登校初日
なんとか書けました。次の更新も一週間程かかるかもしれませんが、どうか離れずよろしくお願いします。
「おはようございます!」
「おはよう、四季さん。」
綴理君に見送られて寮の自室を出た私は教室棟に向かっていた。今はその途中で四季さんと会ったところ。
「今日から本格的にここの生徒ですね。クラスは違いますけどお互い頑張りましょうね。」
「ええ。」
「それで、今朝は送って貰ったんですよね?」
「そうね。なかなか離して貰えなかったけれど。」
そうしてついさっきまで私の腕の中にいた彼のことを思い浮かべる。
「昨日あんなことがあったばかりですし心配にもなりますよね。」
「それもあるけど、私がいないのは寂しいって。」
「わ、可愛い。」
「そうなのよ。宥めるのに時間がかかったから出るのが少し遅れてしまったわ。」
「愛されてますね。」
「ええ、告白した頃はここまで想って貰えると思ってなかったから今はとても幸せよ。」
「いいなぁ。私も会長みたいな恋がしてみたいです。いい人いないかなぁ。」
「貴方は明るくて良い子だし、きっと見つかるわ。」
「そうですかね。えへへっ。」
大丈夫。私がここまで心を開いて話せる人はそんなにいないんだから。
「あ、着いたわね。」
「そうですね。じゃあまたお昼に。」
「私が迎えに行った方がいいかしら?それとも何処かで合流する?」
「そうですね。早く終わった方が迎えに行く形でどうでしょうか。」
「分かったわ。じゃあまた後でね。」
「はい!」
四季さんは嬉しそうに自分の教室に向かって行った。
「あの子と話すと元気が出るわね。さてと、私も私で頑張りましょうか。」
少し緩んでいた気持ちを引き締め直して私もまた自分の教室へと向かった。
「ここね。」
Sクラスの教室のドアを開けて中に入ると、そこには予想していたよりも人がいなかった。
「人数が少ないのね。」
「特殊クラスのようだからな。」
私の呟きに答えたのは、
「おはよう、神代。」
「おはよう、御影君。」
優遇職の勇者として私と同じSクラスに配属された御影君だった。
「どうやらこのクラスは元々少人数の集まりで授業も自主的に受けるかどうか決められる仕組みになっているらしい。」
「道理でもうすぐ始まるのに人があまりいない訳ね。」
「ああ、それで神代はどうする。授業を受けない選択も出来るが。」
「私は受けるわ。一般的に教えられているものがどんなものか知っておきたいし、何か参考にできることもあるかも知れないから。」
「そうか、なら俺も受けよう。神代の護衛を頼まれているからな。」
「え?」
突然私の知らない事実が出てきた。
「やはり言ってなかったか。無詠唱魔法のアドバイスを貰う時に引き受けたんだ。俺としても神代は紡詞たちとの大切な繋がりだからな。何かあっては困る。」
「そう、だったのね。」
「ああ。とはいえ何か起きた時に対処出来る距離にいるだけで、基本的には自由にしているが。」
昨日みたいなこともあるからありがたいことではあるんだけど、少し心配され過ぎな気もする。まぁでも今朝の綴理君を考えたら納得かな。
「分かったわ。学院にいる間はよろしく。」
「ああ。」
こうして私に頼もしい護衛がつくことになった。
それから少しして朝のホームルームもなく一時間目の授業が始まった。特に連絡事項が無い場合はホームルームは無いみたいだ。特殊クラスだからかな。まぁそれはさておき一時間目の授業だ。
「私はこのクラスで魔法理論の授業を主に担当するアルス・ハウザーだ。今日からこのクラスに参加する生徒はこれからよろしく。では早速だが授業を始める。」
そうしてこの国、というかこの世界での魔法というものがどんなものか、どういう仕組みになっているかが説明されていく。その内容はやはり私が知っているものとは異なるものだった。
やっぱり無詠唱魔法の概念はこの世界に無いんだね。魔法理論も詠唱魔法自体のことは正しいけど魔法本来としては間違ってるところもあるし。でもそれも含めてかなり勉強になったかな。
それからは特筆すべきこともなく一時間目が終了した。
「ふぅ、こんな感じなのね。城では実戦の訓練しかなかったからなんだか懐かしい気分。」
そう一息つきながら日本で学生をしていた頃を思い出していると御影君が私の席まで来た。
「次は魔法演習の授業らしいが、どうする?俺としては無詠唱魔法の練習に充てようと思っているんだが。」
そっか。う~んどうしようかな、実践に関しては特に学べるようなことも無さそうだし出なくても良いかも。
「ちなみにこのクラスは基本的に出ないらしいぞ。魔法演習に関しては全クラス同じ時間で半ば合同みたいなものだから、このクラスにいるレベルだと自分で訓練をする方が効率が良いという奴が殆どなんだと。」
「え、合同なの?じゃあ他のクラスの人と訓練することも出来るってことよね?」
「ああ、特に俺たちの場合自由行動が許されているから何処に参加していても何か言われることはない。」
それなら……
「私は参加するわ。まだ見たことのない魔法を使う人もいるかも知れないし、参考にできることもあるかも知れないから。」
「そうか。魔法の訓練自体は何処でも出来るからな。俺は少し離れたところで訓練をしていることにしよう。」
こうして次の時間の方針が決定したので、私たちは演習場へと足を向け歩き出した。
「ここが演習場……」
「思っていたより広いようだな。これなら周囲を気にせず訓練に励めそうだ。」
私たちの目前にあったのは学校のグラウンドの五、六倍はあろうかというほど広大なコロッセオに似た形状の施設だった。ここまで広ければ大人数の生徒が同時に魔法を使用することがあっても窮屈さを感じずに済むだろう。
というかこのレベルの建設はどうやったら出来るんだろうか。ま、まあそれはともかく授業が始まるし行かないと。
私は四季さんの姿を探しつつ闘技場、もとい演習場の中を進んでいった。
「見つけた。四季さん。」
「あ、会長!どうしたんですか?」
「Sクラスは自由行動が許されているから、せっかくなら貴方のところで魔法の訓練をしようかと思って。」
「会長の方から来てもらえるなんて。ありがとうございます!」
こうも分かりやすく喜んで貰えると私としても嬉しいわね。
「貴方のクラスはどんな授業をするの?」
「そうですね。私のクラスはさっきまで基礎的な魔法の理論の授業でした。これから始まる魔法演習も同じく基礎的な魔法ですね。」
「座学に関してはクラス差は無いのね。差が出るのは演習から、か。」
「会長は私たちよりも魔法レベルが高いから使える魔法も強いですもんね。詠唱も長くて戦い方も変わりますから訓練の内容も違うんですよね。」
「そうね。でも私がする予定の訓練は全ての魔法に関わるものだから貴方がやっても身になるわよ。」
「そうなんですか?」
「ええ、間違いなく役に立つわ。授業としての形態もとっているからそれの邪魔にならない程度に一緒にやりましょう。」
「なんだかよく分からないですけど、頑張ります!」
こうして私たちは二人で魔法の訓練をすることになった。
「俺はこのクラスの魔法演習を担当するガイエン・ローダイトだ。今日は基礎的な魔法の演習をする。大体魔法レベル一から二辺りの魔法を練習することになるな。基本的な流れとしては自主的に練習して質問があった場合に俺が答える形だ。俺からは以上だ。早速練習を始めてくれ。」
担当教員の声に従い生徒達が演習場に散らばって行く。
「私たちも行きましょうか。」
「はい!」
空いているスペースを見つけて移動しながらいくつか質問をしていく。
「ところでなんだけど、貴方は何の魔法が使えるの?それによって内容も変わってくるのだけれど。」
「えっと、分かりやすいですしステータス見ますか?」
「軽々しく見せて良いものじゃないのよ?個人情報なんだから。」
この子少し警戒心が薄いのよね。悪い人に騙されたりしないと良いのだけれど。
「会長が相手ですから問題無いですよ。」
「信頼してくれるのは嬉しいのだけれど、他の子に見られる可能性もあるから表示はしない方がいいのよね。」
「う〜ん、じゃあどうしましょう。」
「そうね……あ、そういえば今の場面には丁度良いスキルがあったわ。ステータスを見られるってものが。」
綴理君、借りるね。
『恋心同帯』
『神創真理』
名前 ミノリ・シキ
Lv 17
職業 【応援士】
体力 630
魔力 462
物攻 336
魔攻 294
物防 336
魔防 294
スキル 『鼓舞』『拡声』
魔法 水属性魔法Lv2 風属性魔法Lv2
称号 《転移者》
「凄い。本当に視えるのね。」
「今私のステータスが見えてるんですか?」
「ええ、貴方は水と風が使えるのね。」
「わ、本当に見えてる。会長そんな凄いスキル持ってたんですね。」
「私が持ってる訳じゃないんだけれどね。」
「どういう事ですか?」
まあ普通は持ってないスキルは使えないわよね。それを可能にしてしまった綴理君が規格外過ぎるだけで。
「このスキルは本来私の彼が持っているスキルなの。今は私と彼が共通して持っている別のスキルの効果で私もそれを使えるようにしている状態なのよ。」
「………なんか複雑ですね。でも凄いことなのは分かりました。」
そう言った四季さんは?と!が入り混じったような顔をしていた。
まあ初めて聞いたらそんな顔にもなるわよね。私も他にこんなことが出来る人なんて見たことないもの。
「まあそういう訳で貴方のことも分かったことだし早速訓練に移りましょう。」
「そうですね!それで、どんなことをするんですか?魔法の訓練っていっても詠唱を早くするとかスムーズに使えるようにするとかくらいしか無いですよね?」
「そうでもないのよ。私も少し前まではそう思っていたけれど、魔法のスペシャリストに教えて貰ってからは考え方がまるで変わったわ。」
本当に根本から綺麗にね。
「スペシャリスト、ですか?」
「ええ、初日に追放された人がもう一人いたでしょ?その子のことよ。ほら、彼がこの前使っていた魔法を真似しただけの下位互換だって言っていたでしょう。その本家の魔法を使う子なのよ。」
「あ、その子も彼女の一人になってたんですね。」
「ええ、可愛くて良い子なのよ。そして何より魔法に関してはあの子より上を見たことが無いわ。確か全属性使えて魔法レベルは全て八とか九だった筈よ。」
「えっ、私たちと同じ期間しかこの世界にいませんよね?レベルと違って魔法レベルは凄く上がりにくいのに高過ぎませんか?」
「そうね。でも彼女の理論を知ればそれも納得出来るわ。それを今から教えていくの。」
「会長がそこまで言う程なんですね。分かりました、よろしくお願いします。」
「じゃあまずは……」
そうして私は四季さんの手を握る。
「か、会長?」
「今から貴方の体の中に私の魔力を流し込むからそれを出来るだけ細かくしっかり感じ取るようにして。」
「は、はい。」
「じゃあいくわね。」
意識を集中させて魔力を動かし、ゆっくりと繋いだ手から流していく。
「………温かいのが流れて来てます。これが会長の魔力……」
「動きの感覚を出来るだけ覚えるように頑張って。」
「はい。」
暫くそれを続けた後、次の行程に進むことにした。
「次は貴方の魔力を私が動かすからその動きを覚えて後で自分で真似できるようにしてね。」
「は、はい。」
「あ、あと慣れないうちはくすぐったいと思うけど、頑張って耐えてしっかり感じ取るようにして。」
「分かりました。」
「じゃあ始めるわ。」
再び集中状態に入り四季さんの体内の魔力に干渉してゆっくりと確実に動かしていく。
「……あっ、はっ、んんっ……んあっ!」
少ししてうまく動き始めたのを感じ取った様子の彼女は苦しそうな声をあげ始めた。
「あっ……会長、っっ!だ…めっ。」
そのまま続けていくと彼女の声に少し湿っぽさが混じってきた。少しだが頬も赤みが増して、目も虚ろで焦点が合わなくなっている。
なんだかいけないことをしているみたいね。それに、こんな姿は他の人達には見せられないわね。まあこうなることは分かっていたから大丈夫な場所を選んだんだけど。
「……そろそろ止めた方が良さそうね。」
四季さんの限界が近そうだったから、操作を中断することにした。
「お疲れ様。頑張ったわね。」
「っはぁ……はぁ、はぁ。ありがとうございます。」
彼女は荒い息を吐きながら微笑んだ。
「どう?なんとなく魔力が動く感覚は掴めたかしら。」
「はい、しっかり覚えてます。」
「良かった。じゃあその動きを自分で出来るようにこれから訓練していって。それがスムーズに出来るようになったら魔法の精度、効率、速さが格段に変わるわ。」
「分かりました。」
「それと貴方には魔法がどうやってできているのかを教えるわ。それが十分に理解出来たら属性に関係無く魔法が使えるようになるから。」
「他の属性もですか?」
「ええ、勉強していくうちに分かるわ。楽しみにしていて。」
「はい!」
その後は魔法の理論を少しずつ教えながら、私も一緒に訓練をしていった。演習の時間が終わった後は二人で昼食を食べ、それから各クラスに戻って午後の授業を受けた。午後の授業では魔法の歴史やその他一般的な科目を学んだ。
それら初日の課程を全て終え、自室に戻ってベッドの上に横になる。
登校初日としてはいい感じに過ごせたかな。明日からもこの調子で頑張ろう。
「ふぅ、もう少ししたら綴理君が迎えに来る時間だ。綴理君たちは今日どんな感じだったんだろ?ティアちゃんの家族には会えたのかな?いっぱい話して貰わなくちゃ。」
すっごく楽しみ。早く迎えに来ないかなぁ。
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