一つ目の再会とイベントフラグ
少し遅れました。すみません。
夕方に差し掛かった頃の王都を綴理たちが歩いていた。
「もう少しで終わりそう。流石は王都、宿の母数が多くてチェックが結構大変だったよ。」
「お疲れ様。宿に入ったらゆっくり休んでね。」
「うん、そうしようかな。まだ一日目だしね。」
「そうですね。明日もありますからゆっくりしていきましょう。」
そうして話していると、思わぬ所から声がかかった。
「あれ?追放されたツヅリクンじゃ〜ん。なんでここにいんだよ。しかもなんかかわいい娘たち連れてんじゃねえか。」
ここに来てこいつか。まあ王都に来たらこうなることもあるだろうとは思ってたんだけどさ。ちょうどいいや、流れ次第だけどちょっとしたサプライズをしてあげようか。どんな反応するか楽しみだなぁ。取り敢えず会話しないとな。
「あ、うん。今日はたまたま来ててね。その様子だと佐藤君達はデートって感じみたいだね。」
僕は比較的控え目な態度で返した。調子に乗ってくれれば幸いだな。
「ああそうだけど。ツヅリクンはこんなとこで何してんだよ。」
「見ての通りだけど?」
次は少し堂々として返す。
「こんなかわいい娘連れてデートってか?ツヅリクンの癖に冗談キツいぜ。で、ホントはどうなんだよ。」
現状を見ても信じないか。まあそうだろうね。でも、
「え?普通にデートだけど?」
当然のようにそう言って返す。すると少しイライラしてきたのか口調が強くなって、
「あのなぁ、お前みたいな陰キャにこんなかわいい娘達は釣り合わねぇって言ってんだよ。」
そんなことを言ってきた。釣れてきたかも。もう少しかな。
「まあ、二人共尋常じゃなく可愛いし、僕には勿体無いくらいの良い娘たちだよ。」
これは素直に本心だ。でもこう言うと多分、
「そうだよなぁ、だから俺に寄越せよ。」
言うと思った。それなら、
「う〜ん、直接聞いてみたら?まあ意味無いだろうけど。」
現実を見てもらおう。
「どういう意味だよ。まあいい、やってみれば分かる。」
そうして【勇者】様は自信満々に僕の彼女たちを口説き始めた。
「こいつはハズレ職業の雑魚だぜ?そんな貧弱な奴より俺の方が強いしさ、な?こんな奴じゃなくて俺と付き合おうぜ?絶対こいつといるより楽しいからさ。」
アピールポイントそこしかないのか。まあどうでもいいんだけど、そのアピールポイントすらアピールポイントになってないんだよね。やったら分かるけど。ま、そんなことしなくても結果は変わらないと思うけど。
「丁重にお断りさせていただきます。私が愛するツヅリさんを悪く言う人は好きになれません。」
ティアが真っ先に断った。ありがとう。
「私もお断り。にしても佐藤君は全然変わらないんだね。莉紗ちゃんと美沙紀ちゃんを連れているっていうのに他の子ナンパするとか。」
言葉は呆れ気味にそう言った。すると、
「あれ?俺のこと知ってるの?」
やっぱり気付いてなかったか。地球にいた時からだいぶ服装とか変わってるもんな。それに何より伊達眼鏡してないしね。普段から一緒にいない男子は気付かないよね。まあ、男子は、だけど。
「龍牙くん、この子夢咲さんだよ。」
「一緒に追放されたうちのクラスで一人だった子。」
流石は女子。ちゃんと分かってる。
それで、教えられた【勇者】様の方は、
「え?まじか!こんな可愛かったんだ。知らなかった。」
とこんな感じだった。それを見て言葉が口を開く。
「じゃあこれからはこれが私ってことで。それと」
「ん?」
「さっき綴理くんより強いって言ってたけど。」
「お、おう。そう言ったぜ。追放されたハズレ職業より【勇者】の俺の方が強いに決まってるだろ。城の勇者達の中でも俺は一番強いんだ。それともなんだ、俺よりこいつの方が強いとでも?」
佐藤は僕を馬鹿にするようにそう言った。
「うん、そうだけど?信じられなかったやってみれば?」
ナイスアシスト言葉。
「は?何馬鹿なこと言ってんだよ。んな訳ねぇだろ。」
ここは出番かな。最っ高に煽ってあげよう。これはちょっとした仕返しも込めたサプライズなんだからね。されても嬉しくないやつだけど。
「僕は構わないよ。強いんでしょ?是非とも【勇者】様の強さを見せてくれないかな。それとも、自信無いのかな?」
とまあこんな感じに言うと、
「いいぜやってやるよ!」
綺麗に乗ってくれた。
「いいね。でもここじゃ周りの迷惑になっちゃうからギルドの修練場に行こうか。王都のだから結構広いだろうし存分に出来る筈だよ。」
そうして僕たちは王都の冒険者ギルドの修練場へと移動した。
「じゃあ始めよっか。」
「あぁ、いつでもいいぜ。かかってこいよ、【勇者】の力を存分に見せてやる。後悔すんなよ?」
やる気満々で結構。ここからは終始煽りモードで行こう。その方が楽しくなりそうだ。
「すごい自信だね。楽しみだなぁ。」
「そんな顔してられるのも今のうちだ。武装召喚!」
早速主力武器のお出ましか。聖剣ってどんなのなんだろう。まだ使ったことないから知らないんだよね。
「じゃあ僕も用意しますか。」
僕はいつもの短剣を鞘から引き抜いて構えをとる。
「それじゃあ行くぜ!おらよっ!」
早速勇者が斬りかかってきた。大振りで、しかも遅い。取り敢えず避けるのもあれだし受け止めるか。
「よっと。」
「んなっ!受け止めんのかよ。まあいい長くは保たないだろ?」
「どうかな。でもそうだね。このままだと進まないし、一旦仕切り直すかなっって!」
短剣で聖剣の軌道を逸らして距離を取る。
「ふぅ、あんまり時間かけるのもあれだから全力で来てよ。」
「言われなくてもそうしてやる。聖剣、俺に応えろ!」
言った瞬間聖剣が淡く光を放った。
お、もしかしてこれは……
「閃光剣!」
振り切られた聖剣からビームの様なものが放たれた。当たったら痛そうだから避けておこう。このスキルのお披露目も兼ねて、ね。
『瞬間移動』
僕は勇者の真後ろに移動した。
「どうだ!……どこ行きやがった。死んだか?」
急に僕が消えたから、困惑しているみたいだ。
「そんなわけないじゃん。ちゃんと生きてるよ。」
「っ!いつの間にそんなとこいやがる!」
僕が声をかけると驚いて振り向きつつその場から飛び退いた。
「いいね。そこまで反応してくれると嬉しいよ。使ったかいあったな。」
「何した。」
「瞬間移動。」
「は?」
「だから、瞬間移動したんだよ。あれから色々とやってるうちに身に着けてね。」
「んなのありかよ。」
「ありだよ。それと、これで驚くのはまだ早いよ。」
「まだなんかあんのかよ。」
「よく見てて。」
そうして僕は短剣を鞘にしまう。
「何する気だ。」
「佐藤君は勇者で、聖剣っていったら勇者だけが使える特権だよね。」
「それがどうした。」
「それが勇者だけの特権じゃないとしたら?」
「は?聖剣を使えんのは勇者だけだろ?」
「まあ見ててよ。」
さあ、サプライズ本番だ。
「聖剣解放、及びに武装召喚!」
言うと同時に僕の手元に初めて見る剣が現れた。
「おお!これが僕の聖剣かぁ。」
「今、何しやがった!」
「佐藤君と同じことをしただけだけど?」
「それがおかしいって言ってんだよ!聖剣は俺だけのものだ!なんでお前が召喚できんだよ!」
「出来るんだから仕方ないよね。それと、これで最後じゃないよ。ここまで出来るってことはまだあるよね?」
「まさか……」
「そのまさか。行くよ、閃光剣!」
僕の振り下ろした剣から出た光の衝撃波は本家勇者の横を掠めて通り過ぎて行った。
「な、なんだよどうなってんだよ。お前は戦闘力皆無で追放されたんじゃねぇのかよ!それが、こんな……」
期待通りに戸惑ってるな。サプライズ成功だ。でも、まだこれで終わりじゃない。
「じゃあお披露目も済んだことだし、続けようか。」
僕は瞬間移動しながら聖剣を振り翳す。流石に怪我させるのはあれだからちゃんと受け止められるくらいの位置とタイミングで。
「っっ!くそっ!こんな筈じゃなかったのに!」
瞬間移動を細かく使用して全方位から次々に攻撃を加えると、勇者はついてくるのがやっとという感じでどんどんと追い詰められていった。そして、
「これで終わり。」
壁際まで追い詰めた僕は聖剣を勇者の眼前に突きつけた。それを受けて勇者は、
「……負けだ。もう俺はお前には関わらねぇよ。これでいいだろ?」
諦めた表情で座り込んだ。
「そうだね。僕の大切な人たちに手を出さないでくれればいいかな。まあ、それはそうとして。楽しかったよ、ありがとう。」
そう声をかけて、僕は少し離れた場所で見ていた言葉たちのところまで歩いて行った。
「お疲れ様。大成功だね。見ててちょっとすっきりした。」
「それは良かった。でも、ちょっとやり過ぎた気もするけどね。学校にいた頃の扱いの仕返し程度のつもりだったんだけど、調子に乗り過ぎたかも。」
「まあいいんじゃない?勇者ってだけじゃ勝てないって事が分かったんだから、佐藤君の為にもなった筈だよ。」
「ならいいんだけどね。」
なんて運動後の反省会をしていると、隣で見ていた勇者の連れの二人が声をかけてきた。
「紡詞ってこんな強かったんだね。追放されるくらいだから相手にならないと思ってたけど逆に龍牙君が相手にならないとか。」
「うん、紡詞君すごく強かった。どうしてあの時追放されたのか分からないくらい。」
そう言って驚く二人に少し補足しておこう。
「あの時は本当に戦えるようなステータスじゃなかったんだよ。追放された後に頑張ったらこうなっただけで。それと、瞬間火力なら僕より言葉の方が凄いよ。」
「そうかもね。魔法戦なら私の方が強いかな。」
「え?あれより?」
「本当に!?」
二人はさらに驚いて目を丸くした。
「僕はあれでもまだ半分以下だからね。全力だともっとだよ。それと比べても言葉は強い。五秒あれば大型の魔物も狩れるからね。」
「そ、そうなんだ。いつの間にかそこまで強くなってたんだ。」
「そういうことかな。じゃあ適度な運動したし、悪戯も成功してすっきりしたから、僕たちはこの辺で。また会うことがあったらその時はよろしく。」
そう言って僕は修練場をあとにする。その後を言葉たちもついてきて、
「またね。」
「また会いましょう。」
そう言って二人に別れを告げ、一緒に修練場をあとにした。
「いや〜楽しかったなぁ。」
僕は悪戯を成功させて子供みたいに笑顔を浮かべた。
「そうだね。私も見てて楽しかった。前から佐藤君達のことはあまりよく思ってなかったからああいう顔が見れてちょっとすっきりした。」
「私もあの人の自分以外の人間を下に見ている態度が嫌いでしたから、それを改めさせられて良かったと思います。」
そう言って二人もすっきりとした笑顔を浮かべた。
ちょっと大人気ない気もするけどたまには子供みたいになってもいいよね。まだ高校生なんだし。
そんなことを考えながら、少し前に見つけた宿へと向かった。その道中で、
「離してください!貴方達に構っている暇は無いんです。私はあの人を見つけなきゃいけないんだから!」
少し離れた路地裏からそんな声がした。周囲に気を配っていたからこそ気付くくらいの小さなものだったけれど、間違いなく聞こえたんだ。これは放っておいてはいけない気がする。僕の物語好きとしての勘がそう言っている。
「言葉、ティア、今の聞こえた?」
「なんのこと?」
「何も聞こえませんでしたけど。」
やっぱり聞こえてなかったか。
「路地裏の方から声が聞こえたんだ。イベントフラグの匂いがするんだけど、行っちゃ駄目かな?これを無視してはいけない気がするんだ。」
「イベントフラグ?」
「何か話の展開で重要なことが起きるってことだよ。」
「そうなんですか。それで、ツヅリさんはそれを確認しに行きたいと。」
「うん。駄目かな?」
「………はぁ。もう、仕方ないんだから。私もその気持ちは分かるし行っても良いよ。私たちもあとから行くから。」
「まじか!ありがとう言葉!」
「私たちをおいてく分、後でちゃんと可愛がってね。」
「それは勿論。言われなくてもそうするよ。」
こうして言葉たちから許可を貰った僕は、声のした路地裏の方に駆けていった。
ワクワクした気持ちを隠しきれていない顔で走っていった綴理くんの後ろ姿を見送って、私はティアに声をかける。
「勝手に許可しちゃったけど、ティアも行かせて良かった?」
「あ、はい。いいんじゃないかと。」
「そっか。ならいいんだけど、多分ヒロインが増えるよ。」
「それはどういう……」
私の発言に首を傾げるティア。
「新しく綴理くんの隣にいる女の子が増えるってこと。ティアの時がそうだったから。多分すごく可愛い娘が一緒にくっついて戻ってくると思う。」
そう推測する私にティアは、
「そうなんですか?でもそうなってもおかしくはないですね。現に私もツヅリさんのことを好きになってしまいましたから。」
過去を振り返って懐かしむようにそう言った。
「そうなんだよね。地球にいた頃なんでモテないんだろうって思ったくらいの人だったから。一度こうなったらもう何人増えてもおかしくないんだよね。せめて知ってる娘ならまだ対応が出来るんだけど。」
私は少しドキドキしながらティアと一緒に綴理くんの後を追った。
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