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久しぶりの仕事

「王都も殆ど回りきって満足したし、久しぶりに仕事しに行かない?」


 四人での初デートから二日が経った朝、朝食を食べながら話している時に言葉がそう提案した。


「結構お金も使ったもんね。」

「まあ、実はその点は心配無いんだけど。」

「そうなんですか?この五日間はあまり気にせずに使っていた気がするんですが。」


 ティアは不思議そうに首を傾げている。


 まあ何も言ってなかったもんね。


「結構お金使うだろうなって思ってちょっとした手を打っておいたんだ。」

「それって……」

「言葉なら分かるんじゃないかな。」

「あ、もしかして賭けた?」

「うん。王都にもあったから、賭博場。」


 この世界に来たばかりの頃からなんだかんだいってお世話になってるな。


「いつの間に行ってたの?ずっと一緒だった気がするんだけど。」

「皆が起きる前とか、ちょっと一人になった時とかに瞬間転移でさっと。」


 スキルって便利だよね。


「そ、そうなんだ。綴理君って賭け事するんだね。」

「う〜ん、正確に言うとほぼ勝てる確信をもった投資かな。」

「どういうこと?」

「私も気になります。」

「やってることは簡単だよ。僕の持っているスキルで必要量情報を集めて擬似的な未来予知をしてるだけ。」


 もう一度言おう、スキルって便利だよね。


「なんかもう何でもありだね。」

「まあ日本にいた時から綴理くんは普通じゃない方法を普通に使う人だったから。」

「発想力豊かだと言ってほしいな。なんかその言い方だと変人みたいじゃん。」

「その点に関しては皆そう思ってたと思うよ。」

「やっぱり?」

「でも同時に尊敬もしてたと思う。直接助けてもらった人は特に。」

「そう、かな?そうだといいんだけど。」


 まあ結果として皆の人生が幸せな道に向かってくれれば、僕はそれだけで満足なんだけどね。


「さて、そういう訳でお金の心配はないよ。使った分と同じくらい稼げたから。」

「そっか、でもそろそろ運動したいよね。戦闘感も取り戻したいし。」

「そうだね。せっかくだし御影先輩も誘って皆で狩りに行こうか。」

「元々一緒に魔法の練習するって言ってたもんね。ちょっと早めだけど丁度良いし誘っちゃおっか。」


 という訳で、早速御影先輩に会いに行った。聞いていた部屋の前でドアを軽くノックし声をかける。


「御影先輩、いらっしゃいますか?」

「……ああ、今開ける。」


 そう声がしてドア越しに気配が近づいてきた。それから間もなくしてドアの鍵が開く音がする。


「入っていいぞ。」

「ありがとうございます。」


 僕らは揃って御影先輩の部屋に足を踏み入れた。


「俺の所に来るとは珍しいな。今日は出掛けないのか?」

「そのことなんですが、王都は十分楽しめたので今日は久しぶりに魔物を狩りに行こうかと思いまして、そのお誘いに来ました。」

「そうか。貴重な機会だ、是非乗らせてもらおう。」


 御影先輩は即決だった。よほどこの前の言葉の魔法に興味があるようだ。


「良かった。この後すぐ行く予定なんですが大丈夫ですか?」

「ああ、すぐにでも行ける。」


 この人はいつでも抜かりないな。


「分かりました。早速向かいましょう。」


 僕たちは冒険者ギルドに向かった。


「僕たちはついでに受ける依頼を選んでますから、その間に冒険者登録をしてきて下さい。」

「分かった。」

「あ、それなら私もした方がいいよね。」

「そうだね。聖奈もお願い。」

「うん、じゃあ行ってくるね。」


 御影先輩と聖奈を見送って、僕たちは掲示板に向き直る。


「街が違うと依頼の中身も少し変わるな。」

「バイタシアだったらまずレギオンウルフだもんね。」

「そうですね。あそこは商人が商品を運ぶ道の危険を取り除くことが中心ですから。」

「王都は単純に街の外の魔物が中に入って来ないようにって感じだな。まあ、冒険者としては目的はどっちでもいいんだけど。」

「確かに。それで、どれ受ける?」

「そうだな。じゃあこれとこれと、これでいこう。」


 僕は比較的討伐しやすいランクの依頼を三つ選び、受付に持っていって手続きを済ませた。あとは二人を待つだけだ。


 それから少しして、登録を済ませた二人が戻ってきた。


「終わったよ、綴理君。」

「待たせたな。」

「いえ、じゃあ行きましょうか。」


 僕たちはギルドから出て路地裏に向かう。


「じゃあ皆掴まって。跳ぶよ。」

「分かりました。」

「いつものだね。」

「あれだよね?」

「よく分からないが、従おう。」


 全員が掴まったのを確認して、僕はスキルを起動した。



舞台は変わって(シーンスイッチ)



「到着。」

「なるほど、転移か。どこまでも規格外だな。」

「理解が早くて助かります。早速狩っていきましょう。」


 僕は周囲の索敵を瞬時に行い、目的の魔物を見つけた。


「いました。あっちですね。」

「索敵用のスキルもあるのか。便利だな。」

「僕の場合は魔物の種類まで分かるのでより便利です。これから向かう所にいる魔物は比較的狩りやすいので、準備運動には丁度良さそうですよ。」

「そうか。」


 そうして話しているうちに目当ての魔物が見えてきた。


「あ、あれだね。誰からやる?」

「う〜ん、どうしよっか。」

「じゃあ私からでいいかな。この中だと一番戦いに慣れてないから丁度良いんじゃないかな。」

「じゃあ聖奈からいこうか。」

「うん。」


 魔物が至近距離まで迫り、聖奈が構えて詠唱を始める。


「集いし願いを炎と変えて、歯向かう敵を焼き尽くせ。『炎球(ファイアボール)』!」


 声と共に魔力が集まり一つの火の玉が出来て、魔物へと飛んでいき直撃した。見たところ初級の魔法のようで、見た目からそこまで威力があるようには見えない。それでも相手が弱い為か、しっかりと効き目があったようだ。


 それにしても、


「詠唱ってそういう感じなのか。初めて聞いたよ。なんだかんだティアも無詠唱を覚えてそっちが主流になったから、こうして詠唱をする人が今までいなかったんだよな。」

「そうなんだ。でも無詠唱って便利だよね。詠唱魔法だとこうやって唱えてる間に攻撃されると打てないもん。」


 聖奈はそう言って羨ましそうな顔をした。それなら、


「聖奈も覚えてみる?無詠唱魔法。」

「どうすればいいの?」

「詳しくは言葉に聞いたほうがいいかも。誰よりも無詠唱を知ってるからね。」

「そっか、じゃあ言葉ちゃんに教えて貰おうかな。」

「いいよ。せっかくなので御影先輩も一緒にどうですか?」

「そうだな。いつかは詳しく聞こうと思っていたから丁度良い。是非教えてもらおう。」


 言葉が快く承諾してくれたので、急遽言葉の無詠唱魔法講座が始まった。僕とティアはもう既に受けて原理を理解しているので、先輩二人を言葉に任せて受けた依頼を消化しに行くことにした。


 勿論言葉には許可を貰ったよ。勝手においていく訳にはいかないからね。


 そうして二手に分かれてティアと森の奥に入って行く。


「こうしてふたりきりっていうのは初めてかもね。」

「そうですね。合流までの間はひとりじめさせてもらいましょう。いいですよね?」

「勿論だよ。」

「嬉しいです。これがデートならもっと良かったんですけど、欲張り過ぎもいけませんね。今は一緒に狩りで汗を流しましょう。それだけで十分です。」

「うん。でもいつか一対一のデートの時間も取るよ。たまには一人一人に向き合わないとティアにも、そして言葉と聖奈にも悪いからね。」

「楽しみにしてますね。」

「頑張って楽しませてみせるよ。」


 そうやって笑い合っていると僕の索敵の範囲に魔物が入ってきた。丁度良く結構な数の群れだ。


「結構な数が近づいてきてる。せっかくだから連携っぽいことしてみない?」

「いいですね。試しにやってみましょう。」


 僕たちはぶっつけ本番で連携をしてみることにした。



 結果としては、まあ上手くいった。僕が近接戦闘、ティアが後衛での魔法攻撃を担当して、一度もお互いの邪魔をすることなく群れを狩りきったのだ。


「思ったよりいけたね。」

「はい。この調子でどんどん合わせて行きましょう。」

「なんか楽しくなってきたなぁ。」

「私もです。」


 そうして言葉たちと合流するまでひたすら二人で魔物を狩っていった。最終的にマジックバックに入りきらなくなったので、言葉の近くまで転移で運んで言葉に収納して貰った。


「言葉の方はどうだった?」

「原理は理解して貰えたから、実践して少しずつ慣れてもらったよ。あとは個人練習で段々と上達していくと思う。」


 やりきった顔で言葉がそう言った。


「そっか。順調なら良かった。」

「ああ、聞いていてとても勉強になった。元々俺も詠唱はしないが無詠唱の意味が違ったからな。一から十まで自分の意志で魔法を組み立てるのは初めての経験で面白かったぞ。これから毎日訓練するつもりだ。」


 御影先輩も満足そうにしている。


「私も、まだ完全には出来ないけどコツは掴めてきたよ。帰ったらまた練習するつもり。」

「うん、応援するよ。」


 聖奈も上手くいったようで何よりだ。


「さてと、このあとはどうする?狩りを続ける?」

「私とツヅリさんは十分体を動かせましたけど。」

「そうだね。私たちも練習の為に魔物は狩ったから運動は出来たんだよね。」

「私も満足かな。」

「俺も課題を貰えたからな、このまま帰っても問題無い。」

「皆もう良さそうだね。じゃあ帰ろうか。」



 という訳で来た時と同じように僕たちは転移でギルド近くまで戻ってきた。そしてすぐに買い取りの手続きをする。


「………合計で百二十二万エルクとなります。ご確認下さい。」

「ありがとうございます。」


 思ったより稼げてしまった。


 あれ?今日って運動が目的じゃなかったっけ?


 ギルドの外に出て結果を共有する。


「結構稼げてたみたいだ。」

「デートすると結構使うから先のことを考えるとありがたいね。」

「そうですね。お金はあって困るものではないですし。」

「うん。しっかり稼いでしっかり貯めとこうね。」


 そうだよね。この調子でこれからもどんどん稼いでいこう。


「じゃあ今度こそ宿に帰りますか。」

「そうだな。俺は少し寄るところがあるからここで。ではまたな。」

「お疲れ様でした。」

「ああ。」


 御影先輩は一足先に街中へと消えていった。その後ろ姿を見送り、僕は口を開く。


「僕たちもいこうか。」

「そうだね。」

「うん。」

「はい。」


 僕たちは今日の成果を振り返りながらゆっくりと宿へと歩いて行った。宿についてからはいつものように諸々のことを済ませ、ベッドに寝そべる。


「今日はしっかり運動したから気持ちよく寝れそう。」

「そうだね。いい感じに疲れてる。」

「私も今日はいっぱい動きました。」

「私は初めての無詠唱ですっごく体力使ったから結構眠たいな。」


 うんうん。頑張ったもんな。


「皆お疲れ様。結構魔物を倒してレベルアップとかもしてると思うけど、確認は明日にしようか。今日はこのまま寝て疲れをとろう。」

「分かった。おやすみ、綴理くん。」

「はい。おやすみなさい、ツヅリさん。」

「うん。おやすみなさい、綴理君。」


 こうして僕たちは心地良く眠りにつき、今日という一日を終えた。




 全員が眠って一時間程経った頃、ふと思い出したようにそれは始まった。


「条件を満たした為、対象者のステータスのアップデートを実行します。」


 聞こえる筈の人たちは全員が眠りについていた為、この声は誰にも聞かれることなく夜の闇に溶けていった。

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