とある男女は彼方を見据えて
嘘だ!そんなはずない!彼が追放なんて!
私はひどく狼狽していた。
私が【聖女】だったから、彼ならもっととんでもないステータスをもっていると思っていた。
なのに低ステータスで追放だなんて。
何かの間違いだと思った。でも彼はそのまま連れて行かれ、帰ってくる事は無かった。
それで本当に追放されたんだと理解した。
彼が本当に無能だったのかは分からない。
例えそうだったとしても彼には此処にいて欲しかった。彼は私の心の支えだったから。
でももう彼はいない。
心にぽっかりと穴が空いた様で、平静を保っていられない。
かろうじて周りには悟らせないようにしてるけど、ずっとは保たない。
なんとかして彼の行方を追わないと。
でも、追いつけたとしてどうするの?
彼にとって私は助けた中の一人でしかない。
あくまであの日の出来事は私だけが大切にしている思い出。私がまだ生徒会長になる前のあの日、彼に救って貰った思い出。
彼はきっと覚えていない。
その程度の存在である私が彼に会って何というの?変な人だって思われるかも知れない。気持ち悪がられるかも知れない。そうなってしまったらもうきっと立ち直れない。
でも、でも、それでも彼に会いたい。
このまま何も言えないまま会えなくなるのは嫌だ。今は駄目でもこの先なんとしてでも彼に会って気持ちを伝えるんだ。
その為に今はここで耐え忍ぶしかない。
一人の少女が密かに誓いをたてた瞬間だった。
時を同じくして、少し離れたところでは一人の青年が考え事をしていた。
その青年とは【賢者】である策だった。
彼が追放とはどういう事だろう。
彼ほど能力の高い者もそうはいないだろう。
彼は成績は上位に留まっているがいつもトップではない。それはうちの学校のシステム上、成績上位者が掲示版に張り出されているから知っている。
しかし彼がいつも手を抜いているのもまた事実だ。
たまたま話す機会があった時、全国模試トップの俺が解けなかった問題を解いてみて貰った事があったが、彼はそれをこともなさげに解いて見せた。
あの時は彼の事を何も知らなかったのでとても驚いた。素直に凄いと思った。
その時からだ、彼に興味を持ち始めたのは。
その後彼は運動でもまた同じ様にしている事を知った。
全体的に卒なく熟している感じだが、そのうえでどことなくいつも余裕を感じる。
これだけでも限りなく優秀なのは間違いないが、彼はそれだけではない。
人を観察する事にとても長けているようで、それを使って友人達の精神面の支えになったりもしているらしい。
ここまで出来る彼が果たして何の能力も持たない無能であるだろうか?
それは絶対に有り得ない。
おそらく今は無能の様に見えても後々想像も出来ない存在へと化けるだろう。
次に彼の名前を聞く時追放した奴らはどう思うのか。その時が楽しみだ。
それまで絶対に生き延びてくれよ。
そして俺に君の可能性を見せてくれ。
そして、彼ら含め勇者はというと、能力値の高さ毎にランク分けされそれぞれ別の指導者が付いて別々に訓練される事が決まった。
その中で最も上のグループに所属する【勇者】【聖女】【賢者】達は早速実戦的な訓練によるレベリングが始まろうとしていた。




