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午後の成果

短めです。

「そろそろ日が暮れるな。約束したし、帰るか。」


 たった今、倒した魔物の素材を採取した僕は、オレンジ色に染まる空を見上げてそう呟いた。


 魔物の討伐は思った以上に楽しくて、始めてからはあっという間に時間が過ぎた。いつもは言葉たちの安全を最優先にしているから、全力で討伐だけに集中することはこれが初めてだ。今までにも一人で戦う場面が無かったわけではないけど、その時は他にもやることがあって楽しむどころじゃなかったからね。


「今日は本当に充実してたなぁ。たまにはこういう日があっても良いかも。……ふぅ。それじゃギルドに向かいますか。結構集めたから、いくらになるか楽しみだな。」



 ギルドの受付にて、


「ジャイアントクロウ五体の討伐、キラーハウンドの牙と毛皮の収集五体分。どちらも確認出来ました。報酬は二万五千エルクとなります。続いて素材の買取に関しましては、デッドリーサイスベアの爪と毛皮が二体分、ユニコーンボアの角と牙が八体分、ブラッドパンサーの毛皮が六体分、合わせて九万エルクとなります。」


 こうして午後の稼ぎは十一万五千エルクになった。この金額は一日の稼ぎとしては賭けを除いて最高額だ。僕としては楽しく運動していただけなのにこれだけ稼げたというのだから、やっぱり冒険者というのは美味しい職業だ。まあそれなりのリスクは背負ってるんだけど。


「この調子で稼いでいけばティアも養っていけるな。というかこれを毎日やったとしたら月収が年収レベルになるな。そろそろあれも買えるかも。」


 あれというのは、見た目よりも沢山入る魔法の鞄のことだ。いわゆるアイテムボックス的なものだな。あれはなかなか高価で一番安いやつでも貯蓄の殆どが吹き飛ぶんだよな。その代わりに容量はしっかり多いから、買う価値は大いにあるんだけど。


「どうしよう。本気で買おうかな。今日も素材が持ちきれないからって断念したからなぁ。もし買ったとしたら今日より沢山狩れるから多分すぐにもとは取れるし…………よし、買うか!」


 思い立ったらすぐ行動という事で、ギルドでお金をおろして店まで向かい、あっという間に手に入れた。冒険者になってから浪費気味な気がする。ちょっと気を付けないとな。


 僕は反省しつつ、でもホクホクしながら宿に向かった。



「ただいま。」

「あ、おかえり。」

「おかえりなさい。」


 帰って来て出迎えてくれる人がいるっていいな。一瞬で疲れが吹き飛んだよ。


「二人の方はどうだった?結構進んだ?」

「ちゃんとティアが無詠唱魔法を使えるようになったよ。」

「はい、コトハさんが丁寧に教えてくれましたから。」

「!……そっか、頑張ったね。二人共おつかれさま。」


 思ったより早かったな。やっぱり魔族は魔力の扱いが上手いのかな。それとも昨日のアップデートでそうなったのか。理由がどちらにせよ大きな前進だ。これからはティアのレベル上げもよりスムーズになりそうだな。


「うん、ありがとう。」

「ありがとうございます。ツヅリさんの方はどうでしたか?」


 よくぞ聞いてくれた。


「僕の方も結構いい感じ。午後だけで十一万稼げたよ。」


 僕は待ってましたとばかりに今日の稼ぎを発表した。


「すごいね!過去最高じゃない?」

「そうだね。まともな稼ぎは今回が最高額だ。」

「一人でそれだけ稼いでしまうなんて。どれだけの魔物を倒したんですか?」

「内訳はね……」


 僕は午後の活動を簡単に纏めて二人に話した。


「結構な数倒したね。」

「でも素材が持ちきれないから途中で断念したんだよね。それが無かったらもっと狩れてたと思う。」

「そっか。もうそんなレベルになったんだね。ちょっと前までは弱めの魔物を何体か狩って一日が終わってたのに。」

「いつの間にか、ね。それでなんだけど、二人に一つ謝罪しなければならないことがありまして。」


 僕は少し表情を引き締めてそう口にする。


「どうかしたの?浮気でもした?」

「いやそれはないんだけど。」

「冗談だよ。ちゃんと分かってる。」


 言葉の一言でちょっと緊張がほぐれた気がする。気を使わせたな。じゃあ気を取り直して、


「実はちょっと無断で買い物をしてしまいまして。しかも結構高額な。」


 改めて謝罪の内容を口にした。それを聞いた言葉は、


「それなら気にしなくていいよ。綴理くんがそうしたってことはそれだけ必要なものだったんでしょ?予想だとずっと欲しがってた鞄を買ったんじゃない?」


 大したことないと笑いながら綺麗にものを当ててしまった。


「流石は言葉。僕のことよく分かってるね。」

「ずっと一緒にいるからね。それに話の流れ的にもね。」

「まあそうだよね。じゃあ御墨付きも得られたことだし、これがその鞄だよ。」


 そうして買ったばかりの鞄を二人に見せた。


「これかぁ。これってどれくらい入るの?」

「そうだな。少なくとも今まで持ってた量の二十倍は入るんじゃないかな。」

「そんなに入るんだ!それなら買うのも納得だね。それで貯金はどれくらいになったの?」

「残り十万くらいかな。」

「結構ぎりぎりだね。」

「うん、だからこれから毎日全力で稼ぎに行くよ。鞄さえあれば倒した後丸ごと持ち帰れて稼ぎも確実に増えるから、予想だと今日と同じ感じで稼げば一週間もあればもとはとれる計算だね。」

「割とあっという間だね。」

「それだけこの鞄の存在が大きいってことだよ。」

「そうだね。じゃあ明日からまた頑張ろっか。」

「うん。それじゃあ早く寝ないとね。取り敢えずお風呂行ってくるよ。」

「行ってらっしゃい。」


 こうして僕は今日一日の汚れを落としにお風呂へと向かった。



 お風呂場へと向かう綴理くんを見送って私はティアに話しかける。


「それにしても予想以上だったね。」

「はい、私たちがいないだけであそこまで稼いで来るなんて。まだまだ足を引っ張ってしまっているようですね。頑張って強くならないと。」

「うん。それでなんだけど、一つ提案があるんだ。」

「提案、ですか?」

「うん。明日から一週間くらい今日と同じように魔法の訓練に専念しない?」

「!……でもいいんですか?その間は私たちは一切稼げませんが。」


 そうなんだよね。でもそこは多分大丈夫。


「綴理くんが毎日全力で稼ぐって言ってたから、多分私たちがいない方がいいと思う。取り敢えず鞄のもとをとるまでくらいは。」

「そうですね。ツヅリさんもそのつもりのようですし、私たちも訓練に専念しても良いかもしれませんね。」

「じゃあ決まり。後で綴理くんにも言っておこう。」

「はい。」


 こうしてこれから一週間の予定が決まった。明日からまた頑張ろう。


 それはそうと、


「ねぇティア、頑張って仕事してきた旦那様の疲れを癒やしてあげようと思うんだけど。」

「!…そうですね、行きましょうか。」


 そうして頷きあった私たちは綴理くんのあとを追ってお風呂場に向かった。



「わっ、二人共来たの?…え?身体洗うって?えっとじゃあ……お願いします。……………あっ、ちょっ、そこはだめ……あっ……………」


 こうしていつもどおりに一日は過ぎていった。

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