選ばれた者
長らくお待たせいたしました。久しぶりの更新です。
「さて、では君のことを聞かせてもらっても良いかな?」
夕食を目一杯堪能し、少し休憩を挟んで落ち着いた僕たちは、料理の皿が片付けられたテーブルを挟んで向き合う。といっても一対一ではなく皆席についたままなのだが。
「はい、何から話していきましょうか。」
「そうだな。スキルのことは大いに気になるが、まずは君自身のことから教えてもらっても良いかな。良ければコトハさんやセイナさんたちも。ティアの家族は私の家族も同然だからな。是非知っておきたい。」
やはりユリウスさんはあたたかい人だ。いや、彼だけじゃない。ここにいる人たちは皆そうだ。流石は愛の神の国だな。本当に居心地が良いよ。
「分かりました。ではまず出身からですが、僕たちはこの世界の人間ではありません。異世界から勇者召喚によってこの世界に連れて来られました。」
「私たちも同じです。特に聖奈さんは今でも勇者だよね。」
「ええ、一応あちら側に残って活動しています。」
「勇者召喚か。遠い昔にあったらしいということくらいは聞いたことがあるが、まさかそんなことが行われていたとは。」
この世界でも勇者召喚はそう頻繁には行われていないようでユリウスさんたちもあまり詳しくはないようだな。
「それで、前の世界では魔法やスキルもなかったので普通の学生として生活していました。基本的に武力での争いはあまり多くなく比較的平和な世界で、僕たちがいたニホンという国は特に平和でしたね。その国では………」
そうして日本での生活について簡単に説明していく。
「そうか。異世界では行くことは難しいがとても興味深いところだ。」
「ええ、僕にとっても自慢の故郷です。それで、この世界に呼ばれてからのことですが。」
「あぁ、続けてくれ。」
「はい。僕たちは魔王討伐の名目で呼ばれたらしく、初対面の時に王城でそう説明を受けました。恐らく戦力が整い次第戦争でも起こすつもりなのでしょう。その為の戦力として僕たちは呼ばれた。」
「それは、物騒だな。私としても看過できることではない。」
ユリウスさんの目が父親としてのものから一人の統治者としてのものに変わった。伝統的なものとはいえ、流石は王だ。
「そうですね。名目上とはいえこの国に攻め込む可能性も大いにありますから。まあでも今まで生活してきた中で知った情勢的には帝国辺りと戦うつもりなのではないかと予想していますが。なんにせよ備えておくに越したことはないですね。」
「貴重な情報をありがとう。私の方で一応の準備をさせるように指示を出しておこう。」
そうしてユリウスさんは秘書らしき人に短く話をして、再び席についた。
「待たせたな。続けてくれ。」
「はい。それで召喚直後にステータスの確認がなされたのですが、僕とコトハはその内容が戦力としてはとても使い物にならないということで城から追い出されてしまいました。セイナに関しては逆に上位の職業を手に入れた為優遇されていましたが。」
「君たちが戦力外?だが君たちはティアを救い出せるくらいには戦える筈ではないのか?」
その疑問はもっともだ。その点では僕たちがイレギュラー過ぎるからな。
「僕たちが力を発揮し始めたのは追放されたあとからなんです。召喚直後のステータスを見れば確かに戦えるようには見えません。参考程度に僕の初期ステータスを表示しますね。」
そうして僕は『隠蔽』の副次効果で初期ステータスを映し出した。
名前 ツヅリ・ツムギシ
Lv 1
職業 【 】
体力 90
魔力 50
物攻 30
魔攻 20
物防 40
魔防 20
スキル 『観察』『読心術』
魔法
称号 《転移者》《jm%d23@あgf》
「これは確かに戦えるようには見えないな。それでもこの世界について何も知らない子供を放り出すなど普通の大人がすることではないが。」
そう言ってユリウスさんは顔を顰める。
「戦力目当てですからね。それ以外は無価値なんでしょう。幸い環境適応は得意分野でしたから問題無く生活して来れましたし。結果としては追放してくれて良かったですね。こうして今自由に暮らせてますし、追放がなければティアを救うことも出来ませんでしたから。」
「そうだな。その点に関しては感謝してもし足りないくらいだ。」
「ええ、そして追放された僕たちは生活の為に冒険者として地道に活動して力をつけていきました。それである程度力がついたところで別の街に移動し、そこで受けた依頼でティアと出逢ったんです。それからは話した通りですね。」
「そうか。君たちも大変だったのだな。それでいてティアのことも救ってくれた。改めて本当にありがとう。」
そう言ってまた頭を下げられた。本当にこの人は良い意味で王らしくない人だな。
「はい。そしてセイナの方ですが、それから暫く経ってから王都の街に出掛けた時に再会しました。そこでセイナから告白を受けて一緒にいることになりました。コトハやティアのように常に一緒にいることも考えたのですが、セイナの方から残ると言われたので今の様に夕方に迎えに行く形になっています。」
「私は前の世界で生徒たちをまとめる立場にいましたから。彼らを放って置く訳にもいきませんから。」
「なるほど。」
「僕たち自身については大体話しましたかね。」
「ありがとう。色々と知れて良かったよ。これからもよろしく頼む。」
「「「こちらこそよろしくお願いします。」」」
僕たちはお互いに頭を下げた。そして話を再開する。
「次は僕たち、主に僕の今のステータスについてですが、こんな感じになっています。」
今度は隠蔽無しでステータスを表示する。
名前 ツヅリ・ツムギシ
Lv 48
職業 【天の声】
体力 4320
魔力 2400
物攻 1440
魔攻 960
物防 1920
魔防 960
固有スキル 『神創真理』『心理求明』
『瞬間模倣』『恋心同帯』
職業スキル 『一方その頃』『舞台は変わって』
『外界から覗く者』
通常スキル 『中級剣術』『中級槍術』
『中級杖術』『中級弓術』
『上級短剣術』『中級斧術』
『真偽眼』『索敵』『幻影』
『瞬間移動』『剛力』『騎乗』
『超回復』『隠蔽』『魔法剣』
『調合』『空撃』『武器破壊』
『魔力回復(強)』『五感強化』
『第六感』『閃光剣』『統率』
『聖剣解放』『武装召喚』
『聖壁』『修復』『解毒』
『詠唱破棄』『高速学習』
『全属性魔法適性』
魔法 火属性魔法Lv4 水属性魔法Lv3
土属性魔法Lv5 風属性魔法Lv5
無属性魔法Lv7 複合魔法『雷撃』
称号 《転移者》《探求者》《蒐集家》
《観測者》《愛する者》
《jm%d23@あgf》
「これは……まるで別人だな。」
「そうですよね。表示形式も変化していますし。戦力としてもあまりにも変わり過ぎてます。」
「あぁ、ステータスの表示形式が変わるなど普通ではないからな。だが、何処かでそのようなことを聞いた気がするが………そうだ、これは神に選ばれた者のステータスだ。」
少し考える素振りを見せていたユリウスさんは、はっとしたようにそう言った。
「神に選ばれた、というのは?」
心当たりのあった僕はより聞き逃すまいと集中を高め聞き返す。
「あぁ、代々受け継がれてきた話によると、初代魔皇は建国の際に神に認められた証として権能の一部を新たなステータスという形で授かったらしいんだ。そしてそこに含まれる数々のスキルは通常のものとは一線を画す性能で、建国に大いに貢献したと云われている。」
「そんなことがあったんですね。確かに僕のステータスが変化する際それらしき女性に会っていますし関係はあるかもしれません。」
あの人は直接神とは言っていなかったけど、あそこまでのことが出来るのは神くらいだろう。ただの人間には到底出来ないことだ。
「やはりそうだったのか。しかし私が知っている限りではその神は男性だった筈だが、御告げに現れた神も女性というし代替わりでもあったのだろうか。」
「まあ、愛の神と言うのならそれ以外もいるのかもしれません。どちらにせよ神であることには変わりないでしょう。」
「そうだな。気にしても分からないことは考えるだけ無駄か。なんにせよ君が神に選ばれる程の男であることは分かった。これからもその力でティアを幸せにしてやってくれ。」
「勿論です。」
そうして僕のステータスの確認を終え、言葉、聖奈と移っていく。
名前 コトハ・ユメサキ
Lv 40
職業 【司書】
体力 4000
魔力 2000
物攻 800
魔攻 800
物防 1200
魔防 1200
固有スキル 『解の魔眼』『術式破壊』
『魔力円環』『恋心同帯』
職業スキル 『速読』『高速読解』
通常スキル
魔法 火属性魔法Lv9 水属性魔法Lv8
土属性魔法Lv8 風属性魔法Lv9
無属性魔法Lv7 複合魔法『雷撃』
空間魔法『固有次元区画』
称号 《転移者》《解読者》《魔法創造士》
《愛される者》《ck8n3と#&》
名前 セイナ・カミシロ
Lv 24
職業 【神依之巫女】
体力 1400
魔力 1400
物攻 672
魔攻 672
物防 1008
魔防 1120
固有スキル 『恋心同帯』
職業スキル
通常スキル 『聖壁』『修復』『統率』『解毒』
魔法 聖属性魔法Lv5 水属性魔法Lv5
土属性魔法Lv4 風属性魔法Lv5
無属性魔法Lv4
称号 《転移者》《聖なる癒し手》
《愛される者》
それぞれ特別な力を持っているので、そこでもユリウスさんたちの驚きは絶えなかった。
「ここまでとはな。彼女たちのステータスの変化が君に付随するものだというのなら、君と深い関わりのある女性は例外無く神の恩恵を受けているということだよな。」
「そうですね。ステータスは完全に僕を基準として変化しています。間違いないでしょう。」
「ということはティアもか?」
「ええ、私も新しくステータスをいただきました。」
最後の一人としてティアがステータスを表示する。
名前 ティア・アイズ・メルトハート
Lv 32
職業 【姫巫女】
体力 1360
魔力 1700
物攻 1020
魔攻 1360
物防 1020
魔防 1360
固有スキル 『恋心同帯』
職業スキル 『啓示』
通常スキル 『魔素変換』『魔力回復(強)』
『騎乗』『統率』
魔法 火属性魔法Lv5 水属性魔法Lv6
土属性魔法Lv5 風属性魔法Lv6
無属性魔法Lv5 複合魔法『雷撃』
称号 《魔皇女》《愛される者》
「見違えたな。私の見ないうちにここまで成長したのか。」
そう言って穏やかな笑みを浮かべたユリウスさんは心底嬉しそうだった。その隣で話を聞いているレイさんとルカさんも同様にティアにあたたかい目線を向けていた。
「コトハさんに魔法を教えていただいて、沢山実戦も経験しましたからね。今ではだいぶ思い通りに魔法が使えるようになりました。何よりも無詠唱で魔法が使えるようになったのが一番大きいと思います。」
「無詠唱?」
ティアの一言にユリウスさんたちは首を傾げて聞き返した。それに対して心做しか興奮気味にティアが答える。
「はい。以前は魔法といえば詠唱があってこそという認識でしたが、本来の魔法というものは詠唱を必要としないらしいんです。実際に無詠唱を学んでみると発動の早さもさることながらその精密さ、威力、自由度は比べ物にならないことを実感しました。今では自分でオリジナルの魔法を考えるのが趣味の一つになっているくらいなんですよ。」
「そう、なのか。これは私たちの常識が覆されるな。その様子だとかなりのものらしい。後で詳しく教えてくれ。」
「はい!」
これで全員のステータスの確認が出来たな。
「現時点ではこんなところですかね。」
「ああ、色々と聞けて良かったよ。ところで、明日以降はどうするんだい?君たちが良ければこのまま城に泊まってくれていいのだが。幸い空いている部屋は沢山あるのでな。」
「そうですね。ティアはどうしたい?」
バイタシアに行こうと思えばすぐに行けるんだし、同じく聖奈の送り迎えも問題無い。あとはティアの気持ち次第だけど、せっかく帰って来れたんだしティアもゆっくりしていきたい筈だよね。
「帰って来たばかりですしまだまだ案内したい所も沢山ありますから、私としてはそうしたいです。宿代が少し勿体ない気もしますけどね。」
「特別お金に困ってる訳でもないしそこは気にしなくていいよ。言葉と聖奈も問題無いかな?」
「「うん。」」
満場一致で決定だな。
「では、暫くお世話になります。」
「そうか。ゆっくりしていってくれ。」
こうして僕たちは次の国に行くまでの間、城を拠点として活動することになった。
「今日はここまで来るのに疲れただろう。色々と話もしたしな。この後は大浴場でしっかりとその疲れを癒やしてくれ。寝室は空き部屋からティアが自由に決めてくれていい。私は置いてきた仕事もあるからそれを片付けてくるよ。」
そう言ってユリウスさんは席を立つ。
「何から何までありがとうございます。」
「これからは家族なんだ。これくらいはさせてくれ。ではまた明日な。」
「はい、また明日。」
「おやすみなさい、お父様。」
「ああ、おやすみ。」
こうしてユリウスさんと別れた僕たちは、レイさんとルカさんともいくつか言葉を交わし、ティアの案内で大浴場へと向かった。
大浴場は例に漏れずハイクオリティーであり、見た目も機能性も文句無しの一級品だった。そこで当然の如く皆で湯船に浸かり、一日の疲れを癒やした僕たちは、ティアに連れられるままに一つの部屋に入ってそこにあった大きなベッドに倒れ込む。それから軽く皆で今日一日を振り返りながら話をして眠りに就いた。
今日は色々緊張したけど上手くいって良かった。ティアを家族に合わせることができたし婚約も認めてもらえた。文句無しの一日だったな。明日からはまた次の目標を決めてここで頑張っていこう。
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次回の更新は未定で、恐らく月末、最悪8月中旬になる可能性もあります。続きを待っていてくださる読者の皆様にはご迷惑をおかけしますが、夏季休暇に入るまであたたかい目で見守っていただければ幸いです。




