綴理と二人と解放と
窓から差し込む柔らかな光が朝を告げた。僕はそっと目を開けて両脇を見る。そこには二人の天使が静かな寝息をたてていた。
「最高の目覚めだ。」
言ってベッドから起き上がり、軽く身体を動かす。疲れは完全にとれたみたいだ。それじゃああとは、言葉たちが起きるまで、朝の支度をして待っていよう。
丁度支度が整った頃、二人がタイミング良く目を覚ました。
「……ぉはよう、綴理くん。」
「ん……おはようございます、ツヅリさん。」
二人はまだ半分寝惚けているみたいだな。まあ、そう簡単にとれる程の疲れではないよね。
「言葉、ティア、二人共おはよう。まだ眠たそうだね。もう少しゆっくりしても良いんだよ?」
「ううん。ずっとベッドの上だったから、少し身体を動かしたいんだ。だから起きるよ。」
「そうですね。私も身体が固まっているのでほぐさないと。」
そういう訳で、十数分後には全員の支度が整った。
さて、言葉とティアが起きたことだし、早速問題を解決してしまおうか。
「言葉、ティア、今回の件で解決しなくちゃならない問題があるんだけど、そのことについて聞いてくれるかな。」
「うん。」
「はい。」
「よしじゃあ始めるよ。これから解決しなくちゃならない問題は、ティアのことだ。」
「やっぱり、奴隷になってること?」
「うん。」
「でもそれはどうにも……」
「なるよ。」
「え?」
「奴隷化の解除は出来るよ。やり方も分かってる。」
「そうなんですか?」
「うん、でも僕が出来るのは首輪の破壊だけだから、言葉にも協力してもらわなくちゃならない。」
「私は何をすればいいの?」
「言葉には奴隷紋の元になっている奴隷魔術を解除してもらいたいんだ。言葉の眼なら多分魔術の構造を読み取れるはずだから。」
「分かった、やってみる。」
こうして、言葉による奴隷紋の解析が始まった。僕自身も鑑定でどういうものかは分かっているけど、やっぱり実際に目に見えるものとして視えると理解度が段違いだ。
暫くして、ずっとティアの身体を凝視していた言葉がふっと力を抜いて目を瞑った。
「どうかな、言葉。」
「複雑だけど出来そうだよ。早速やってみるね。」
そう言って言葉はまたティアへと向き直った。
良かった。これであとは僕が首輪を壊すだけで良い。
あの首輪は無理に外そうとすると爆発して奴隷の首を飛ばす仕組みになっているんだけど、そうならない為には正しい手順で外す方法か、その仕組みを先に壊してしまう方法をとることになる。今回僕がしようとしてるのはそのうちの後者だ。
正しい手順で外す方法は元々の契約者がいないと出来ないんだよね。まあそう簡単に他人に外されるようじゃ役目を果たせないんだけど。
そんな訳で、僕は『鑑定』で知り得た情報を元に『武器破壊』を応用して首輪の破壊をすることにした。言葉に先に奴隷魔術の解除を頼んだのは、首輪の破壊をする際にもしものことがあってはいけないのと、首輪の仕組みの殆どが奴隷魔術に連動したものだからなんだよね。
「っ……はぁ〜。終わったよ。これで多分大丈夫。あとは綴理くんにお願いするね。」
どうやら無事奴隷魔術の解除が出来たみたいだ。ティアの身体から奴隷紋が消えている。あとは僕が仕上げをするだけだ。
「お疲れ様、言葉。ゆっくり休んでて。じゃあ……」
今度は僕が集中状態に入る。……うん、シミュレーションは完璧だ。実行に移そう。
「ティア、いくよ。」
「はい、お願いします。」
ティアは目を瞑ってその首を僕に向けた。完全に信頼してくれているのか、震えや怯えは一切みられない。
そこまでしてくれるなら、ますます失敗出来ないな。
そうして僕は手元に短剣を持ってティアの首元へと構える。短剣に『魔法剣』で『雷撃』を纏わせ、風属性魔法の応用による微振動を加えて『武器破壊』を使用する。
一閃。
パキィン!
首輪内の機構と首輪本体が同時に破壊された。首輪はただの金属塊となってティアの首からずり落ちていく。
「おめでとう、ティア。これでもう君は自由だ。」
僕はティアにそう声をかけた。
「ありがとうございます。これで心置きなくお二人と一緒にいれますね。」
ティアはとても嬉しそうに微笑んだ。それを見た言葉は、
「おめでとう。これからは普通の女の子として生きていけるから、ツヅリくんの奥さんにもなれるね。」
ティアの手をとってそう言った。
「!…そうですね。今までは奴隷の身分だったので無理でしたけど、私を縛るものはもう何も無い。心置きなくツヅリさんと愛し合えるんですね!」
ティアはまたさらに幸せそうに笑った。
そこまで幸せそうにしてくれると、僕も嬉しいな。もっと幸せにしたくなる。その為にももっと頑張ろう。
「よし、じゃあこれで今回の問題は完全に解決だね。あとは今回の依頼でどれくらい成長出来たかだけど。」
「ステータス、見てみよっか。」
「そうだね。どうなってるかな。」
そうして言葉と二人でステータスを開いてみた。
名前 ツヅリ・ツムギシ
Lv 29
職業 【 】
体力 2610
魔力 1450
物攻 870
魔攻 580
物防 1160
魔防 580
スキル 『鑑定』『読心術』『瞬間模倣』
『中級剣術』『中級槍術』『中級杖術』
『中級弓術』『中級短剣術』『真偽眼』
『中級斧術』『索敵』『幻影』『瞬歩』
『武器破壊』『剛力』『騎乗』『斬撃』
『隠蔽』『魔法剣』『超回復』『調合』
『魔力回復(強)』『五感強化』
『第六感』『一心同体(愛)』『千里眼』
魔法 火属性魔法Lv3 水属性魔法Lv3
土属性魔法Lv3 風属性魔法Lv3
無属性魔法Lv5 複合魔法『雷撃』
称号 《転移者》《探求者》《蒐集家》
《観測者》《愛する者》
《jm%d23@あgf》
お!少しレベルアップしたのと、スキルと称号が増えてる。『千里眼』と《観測者》か。効果はどんな感じなんだろう。
『鑑定』
『千里眼』
『鑑定』と『索敵』の併用により発現した。肉眼で見ることの出来ない場所を見ることが出来る。現時点では既に訪れた範囲を中心として半径1km以内が対象となる。
《観測者》
『千里眼』取得により獲得した。この称号の獲得を認識した時、権能の解放が実行される。
え?権能ってなんだ?やっぱり僕の知らない何かがあ……
「所有者により、称号が認識されました。権能の一部解放を実行します。同時に、ステータスのアップデートを実行します。」
「っ!?」
なんだ!?今までこんなこと無かったはず。
「実行に際し、対象者の意識は一時凍結されます。実行まで、残り10秒。」
待って、まだ理解が追いついてない。これはなんだ?
「実行まで、残り5秒。4、3……」
あれ?この声、聞いたことがある。何処だ、何処なんだ。思い出せ!こういう時の頭だろ!
「2、1……」
……あ。この声、召喚された時に聞いた声だ。でも、なんで……
「0。実行します。」
くそっ!もう、意識が………
事態の把握を望む気持ちとは裏腹に、僕の意識は強制的に闇に飲まれていった。
バタッ。
「?………綴理くん?」
綴理くんがステータスを開いてから少しして、急に倒れた。
「綴理くん!」
「ツヅリさん!」
突然のことで一瞬放心していた私とティアだったけど、慌てて綴理くんに駆け寄った。
「綴理くん、大丈夫?」
声をかけたけど、全く反応が無い。一応息はしているから生きてはいるみたいだけど、それ以外何が起こっているのか皆目見当もつかない。
どうしよう。こういう時真っ先に動いてくれるのが綴理くんだったから、私じゃ何をすればいいのか分からない。
そう思ったから、解決策を求めてティアの方を向いたんだけど、
「ツヅリさん!ツヅリさん起きてください!せっかく自由になれたのに、私をこのままおいていかないで!」
ティアは完全にパニック状態で、目の端に涙をためながらずっと綴理くんの肩を揺らしている。
私がどうにかするしかない。
そう思って動こうとした瞬間、
「称号《愛する者》の所有者の権能解放の実行に際し、称号《愛される者》の所有者の連動アップデートを開始します。尚、対象者の意識は一時凍結されます。開始まで、残り10秒。9、8、7……」
唐突に、脳に直接響くような声が聞こえた。
「何、これ。」
ティアの方を見てみると、さっきまでパニックに陥っていたはずが、私と同じ様に怪訝な顔をしている。どうやら私と同じ声が聞こえているみたいだ。
そうやってあれこれ考えているうちにも時間は刻一刻と迫ってくる。
「4、3、2、1……」
だめだ。もうどうすることも出来そうにない。
「0。開始します。」
「綴理、くん……」
私とティアは揃って気を失った。
面白い、続きを読みたいと思った方は星やブックマークで応援していただけると嬉しいです。またよろしければ感想、改善点など思ったことを気軽に感想欄に書いてください。執筆の励みになります。




