表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/71

救出と紹介

 時は少し前に遡る。


 無事に森を抜け、魔皇国の街に入った綴理たちはその光景を見てそれぞれ感想を口にした。


「お〜!これ王国より文明進んでない?」

「凄い近代的な建物だ!」

「やっと、帰ってきたんですね。」


 綴理と言葉は建物やその他の物の時代の進み具合に驚き、ティアは故郷の様子に懐かしさを覚えていた。


「このまま中を色々と見て回りたいところだけど、今日は一旦宿に戻ろうか。」

「暗くなっちゃったもんね。」

「明日もありますし、そうしましょうか。」


 僕たちは旅を一旦切り上げてバイタシアの宿に戻った。


「それじゃあ僕は聖奈を迎えに行ってくるよ。」

「行ってらっしゃい。」

「待っています。」


 僕は言葉たちと別れて聖奈のいる位置を確認する。すると不思議な光景が目に映った。


「これは、囲まれてる?急ぎつつ手を打った方が良さそうだな。………よし、行くか。」



舞台は変わって(シーンスイッチ)



 僕はエルクシアス魔術学院へと転移した。



 着いてすぐさま事前に調べて知っていた魔法無効の装置の存在を消し、同時に存在を消してあった風属性魔法の存在を戻して展開した。そして今、愛する彼女の目の前に出て明るい口調で声をかける。


「またぎりぎりでごめんね、聖奈。」


 すると聖奈は僕が来るのが分かっていたという風な顔をして、


「いいよ、ちゃんと来てくれたんだから。」


 そう言った。


「ありがとう。取り敢えず先に片付けちゃおうか。」


 その信頼に心があたたかくなった僕は、自然と浮かんだ笑みと共にそう口にした。


「なんなんだお前は!いいところを邪魔しやがって!」

「はぁ、やっぱり碌でもなかった。」

「取り敢えずそこを退け!お前一人でどうにか出来るとでも思ってるのか!」

「思ってなかったら一人で来ないよ。」

「ふっ、ハッタリだな。この人数相手でしかも精鋭揃いだ。お前一人でなんて勝てる訳がない。」


 この男は勘違いをしているようだ。少し周りを見れば気付くことなのに、視野が狭過ぎる。だからしっかり現実を見てもらおう。


「え?どれだけの人数で精鋭揃いだって?僕の目には雑魚が一人しか映ってないんだけど?」

「な!」


 僕の言葉で慌てて周囲を見回した男はその目に映る現実に混乱を強くした。


「な、なんなんだこれは!さっきまで全員無傷だった筈でお前にも動きは無かった!何が起きてる!」

「説明は面倒だから一応これだけ。……殺してはいないよ。全員酸欠で気絶してるけどね。」

「酸欠?」

「要は息ができなくて動けなくなったってことだね。加減はしたけど後遺症は残るかも。まあでも、僕の大切に手を出そうとしたんだからその報いだと思ってよね。」

「音もさせずにいつの間に。」


 そう。確かに普通なら呻き声が聞こえたりするだろう。でも副作用がうまく効いてくれたんだよね。


 僕がやったことは単純に『外界から覗く者(フリーダムキャスト)』で男達の周囲の空気の存在を消しただけ。それで酸素が無くなり窒息で倒れ、音を伝えるものが無いために呻き声が聞こえなかった。本当に登場から殲滅までこのスキル一本で片付いてしまった。流石はチートスキル、便利さが違う。

 

 という訳で、


「一人になっちゃったけど、どうする?」


 そう僕は問いかける。さて、答えは……


「調子に乗るな!僕はSクラスの選ばれた存在なんだ!お前如きが勝てる訳がない!」


 言いながら魔法を放ってきた。どうやらこっそりと詠唱してたみたいだ。


「ははっ、燃えてしまえ!」


 男は勝ち誇った様に声を上げた。


「せっかくだからちょっと借りるよ、言葉。」



術式破壊(システムメルト)



 バシュッ


 僕の目の前に迫っていたそこそこ大きな火の玉が一瞬にして掻き消えた。


「は?」

「これ凄いな。本当魔法使い殺しだよ。」


 全く予想していなかった展開に口を開けて固まる男の前で、僕は不敵な笑みを浮かべ、台詞がかった言葉を口にする。


「魔法っていうのはね、こう使うんだよ。」


 言葉程は魔力操作が上手くないからあくまで下位互換だけど、これでも普通の魔法に比べたら遥かに脅威になるだろう。



火属性魔法『焦炎紅球スモールファイアプラネット



 僕が放った直径一メートル程の火の玉は男のすぐ横を掠めてその後ろにあった床を蒸発させ、僅かに焦げ臭さを残した。


「やっぱり言葉程の密度はないから温度もそこそこだなぁ。蒸発してる時点で火力は足りてるんだけど。」


 そんなふうに感想を呟いた僕の前で、


 トサッ


 振り返って後ろの蒸発した床を確認した男は静かに崩れ落ちた。少しして慌てて立ち上がった男は、


「なんなんだ……なんなんだよ!」


 そう叫びながら部屋から飛び出して行った。倒れた仲間を置き去りにして。


 まったく。ちゃんとこいつら回収していってよね。まあそれはともかく、


「大丈夫だった?」


 僕の後ろで戦い、もとい一方的な蹂躙劇を見ていた二人に出来るだけ優しく声をかける。


「うん、大丈夫。ありがとう綴理君。」

「あ、ありがとうございます。」

「どういたしまして。」


 聖奈の方はいつも通りな感じだったけれど、もう一人の娘は少し放心気味だった。


 まあ急展開が続いたからな。無理もないか。


「聖奈。この娘は?」

「昨日話してた娘だよ。」

「あ〜いつも話してるっていう。」

「うん。」


 そっか、取り敢えず挨拶しておかないとな。


「はじめまして、紡詞綴理です。」

「は、はじめまして、四季実乃李です。」

「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。僕の方が後輩ですし。」

「そう、だね。」

「はい、気楽に話していただけると僕も嬉しいです。」


 聖奈の友だちとは仲良くしたいからね。


「分かった。じゃあいきなりだけど、後輩の子で会長と親しい人ってことは貴方が会長の彼氏さん?」

「はい。」

「やっぱりそうなんだ。さっき見た感じだと凄く強いんだね。一緒に召喚された中にこんなに強い人がいたなんて、全然知らなかった。」

「無理もないです。僕はあなた方とは一緒にいませんでしたから。」

「どういうこと?」


 まぁすぐには思い当たらないよね。


「初日に追放された人がいましたよね。あれが僕です。」

「え?そんなに強いのになんで?」

「あの時は正真正銘の最弱でしたから。僕のステータスの本来の性能が出始めたのは城を離れてからなので、最初の時点では確かに戦闘能力は無かったんですよ。良ければその時のステータス見ますか?」

「え、良いの?個人情報だけど。」

「はい。名前をふせたら同一人物のステータスと分からないくらいに今のステータスは何もかもが違うので。」

「じゃあせっかくだから。」

「分かりました。」


 そうして僕は自分の初期ステータスを実乃李さんに見せる。


「わっ、これは確かに。私が大体平均だけど、それよりもずっとステータスが低い。それに戦う為のスキルも無かったんだ。」

「はい、言った通り最弱でしょう?」

「うん。それとこの職業欄の空白はどういうこと?」

「本当に最初は空白だったんです。それで自分のステータスが特殊なものだと予想して色々とやっているうちに今の感じに。」

「結構レベルも上げたり?」

「そうですね。僕の場合はステータス値の低さがネックだったのでそこの強化は欠かせませんでした。」


 一レベルあたりの上昇値が少ないからかなり上げる必要があったんだよな。


「ちなみに聞いても?」

「良いですよ。今のレベルは……四十八ですね。」

「四十八!?三倍近くもある。どうやったらそんなに。」

「冒険者としてひたすら魔物を狩りました。それしか方法が無いですからね。」

「そっか。でも、そうするともしかして城に残った誰よりも強いのかな?」

「その点は両方の実力を知っている聖奈に聞いた方が確実だと思います。」


 そう言って僕たちの会話を横で見守っていた聖奈に視線を移すと、


「そうね。城に残った勇者全員がかりでも綴理君たちには勝てないと思う。」


 聖奈はそう断言した。


「そこまでなんですか?」

「ええ。綴理君は見ての通りだし、他の娘たちも魔法戦主体でとても強い。魔法だけに限って言えば綴理君よりも強くて私たちとは比べものにならないわ。」

「さっきのよりも?」

「そうですよ。さっき使った魔法はその娘の魔法を真似ただけの下位互換なので。」

「そっか。取り敢えず私が思ってる以上に強いことは分かった。」

「まだまだ強くならないといけませんけどね。」

「それだけ強いのに?」


 確かにこの世界に来たばかりの頃に比べて遥かに強くなったし、今の所負けたことも無い。でもきっと僕より強い人はいるし、今の僕じゃ太刀打ち出来ない危険だって降りかかる可能性はある。そんな時に出来ないじゃ困るんだ。


「誰よりも強くなって、どんなことにも対処出来るようになる必要があるんです。僕を大切に思ってくれる彼女たち全員を守りきるために。」


 僕は揺るぎない覚悟を乗せてそう言った。


 それを聞いた実乃李さんは何処か納得したように呟く。


「そっか。本当に大切にされてるんですね。」

「ええ。力も覚悟もあったでしょう?」

「はい。この人なら会長を落としたのも頷けますね。それと他にも彼女がいることも。そう思えるだけのものを感じました。」

「そう言っていただけるのは嬉しい限りですね。あ、そろそろ時間も時間ですし、寮に戻りましょうか。」

「そういえばもう結構な時間だったわね。回りたかった分は回れたし帰りましょうか。」

「そうですね。改めて、助けてくれてありがとう。」

「いえ、無事で良かったです。」


 こうして僕たちは教室棟を出て寮へと向かった。



「女子寮か。それなら僕はここまでかな。」

「私はどうしよう。このまま帰ったほうが早いけど。」

「あれ?会長は寮に帰るんじゃないんですか?」


 普通の人はそうだよね。でも、


「学院に行っている間は寮を使うけれど、終わった後は寮には帰らないわ。今日みたいに毎日迎えに来てもらうことになっているから。」

「もしかして近くに宿をとってるんですか?」

「いいえ、ここからはだいぶ遠くの宿よ。街二つ離れてるわ。」

「それじゃあ今からだと時間かかりません?」


 確かに歩いて行ったら当然時間はかかるんだけど、


「彼がいるから問題無いのよ。ね?」

「うん。僕は瞬間転移のスキルを持っているので移動には一秒かからないんです。」

「え?そんなことも出来るんだ。」

「せっかくですし体験してみますか?」

「是非とも!」


 僕の提案は一瞬で受け入れられた。


「では、お手をどうぞ。」

「は、はい……」

「何処に行きたいですか?」

「じゃあ分かりやすくお城の前までで。」

「分かりました。」



舞台は変わって(シーンスイッチ)



「着きましたよ。」

「え、もう?」

「はい。」


 僕がそう言うと実乃李さんはキョロキョロと周囲を見回して驚愕の声を上げた。


「本当にお城の前まで来てる。凄い!」

「これなら遠くても問題無いでしょう?」

「そうですね。」

「では体験も出来ましたし、寮に戻りましょうか。」

「時間も結構遅いもんね。じゃあお願い。」

「はい。」


 僕は再びスキルを起動した。



「戻ってきました。」

「ありがとう。今日は色々と凄いもの見れて楽しかった。今後とも会うことがあったらよろしくね。」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。」

「じゃあ、私たちはこれから帰るけど、今日見たことは他の子には内緒にしてね。」

「勿論です。」

「良かった。それじゃあまた明日会いましょう。」

「はい。おやすみなさい、会長。」

「ええ、おやすみなさい。」


 こうして僕たちは実乃李さんと別れ、自分たちの宿へと帰った。



「ただいま。」

「おかえり。結構時間かかったけど、何かあったの?」

「色々とね。」

「聞かせて。」


 それから、聖奈からは学院のことと僕が迎えに行ってからのこと、言葉たちからは魔皇国に行くまでのことをお互いに話す形で今日一日を振り返った。



「今日は本当に色々あったね。特に聖奈のことに関しては今後も警戒しておいたほうが良いかも知れないし。」

「そうね。危険を伝える方法を用意しておいた方が良いかも。」

「そうだね。あ、普通に僕のスキルを共有して使ってくれたら良いんじゃないかな。危険な時は瞬間転移でここまで戻って来る感じで。」

「伝える手段については私がそれ用の魔法を作ってみるよ。それまではその方法で行こう。」


 流石言葉、やっぱり魔法を自分で開発出来るのって凄いよな。


「じゃあそういうことで。明日も朝から動くし、もう寝ようか。」

「そうですね。しっかり睡眠をとって明日もまた頑張りましょう。」

「うん。」

「ええ。」

「じゃあ皆おやすみ。」

「うん、おやすみ。」

「おやすみなさい。」

「ええ、おやすみなさい。」


 こうして新生活一日目が終了した。

面白い、続きが読みたいと思った方は、星とブックマークをつけていただけると嬉しいです。感想、改善点等もお待ちしています。気軽に書いてください。執筆の励みになります。

ローファンタジーでの新作が取り敢えずプロローグだけ書けたので載せました。タイトルは、「ダンジョンゲームクリエイター〜反則だって?ゲームなんだからなんでもアリだろ!【作成】【実装】で攻略する現代ダンジョン〜(仮)」となっています。これから少しずつ書いていきますので、よろしければそちらの方も読んでみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ