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家族での夕食

遅くなりました。

 僕たちは夕食の時間になるまでゆっくりと城内を見て回った。庭園も本当に綺麗だったし、城の細かい造りもとても興味深かった。まだまだ見ていない所もあるからこの先も楽しめそうだ。


 とはいえこれから夕食だ。考えてみれば、城での食事というのは僕と言葉は初めてだ。どんな感じなんだろうか。そんなふうに王国とは違う地域の食事に想像を膨らませながら、ティアの案内に従って食事の部屋へと向かった。


「楽しんでもらえたかな?」

「はい、まだ全ては見ていませんがその中では特に庭園が綺麗でしたね。」

「そうか。まだ暫くはここにいるんだ。残りも是非見ていってくれ。」

「はい、王国では見られない造りの所も多かったのでとても楽しみです。」


 そうして先に部屋で待っていたティアの両親と話しつつ、用意された席に着いた。全員が席に着いたところで、僕たちより少し年上に見える一人の青年が部屋に入って来た。


「おお、ルカも戻って来れたか。」

「はい、進行していた仕事に区切りをつけてきました。可愛い妹が帰って来たというのですから仕事をしている場合ではありませんよ。」

「そうだな。私も緊急でない仕事は置いてきてしまったよ。」


 そうして彼は空いていた席に着き、


「はじめまして、ティアの兄のルカ・アイル・メルトハートです。君たちがティアを救ってくれた二人だね。大事な妹を助けてくれて本当にありがとう。」


 そう挨拶をして感謝の言葉を述べた。


「ツヅリです。」

「コトハです。」

「ツヅリ君にコトハさんだね。これから義理の兄としてよろしく。」


 爽やかな笑みでそう言う彼に、少しの驚きと共に言葉を返す。


「こちらこそよろしくお願いします。それにしてももう聞いているんですね。」

「ああ、急いで帰って来たらティアが婚約者を連れて来たっていうから驚いたよ。でも話を聞く限りはティアもすごく幸せそうだからいいかなって。尤もこの国は皇族含め恋愛は自由だし。というかそれ以外の結婚は認められていないからね。」


 彼の口から発された事実は今まで生きてきた中でも初めて聞くものだった。


「それは…珍しいですね。」

「ああ、こういう国は他にはないよね。理由としてはいくつかあるんだけれど、まず前提としてうちは皇族って扱いだけど、ただ伝統的にこの立場っていうだけでそこまで偉い訳じゃないんだ。それと同じく貴族もあるにはあるけど形だけだから基本的に政略結婚するほど身分に差がないんだよ。それに加えてこの国は愛の神の国だから、双方の合意を以てしてじゃないといけないって言う認識なんだ。」

「なるほど。変わってはいますが理想的ですね。」

「そうだろう。だからティア本人が幸せなら何も言うことはない。これからもティアを頼んだよ。」

「はい。その信頼を裏切らないように全身全霊尽くさせていただきます。」


 こうしてルカさんとの義兄弟としての挨拶を済ませ、食事へと移った。



「凄い……!」


 僕たちの前に並べられた料理の数々を見て最初に出てきた感想は至極単純な一言だった。我ながらもっと良い言葉が無いのかとも思うけれど、自然にそう口にしてしまったのだからしょうがない。隣の言葉も全く同じ反応なのだからこれは自然なものなのだ。


 では何が凄いのかというと、


「「健康的な食事だ!」」


 そう、地球にいた頃に様々な食文化に触れ、日本という国でその中でも特に健康的な食事に多く触れてきた僕と言葉が揃ってこれは健康的だと言える程、目の前の料理は栄養バランスがしっかりと考えられていたのだ。


 普通の皇族や貴族が食べる食事といったらまずは肉などのカロリーの高いものを思い浮かべるだろう。それに合わせられるものも比較的カロリー高めで、こんな食事を続けたらでっぷりと太ってしまうのは当然と思う程だ。


 しかし目の前にあるのはその限りではない。確かにこれぞ貴族という様な見た目からして華美な料理もあるにはある。けれど、それに合わせられるものはこれだけでもお腹いっぱいになるのではないかという程のみずみずしい野菜たちである。加えてデザートとしてであろう果物も多種多様に用意されており、間違いなく体に良い。正直こちらの世界でここまで栄養バランスを考えた食事は自炊以外では食べることは無いと思っていたから、この上なく嬉しい誤算だった。


「想像していたものとは違かったようだが、気に入ってもらえたみたいで何よりだ。」


 驚きと感動で少しの間硬直していた僕たちに、ユリウスさんはそう声をかけた。この声で我に返った僕たちは、顔を見合わせて頷く。


「これは私たちだけっていうのは勿体ないよね。」

「うん、僕もそう思うよ。せっかくだしね。」


 そうして意見を固めた僕たちはユリウスさんに一つお願いすることにした。


「すみません。もう一人増えても大丈夫でしょうか?」

「?……ああ、そういえば今くらいに迎えに行くと言っていたな。ついつい多めに作らせてしまったからな。余らせるのは勿体ないし、是非とも連れて来てくれ。時間はそこまでかからないのだろう?」

「はい、相手の状況次第ですがおそらくすぐに戻って来れる筈です。」

「そうか。では私たちも待っていよう。」

「ありがとうございます。……じゃあ行ってくるよ。」

「うん、よろしくね。」

「はい、お待ちしています。」


 皆にあたたかく見送られ、僕は王都の魔術学院へと転移する。



舞台は変わって(シーンスイッチ)




「消えた!?」


 それは一瞬の出来事だった。もう一人を迎えに行くと言った彼は、私たちの目の前で唐突に、何の前触れもなく姿を消した。てっきり私は一度外に出てから何かしらの方法で迎えに行くものだと思っていたから驚くのは必至だった。隣を見ると、妻のレイや息子のルカも同様に驚いた顔をしている。その出来事に一切の動揺を見せていないのはいつも彼と共にいた娘のティアとコトハさんだけだ。どうやらこれは彼女らにとってはいつものことらしい。なので目の前のことを知る為に二人に尋ねてみることにした。


「今のは、どういう……?」

「ああ、あれはツヅリさんのスキルです。」


 返ってきたのはあっさりとした回答だった。


「どういうスキルなのか聞いてもいいか?」

「はい、ツヅリさんからも許可をいただいてますし、説明しますね。」

「ああ、僕としてもあれは驚いたからね。是非とも聞かせてくれ。」


 ルカも前のめりになってそう後押しし、ティアは説明を始めた。


「はい。あのスキルは簡単にいえば瞬間転移のスキルです。」

「瞬間、転移?」


 今とんでもないことを言わなかったか?


「はい、瞬間転移です。効果としてはこの世界の何処でも一瞬で行くことができます。」


 どうやら聞き間違いではなかったようだ。それにしてもこれは予想外過ぎる。短い距離の瞬間移動の様なスキルはあるがそんな長距離を移動できるスキルなんて聞いたことがない。


「それだけのスキルだ。制限は無いのか?」


 それだけのことが出来るんだ何かしらの代償や制限がある方が自然だ。そう思って尋ねたのだが、


「制限は無いです。行ったことがある場所にしか行けないだとか、何かを消費するだとか、そういうものを一切無くして自由に転移が可能ですね。」

「それは……凄いな。」

「ちなみにですが、本人以外も連れて行って貰えますよ。」

「!!……そこまでなのか。」


 これはもう凄いなんてものじゃない。はっきり言って異常な性能だ。彼は一体何者なんだ?


「まあ、初めて見たら驚きますよね。はっきり言ってしまうと規格外過ぎますから。でも彼が凄いのはそれだけじゃないんですよ?」


 まだ他にもそれに並ぶだけの物を持っているのか。どうやら私の娘はとんでもない大物を射止めたようだな。


 そうして驚きと感心が入り混じった心を整理していると、再び私たちに声がかかった。


「お待たせしました。」

「はじめまして、セイナと申します。いきなりですが、どうぞよろしくお願いします。」




 スキルを使って転移した僕は周囲を見回し聖奈の姿を探……そうとした瞬間、背中に衝撃が奔った。と同時にあたたかさと柔らかさも感じる。これは、


「綴理君、待ってたよ。」

「聖奈……結構待たせちゃったかな。」

「大丈夫、待ってる時間も好きだから。」


 言いつつ聖奈が僕の前に回り込んで上目遣いで微笑みかける。あぁもうその顔は反則だ。


「そっか、ありがとう。」

「うん。」


 それして見つめ合った僕たちは、一日離れていた分を取り戻すように軽く触れる様なキスをした。


「んっ……ふふっ、続きは帰ってからだね。」

「そうだね。」

「あ、でも今ってまだティアちゃんの実家にいるのかな?」


 その言葉で皆を待たせていることを思い出した。半日ぶりの聖奈を前にして完全に聖奈のことで頭がいっぱいになっていた。危ない危ない。


「そうだった。聖奈はまだ夕食は食べてないよね?」

「そうだけど、どうかしたの?」

「今丁度夕食の時間なんだ。せっかくなら聖奈も含めた家族全員でって。」

「そうなの?じゃあ私も丁度お腹が空いてたところだからご一緒させてもらおうかな。」

「うん、じゃあ早速。」


 僕は聖奈と手を繋いで再びスキルを起動した。


 そうして城に帰って来た僕たちは聖奈の自己紹介を終えて席についた。


「皆さん何か話していたようでしたけど、なんの話をしていたんですか?」

「ああ、君のスキルについてだよ。急に姿を消すものだから驚いてね。」


 何も言ってなかったし、初見なら驚くか。


「そうでしたか。お騒がせしました。」

「いや、気にしなくていい。ティアの方からも説明があったからな。まだ驚きはあるが納得はした。どうやら君は私たちが思っていた以上の人物だったようだ。」


 せっかくの称賛だ。素直に受け取っておこう。


「光栄です。」

「それでなんだが、夕食の後に君のことを詳しく聞いても良いだろうか。」

「ええ、勿論ですよ。」

「ありがとう。では今は料理が冷めてしまわないうちに食べてしまおう。」

「そうですね。」


 それからは、皆で世間話をしながら一つ一つ料理を楽しんでいった。聖奈も僕たちと同じく食事としての完成度の高さに感動していて、とても幸せそうに食べていた。連れて来て良かった。やっぱり食事は皆揃って食べるのが一番だよね。

面白い、続きが読みたいと思った方は、星やブックマークをつけていただけると嬉しいです。感想なども気軽に書いて下さい。執筆の励みになります。

現在の更新は週一度の状態ですが、本業の方がさらに忙しくなってきている為二週に一度になるかもしれません。そしてその状態が8月上旬まで続くことが予想されます。それを越えれば休暇に入りますので以前の様に週二、三回更新が出来るようになると思われます。それまでどうか離れずにこの作品を読み続けていただけると幸いです。同時連載中のもう一作品も同様の理由で更新が止まっておりますが、打ち切る予定はありませんので再び更新した暁にはそちらの方も読んでいただければと思います。あまり多くはないながらも作品の続きを待っていただいている読者の方々には大変申し訳無いのですが、あたたかい目で見守っていただけるとありがたいです。

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