魔皇国メルトハートへ
やっと書けました。遅くなりすみません。
国境付近に転移した僕たちはティアの案内に従って国境を越えた。国境沿いの門等については僕のスキルで難なく通り抜けることが出来た。この国は魔皇国を敵対視してるからその辺りは厳しそうなんだよな。だからこそスキルがあって良かった。
「先に自然しか見えないけど、一応ここからは魔皇国なんだよね?」
「はい。私の故郷魔皇国メルトハートです。」
「そういえば国名は初めて聞いたな。」
まあ予想はついてたんだけど。
「今までは特に言う機会も無かったですからね。でもせっかく帰って来たので言うならここかなと。」
「そうだね。それにしても国名がそれってことはティアってやっぱり皇女なの?」
「ツヅリさんは私のステータスを見れますもんね。称号にある通り私は皇女ですよ。特に明かす必要も無かったので言ってませんでしたけど。だって私が皇女であってもそうでなくても貴方は変わらないでしょう?」
「勿論。僕は魔皇国皇女を愛してるんじゃない、ティア・アイズ・メルトハートを愛してるんだ。」
初めて会った時、ティアは魔皇国皇女どころか奴隷に堕ちたただの可哀想な少女だった。僕はただこの子を不幸なまま終わらせたくなくて、僕が幸せにするって誓ったんだ。今じゃ僕の方が幸せにして貰ってるけどね。
「私にとってもティアはティアだよ。話し方とかから育ちの良さは感じてたからどこかのお嬢様なのかなって思ってたし。流石に皇女は予想してなかったけど。」
「ふふっ、ありがとうございます。これからも今まで通りのティアとしてよろしくお願いしますね。」
「うん、よろしく。」
「よろしくね。」
「それで、ここからの道のりなんですが、ご覧の通りずっと森が続くんです。整備された道も無いので普段の依頼と同じように探索しながら進むことになります。」
「早速サバイバルか。楽しみだな。」
「今日初の運動だね。」
さっきまで普通なら驚くであろう事実と向き合っていたのに、僕たちの意識はもう既にこれからの狩りに向いていた。
こういうことも含めた上で旅をするって決めたからね。予定通り魔皇国の魔物がどれほどか見させて貰おう。
「もう準備は出来ているみたいですね。大まかな道案内をしますから、ついてきてください。」
「今日中に森は抜けられそうかな?」
「そうですね。迷いなく進めれば私たちの速さなら陽が沈む頃には抜けられると思います。」
「そっか。じゃあ今日はそれを目標にしつつ楽しんでいこう。」
「はい、王国とはまた違った魔物もいるので楽しみにしていてください。」
こうして僕たちは目前の森へと足を踏み入れた。
「グルルルッ!」
「ガアッ!」
森に入って少し進んだところで早速魔物に出会した。その数二十。
「なんとなくそんな気はしてたけど、数多いな。」
「そうですね、魔皇国の森は王国のものに比べてより野生的ですから。魔物の種類、数、強さ、どれをとっても数段上ですよ。」
「まあ、それくらいの方が色々新しいことを試せるからありがたいか。もういくつか新スキルの使い道を考えてあるから順番に試していこう。」
「私もまだまだ使ってない魔法があるからお試ししてくかな。」
「私も訓練の成果を見せるときですね。」
三人それぞれ目的を持って魔物に対峙すると、一斉に行動を開始した。
まずは僕から。といってももう既に手は打ってあるんだよね。さっきの会話中にいくつか魔法のトラップを設置しておいたから。
「っと早速かな。」
僕の方に飛びかかった狼型の魔物が空中でバラバラに切断された。少し離れた場所ではまた別の個体が黒焦げになった。
「うん、上手く使えてる。タイミングは厳密にしないといけないけど、動きさえ見えれば問題無さそうだな。」
今やったのは『外界から覗く者』で消してあった発動中の魔法を回避出来ないタイミングを見計らって戻す作業だ。あらかじめ設置しておける上に設置位置が固定されていないからまず間違いなく当たる。名をつけるとすれば、
「『後出しの先手』ってところかな。」
かくして僕が倒すべき魔物は一瞬で片付いた。
さて、二人はどうかな?
土属性魔法『凶弾回廊』
地面からせり出した土の壁が魔物の群れを取り囲み、その内側を土の弾丸が飛び回る。暫くして崩れた土壁の中には倒れた魔物の死体だけが残っていた。
「うん、コントロール完璧!ここまで完成度上げるの大変だったなぁ。」
「面白いね、これ。見てるとテンション上がる。」
「でしょ。弾丸同士をぶつけて反射させてるから角度の調整が難しい魔法でね、コントロールの訓練にはちょうどよかったんだ。それでずっと前からやってたんだけど、せっかくだから実戦にも使おうかなって。」
いつの間にこんな複雑な練習してたんだろうか。僕が離れる瞬間なんて結構限られてるのに。まぁ言葉の場合は練習用の空間を自分で整えられるからちょっとした時間でも出来てしまうんだけど。
「僕もいずれこれくらい出来るようになりたいなぁ。」
「綴理くんなら多分出来るよ。私よりもコツ掴むの上手いし。まあ多少は集中が必要だけどね。」
「今度休みの日に時間取って練習してみるか。スキルは結構充実してきたし、魔法の方も充実させないとな。」
「まぁ綴理くんの場合そのスキルが強過ぎるんだけどね。」
「手は多いに越したことはないから。」
「そうだね。私も何かスキル取ろうかな。」
「僕のスキルは言葉も使えるんだけど。」
「そうだけど、それに頼り切りだとダメになりそうだから普段は自分で頑張らないと。共有は奥の手にしよ。」
「真面目だなぁ。でもそういうとこも言葉のいいとこだよね。」
僕は素直に感心した。
「ありがとう。じゃあ私のとこも片付いたことだし、あとはティアだね。」
「ティアの魔法はどうなってるかな。」
「ティアはかなり頑張って練習してるからだいぶ強くなってるよ。」
「そっかじゃあしっかり見させてもらうかな。」
そうして少し離れた位置で戦うティアに目線を向けた。
土属性魔法『血濡れの暴食』
こちらでは地面から現れた大きな牙付きの口が、走り寄る魔物を次々と捕食していく。
「なるほど、そういうタイプの魔法か。そういえばありそうなのに使ってこなかったな。こっちにもそういう拷問器具あるのか。」
その名の通り牙の中に土中の金属が混ぜられていて硬度が増されているようで、一度の捕食で確実に内部の魔物を刺殺している。吐き出された魔物が穴だらけになっていることからその苛烈さが窺える。
「普段のティアからは考えられないくらい魔法は殺意凄いよね。私も魔法の組み立て方は教えたけどどんな魔法にするかまではティアの発想に任せてるからいつも予想外の魔法でちょっと驚く。」
横で見ている言葉がそう呟く。
「この世界の人にとって魔物は絶対悪みたいだからね。容赦する考えが無いんだよ。」
「そっか、道理で。でも形はどうあれ魔法としては凄く密度も精度も高くなってるから私としてはティア頑張ったなって思う。」
「僕から見ても上手くなってるなって思うけど、眼を持ってる言葉だとそこも細かく分かるんだよね。」
「うん。魔力の動きが視えるからどれだけ上達したかしっかり分かるよ。」
「じゃあちゃんと褒めてあげないとね。」
「そうだね。」
丁度良くティアが残りの魔物を片付けきったので、近付いて声をかける。
「また魔法の練度上がったね。教えたこともしっかり出来てるし、頑張ったね。」
「うん、僕から見ても発動のスムーズさとか場所とタイミングとか細かいところが上手くなってると思う。頑張ったんだね。」
「ありがとうございます。色々と出来るようになると楽しくて、時間が空くといつも練習しているんです。魔法がここまで自由で楽しいものだとは思っていなかったので教えてくれたコトハさんには感謝しています。」
ティアの顔は達成感に満ち溢れていた。そして何よりとても楽しそうだった。
「さて、日暮れまでに森を抜けなきゃいけないし、そろそろ先へ進もうか。」
「そうですね。この調子なら想定より早く抜けられそうですよ。」
「じゃあどんどん進んでいこっか。次は連携とかもしながらね。」
「僕のスキルでちょっと面白いこと出来そうだからそれも試したいな。」
「いいね。色々やってこ。」
「はい。それでは次はこちらです。」
こうしてひたすら魔物を倒しながら陽が沈むギリギリまで進み続けた僕たちは、遂に広大な森を抜けることが出来た。
「あ、遠くに見えるあれって門だよね?」
「はい。あそこから正式に魔皇国という感じですね。今まで通った道は一応魔皇国領ではありますが、認識的には国境代わりの森という扱いです。」
「じゃああの門を越えたら本格的に魔皇国ってことか。楽しみだな、早く行こう。」
そうして向かおうとしたところで、
「ところでティアはティアとして門を越えるの?それとも隠れて戻る感じ?」
「あ、そうだよね。立場が立場だから混乱が起きそうだよね。」
「そうですね。では少し見た目を変えて一般人として門を越えましょう。といっても念の為ここはツヅリさんにお願いします。」
「もしバレたら困るどころじゃ済まされないもんね。確実に足止めされる。そういうことなら確実な道で行こうか。」
言って二人の手をとる。
「いくよ。」
「うん。」
「はい。」
『舞台は変わって』
満を持して僕たちは本格的に魔皇国へと足を踏み入れる。
さあ、どんな景色が待ってるかな?
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