択だ。


「いいよ。したいことはなんでも言って。今日一日心配させたお詫びに全部受け容れるから。」

「いいの?そんな事言っちゃって。」

「そうですね。なんでも、ですよ?」

「これ私も参加して良いんだよね?何してもらおうかな。」


 あれ?僕何させられるんだろ。まあきっとみんなのことだから酷いことにはならないだろう。体力の枯渇と明日の朝身体が動かない事は確実だけど、明日は休みだからいいか。……よし覚悟は決まった。なんでも来い!



 それから夕食と、同時に今日の報告と明日の休みの申請を済ませて自室へと戻って来た僕たちは、予定通りにベッドの上に集まった。


「綴理くん。もう、いいよね?」

「いいよ。遠慮せずしたいようにしてくれて。」

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて。」


 言葉のそれを契機に彼女たち三人の要望をひたすら叶える時間が始まった。遠慮の無くなった彼女たちの相手はなかなか大変だったけど、その分自分を必要としてくれているのを強く感じられて僕はとても幸せだった。



 朝方になって僕より先に寝付いた彼女たちの寝顔を眺め、そっと囁く。


「僕を好きになってくれてありがとう。今この時が本当に幸せだ。一人だけを選べない優柔不断で都合の良い僕だけど、それでも僕の持てる全てで必ず幸せにするから。言葉、ティア、聖奈、心の底から愛してるよ。」


 その言葉を最後に僕はゆっくりと眠りに就いた。実は皆起きていたことに気付かないまま。



「綴理くんらしいね。そんなこと気にしなくていいのに。」

「確かに私たちは貴方を一人占めは出来ませんけど、そんなことがどうでも良くなるくらいに私たち一人一人に向き合ってもらっています。」

「私たちはいつでも真剣に愛してくれる綴理君が、絶対に私たちを愛し続けてくれる貴方が、本当に大好きなの。だからもっと自信持って良いんだよ。」


 だから、何度だって言わせてね。


「「「あなたを好きになって、本当に良かった。」」」

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