強兵のススメ
大変長らくお待たせ致しました。やっとの更新です。
「ん~~っ!いやぁよく寝た。流石皇城、ベッドの質も最高だな。」
今まで泊まっていた宿もなかなかいい宿だったからベッドの質もいい方なんだけど、皇城のベッドは文明レベルの差もあってそれを超える心地良さだった。おかげで一切疲れが残らず気持ちよく目覚められた。
「さて、と。今日はどうしようかな。」
城内でまだ見ていない所もあるし、街の観光もまだだ。でも冒険者としての活動もしたいしなぁ。やりたいことが沢山あるって素晴らしい!日本にいた頃の何十倍も充実してるよ。それもこれも彼女たちがいてくれるからなんだけどね。
「言葉、ティア、聖奈、皆愛してるよ。」
そうして三人の寝顔に微笑みかけた僕は、まだ早朝であるということもあって皆を起こさないようにそっとベッドから出た。
「ちょっと散歩でもしてくるかな。あ、せっかくだし庭園に行こうか。この時間だとより綺麗に感じられそうだ。」
なんて言いながら手早く着替えを済ませた僕は寝室をあとにした。
それから庭園に向かって城内を歩いていると、何か考えごとをしている様子のルカさんに会った。
「おはようございます、ルカさん。」
「ん?……あぁ、おはようツヅリ君。君もなかなか早いね。ティアたちはまだ?」
僕が声をかけると、ルカさんは今まで気付いていなかったようで、少し驚きつつそう言葉を返した。
「はい、まだ夢の中です。」
「そうか。」
ルカさんは、しっかりと会話はしているが、やはり何処か上の空といった様子だ。
「何か考えていたようですけど、僕でよければ聞かせてくれませんか?」
先程までのルカさんの様子でも色々と気になっていたので思い切って聞いてみることにした。それに対して少し考える素振りを見せたルカさんは、
「うん。君なら何か良い意見をくれるかもしれないしいいかな。話の内容もあれだから場所を変えようか。そうだな、この時間なら人もいないし丁度いい。落ち着いて話せそうだし庭園に行こうか。」
「あ、僕もこれから行こうと思ってたんです。」
「そうか、君も朝の庭園が好きなのかい?」
「そうですね。この時間ならいつもより綺麗に見えるかと思って。」
「なかなか分かってるじゃないか。」
なんて話ながら庭園へと向かった。
「やっぱり綺麗ですね。」
予想していた通り、朝露に濡れ、朝日を受けた花々は優しい輝きを放っていて、清々しいくらいに美しかった。ルカさんも目を細めながらその光景を眺め、深く呼吸をしてから口を開く。
「あぁ、本当に綺麗だ。考えに詰まった時とかはいい気分転換になるよ。」
「そうですね。それで、何を考えていたんですか?」
目の前の花の一つ一つに目を向けながら、当初の予定通りに本題を口にする。それに頷いたルカさんがゆっくりと話し始めた。
「昨日君が話してくれたようにこの国に王国が攻めてくるかもしれないだろう?だからその為の防衛力の強化をどうしようかなって。この国は良くも悪くも平和な国だ。文明としてはきっと他国よりも進んでいるけれど、戦争となるとはっきり言ってそこまで自信は無いんだよね。だから強化といってもすぐに思い付く程簡単じゃなくて。」
「そうだったんですね。」
昨日の今日で対応が早いな。まあ形だけだとは言ってもそこは皇族。それにこの国を誰よりも愛している人たちだ。国の平和のこととなると放置は出来ないよね。
「ああ、何か良い考えはあるかな?」
ルカさんの問いに対して色々と吟味し、いくつか可能性を思いついたのでそれを順に話していく。
「そうですね。国全体の兵器とかは前の世界にいた頃の知識を使えばなにかのヒントくらいにはなると思いますが、専門家ではありませんからそこまではっきりとは出来ると言えないです。ですが、それ以外なら一気にとはいきませんが、個々の戦力を底上げすることは出来なくも無いです。」
そう言った僕に対し、
「本当かい!?是非詳しく聞かせてくれ。」
ルカさんは嬉しそうに聞き返してきた。
「はい。僕の持つスキルの一つに情報取得能力が飛び抜けて高いものがあります。それを利用すれば個人の癖や得意なこと、苦手なこと、潜在能力などを知ることが出来ます。僕個人としてもそういった助言のようなものは得意で、前の世界にいた時から日常的に行っていたのである程度の実績もあります。僕にしか出来ないので一気に大人数とはいきませんが、確実に戦力向上に貢献出来ると思いますよ。」
「それは凄いな。でも君の負担がかなり大きくなるんじゃないか?君一人にそこまでしてもらうのは流石に。」
確かに何千人規模を相手にこれをやろうとするのは骨が折れそうだ。でも多分王国が動けるようになるのはまだ先の筈。聖奈から聞いた話をもとに考えると勇者達が実力不足なのは間違いない。それならある程度時間をかけて強化していけるからそこまで僕も辛くはならないだろう。
「一気にとはいきませんがそこまで時間に追われているわけでもありません。少しずつやっていくだけの余裕は十分にあるので是非任せてもらえませんか?」
色々考えた結果、僕は出来ると判断してそう提案した。
「いいのかい?僕としてはありがたい限りだけど。」
「はい。少しそういった支援の分野も鍛えようと思っていたので丁度いい機会です。」
「そうか。そこまで言うのなら僕からも是非お願いしたい。」
「分かりました。それではいつ頃から始めましょうか。」
「そうだな、じゃあ…………」
そうして暫くの間今後の軍拡と指導の計画について話し合った。
「ん……あれ、綴理くん?」
目を覚ますと、寝ている時いつも感じているどこか安心するあたたかさが無いことに気付いた。
「まだ早い時間だけど、もう起きて出かけちゃったのかな。」
段々と意識がはっきりしてきたので、私もベッドから起き上がって着替えることにした。
「んぅ……おはよう、言葉ちゃん。綴理君は?」
「んっ……おはようございます。……?ツヅリさんはどこに?」
私が動いたことで二人も目が覚めたみたい。それにしても、私たち皆起きてはじめに考えることは同じなんだね。
「おはよう、ふたりとも。綴理くんはもう起きて出掛けてるみたい。まだ早い時間だから城内にはいると思うけど。」
「そうですか。この時間なら庭園にいるかもしれませんね。」
「そういえば昨日朝の庭園がって綴理君話してたわね。」
「じゃあ準備が出来たら皆で庭園に行こう。」
そうして皆で着替えを済ませて綴理くんがいるであろう庭園へと向かった。
「綴理くん、おはよう。ルカさんもおはようございます。」
「「おはようございます。」」
ルカさんとの話が一段落したところで、言葉たちが庭園に降りてきた。上を見ると、もう既に赤みがかった空はなく、澄んだ蒼色の空が広がっていた。
結構話し込んでたみたいだな。
「おはよう。皆起きたんだね。」
「おはよう、丁度いい時間だし朝食でも食べに行こうか。」
「そうですね。色々考えてお腹も空いてきましたし。」
「決まりだね。」
ルカさんの提案に乗って揃って食堂に向かった。
食堂に着くとどうやらいつもこの時間に朝食をとっているらしく、ユリウスさんとレイさんが既に席に着いていた。
「おはよう、全員揃ったみたいだな。」
「おはよう。」
僕たちを視界に捉えたユリウスさんとレイさんはそう朗らかに言って微笑んだ。
「「「「おはようございます。」」」」
「思っていたより皆早起きなのね。」
「他の皆は起きたばかりのようだけど、ツヅリ君は一段と早起きでしたね。さっきまで庭園で色々と話してたんですよ。」
「そうだったのね。何を話してたのか聞いてもいいかしら。」
う〜ん、楽しい話じゃないんだけどなぁ。まあいいか。大事なことだしね。
「国の防衛力の強化についてですよ。考え事をしているようでしたから、何かお役に立てればと声をかけさせていただきました。」
「そうなんですよ。昨日話を聞いてから自分なりに考えてはいたんですがあまり良い手段が思い浮かばなくて。」
「あら、そうなのね。てっきりもっと楽しい話をしてたのかと思ったわ。」
レイさんは少し驚いた顔をしてそう言った。
まあ、早朝の庭園を眺めながらそんな話をしてるとは思わないよね。
「朝起きてすぐにするような話ではないのは分かってますよ。でもある程度目処が立たないと安心して生活出来ませんからね。」
「僕としても情報を持って来た者として全て任せきりにする訳にもいきません。なので僕からいくつか提案をして、それについて詳細を詰めていたという感じです。」
「その感じだと早速解決策が見つかったのかしら。」
「そうですね。ある程度方針は決めました。ツヅリ君の負担は少なくないですが。」
どうやらルカさんはまだ少し遠慮しているみたいだな。
「問題ありませんよ。僕としても今回の提案は自分の力を高めることにも繋がる良い機会だと思っていますから。」
「そう。ツヅリさんがそこまで言うのなら、詳細を聞いてからにはなるけれどお願いしようかしら。」
「はい。」
上手く行きそうかな、といったところでユリウスさんが口を開いた。
「まあ取り敢えずその話の続きは朝食を食べながらにしないか。」
「そうね。冷めないうちに食べてしまいましょう。さあ、座って。」
促されるままに席に着いて食事を食べ始め、同時に先程までの話を再開する。
「それで、具体的にどうするつもりなんだ?」
「僕の知識とスキルを活用して個々の戦力の向上を図ります。生憎と僕は兵器に関しての知識はあまりありませんが、個人の得手不得手、癖や潜在能力などは見ることが出来ますので。」
「昨日君が見せてくれたスキルの中にそんなものがあったのか。」
「はい。前の世界にいた頃から元々していたことなんですが、スキルに昇華されたことでより確信を持って判断することが出来るようになりました。」
まあ、元々はただ観察するだけのスキルだったんだけど。アップデート様々だね。
「ではそれで一人一人個別に兵を指導していくということか。だが直属の騎士や魔法師団だけでもかなりの人数がいる。君の負担が大きくはないか?」
「そこは問題ありません。特に重要な箇所から時間をかけてじっくりやっていきますし、先程も言った通りこれは僕が自分の能力を向上させる目的もあります。なので負担だとは思っていません。」
そう言った僕に対しユリウスさんは少し考える素振りを見せた後、レイさんと何かを話し合った末、改めて僕の方に向き直り頷いた。
「………分かった。では無理の無い程度に頼むよ。」
同意も得た。あとはしっかりとした結果を出して国防に貢献するだけだ。
「ありがとうございます。早速今日からでも良いですか?」
「あぁ、騎士と魔法師たちには私の方から伝えておく。昼の訓練の際にティアに案内してもらってくれ。」
「分かりました。」
こうして新たな目標が定まった。僕はこの国を最強にする。今ここにある確かな幸せを決して何者にも壊させない為に。
理不尽なバットエンドは赦さない。僕が目に映すのは、ハッピーエンドの物語だけでいいのだから。
食事を終え、一度自室に戻ろうという時に言葉が聞いてきた。
「綴理くん、いつの間にあんなこと考えてたの?」
「魔皇国に来る前くらいからサポート系の能力を鍛えようとは思ってたけど、それを国の戦力でやろうと決めたのは今朝だよ。ルカさんが悩んでたからいい解決策になるかなと思って。」
僕がそう答えると、
「そうなんだ。……よし、決めた。私も手伝うことにする。無詠唱魔法なら私が一番だからね!」
「私も自分の国のことですから是非参加させて下さい。」
「私も、と言いたいところだけど流石に学院の方でいっぱいいっぱいかな。」
皆も一緒にやる気みたいだ。僕だけだと人手不足ではあったからありがたい。
「皆ありがとう。一緒に頑張っていこう。聖奈も学院の方は引き続きよろしく頼むね。」
「任せて。」
「それじゃあ早速今日から頑張ろう。」
「うん。」
「はい。」
「ええ。」
それから時間が来たので聖奈を学院の女子寮まで送り、その後はゆっくりと城内を回り昼までの時間を過ごした。そして、
「そろそろ昼の訓練の時間ですね。行きましょう。」
「もう時間か。受け容れて貰えるかな。」
「大丈夫だよ。私もティアもついてるから。」
「そうですよ。自信を持っていきましょう。」
「そうだね。………ふぅ。」
一呼吸置いて気持ちを落ち着け、僕は自室の扉を開いた。
「行こう。」
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やっと夏季休暇に入りました。まだ少しやることが残っていますがそれが終わり次第どんどん書いていきます。三週間を超える長い無更新期間の間も離れずにいてくれた皆様、本当にありがとうございます。これからも作者、作品共々よろしくお願いします。




