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言葉とティア

ただイチャつくだけ。

 夜中に目が覚めた。身体全体がぎしぎしと悲鳴をあげ、特に足腰には少しも力が入らない。


 流石に丸一日依頼に出た後の二人同時はきつかったか。もっと鍛えないと。


 っとそれはともかく、改めて現状の整理だ。取り敢えず起き上がろう。


「ふっ、ぐうぅぅぅぅっ!………っはぁ、はぁ。きっついな。」


 下半身が動かないから上半身の力のみで起き上がったけど、その頼みの上半身も結構疲労が溜まっているから全く当てにならない訳で、ただ起き上がるだけなのに凄く疲れた。


 ……まあいい、本題だ。


 まず今回の一件では、セレスさんとルークさん、レヴィアさんとの繋がりができ、ティアが僕たちと共に来ることになった。


 セレスさんとルークさんは同じ冒険者で、今後顔を合わせることも多くなり、頼れる先輩が出来た。レヴィアさんはいつか帝国に行った時に顔を見せることになり、初めての土地に頼る先が出来た。これは今回の一件の中では確実に良かった事だ。


 ティアと出逢えたことで、言葉の他に愛し合える人が出来たし、魔皇国との繋がりも出来た。このことは考えるまでもなくプラスの出来事なんだけど、一つだけ許容出来ない問題が出来てしまったのもまた事実だ。


 それは、



名前 ティア・アイズ・メルトハート

Lv 6

職業 【姫巫女プリンセスハートリンク

体力 320

魔力 400

物攻 240

魔攻 320

物防 240

魔防 320

スキル 『啓示』『魔素変換』『魔力回復(強)』

    『騎乗』『統率』

魔法 火属性魔法Lv2 水属性魔法Lv2

   土属性魔法Lv1 風属性魔法Lv2

   無属性魔法Lv1 

称号 《魔皇女》《愛される者》


状態 奴隷化



 ティアのステータスに表示されている通り、奴隷であることだ。これは一緒に行動する上で絶対に解決する必要がある。この状態だとティアに自由が無いからね。


 『鑑定』によると奴隷化を解除するのに必要なのは、奴隷紋の除去と首輪の破壊らしい。そのうち首輪の破壊は僕が出来ることが分かっている。でも奴隷紋の除去は奴隷魔術によるものなので、今の僕だと難しい。この作業は言葉が目を覚ましたら頼んでみよう。言葉のスキルなら多分構造が分かるから術式の破壊も出来るはずだ。


 言葉たち、いつ起きるかな。それまで何してよう。問題が解決するまでは依頼をする気にもならないからなぁ。今出来ることっていうと……


 あった。すぐ隣にあったじゃないか。せっかく可愛い二人が隣に寝てるんだし、寝顔を眺めさせてもらおう。


「言葉の寝顔は安心するなぁ。」


 そう言って言葉のさらさらの髪を梳く。


 言葉は本当に僕の好みを体現した様な女の子なんだよな。


 ショートボブの黒髪に、知性的でありながら柔らかさを感じさせる、吸い込まれる様な漆黒の瞳。美味しかった、じゃない柔らかくて適度にはりのある、ずっと触れていたくなるような薄桃色の唇。それと少し触れるだけで反応する敏感な耳。そして何よりいついかなる時でも僕を安心させてくれる優しく透き通る様な声と、そこに宿る包み込む様な温かさと頑として譲らない強い芯を持ち合わせた精神性。言葉の全てが僕を癒やしてくれる。


 多分どんな絶世の美女だって、聖女だって、言葉には敵わない。僕にとっての一番は、やっぱり言葉なんだ。


「はぁ、満足した。これ以上は起こしちゃいそうだから、続きは起きてからさせてもらおう。じゃあ次はティアだな。」


 言葉とは反対側に寝そべるティアの方を向く。


 言葉が可愛いだとすると、ティアは美しいを体現した様な女の子だ。


 淡い紫色の髪に濃い紫色の瞳、すっとした鼻筋。妖しい魅力を放つ血色の良い唇。そこから発せられる、凛として落ち着きがありながらも甘える時は背筋をゾクッとさせる様な妖艶さを醸し出す声。そして服越しでも分かるスタイルの良い身体。特にその大きな胸は、数多の男の目を惹き付けるだろう。


 正直こんな綺麗な子が僕を好きになってくれたのが、今でも信じられない。でも実際僕を好きでいてくれるんだから、その分僕もこの娘を大切にしよう。せっかく救い出せたんだから、これから沢山幸せにしてあげないと。


「ティア、今までよく頑張ったね。これからの君の人生は、僕の持てる全てを使って輝かせてみせるから。」


 そうしてティアの頬に手を当て、親指でそっとその唇に触れる。本当に綺麗だ。


 そんな風にティアを眺めていたら、後ろから身体を引っ張られた。突然のことでバランスを保てなかった僕は、為す術もなく引き寄せられてそちらに倒れ込んだ。


 そのまま顔をがっしりと固定され、柔らかいもので口を塞がれた。


「んっ!?んんっ、ん〜!……ぷはっ、言葉?」


「ティアばっかりじゃなくて私も見て!」


 言葉が頬を膨らませてそう言った。それを見て、僕は思わずくすっと笑ってしまった。


「綴理くん?」

「いや、ごめん。言葉がそういうことするの初めてだったから。ティアのことも僕より先に受け入れてたし、そこまでヤキモチを妬くと思わなかったんだよ。それで、本当に愛されてるなぁって感じて嬉しくてつい。」

「そっか、それならいいんだけど。それより、ティアの方を可愛がるのは構わないけど、私のこともほったらかしにしたらダメなんだから。」

「心配しなくても、僕が言葉から離れるなんてことは絶対にないよ。ティアを眺める前はずっと言葉を眺めてたんだよ?」

「そうなの?」

「うん、そうだよ。僕は一度愛すると決めたらとことん愛する。今までの生活でそのことはしっかり示してきたつもりだよ。それと言葉にはちゃんと自覚してもらわないと困る、な!」

「わっ。……綴理くん?」


 言いながら僕は身体を反転させて言葉を押し倒し、唇同士が触れ合いそうな距離まで顔を近付けた。そして言葉の瞳を見つめて宣言する。


「僕にとっての一番は、誰がなんと言おうと言葉だって。」

「綴理くん……」

「分かった?」

「……はい。」


 言葉が恍惚とした表情で頷いた。


「よくできました。それじゃあ…」


 それを見て満足した僕は、そのまま言葉に口づけをした。



 少ししてそっと言葉から離れ、隣に寝そべった。言葉と二人で顔を見合わせて、お互い照れくさそうに笑い合う。それからふぅっと息を吐きつつ天井を向き、呟いた。


「幸せだなぁ。」


 それに対し言葉も返す。


「私も。」


 そうして僕たちはどちらからともなく手を繋いだ。絡め合った指から、お互いの気持ちが熱となって伝わってくるようだった。


 どれくらいそうしていただろう、ふと横からの視線を感じた。そちらを向いてみると、いつの間にか目を覚ましたティアが、僕たちの方、正確には繋いだ手を見つめていた。僕の視線に気付いたティアは、さっと目を逸らした。かと思えばチラチラと僕の方を見る。


 どうやら僕から言ってあげないといけなさそうだな。


「ティア、遠慮なんてしなくていいんだよ。もっと素直にしたいことはしたいって言って。ほら、おいで。」


 言いながらティアへと手を差し出す。一瞬迷いを見せたティアだったけど、恐る恐る僕の手を掴んだ。


 その瞬間、僕はその手をぐっと引っ張った。その勢いのまま、ティアは僕のすぐ隣まで引き寄せられる。ティアの肩に手を回して抱き寄せ、そのままの流れで頭を撫でながら言う。


「ティア、僕は君のことも言葉と同じく全力で愛する。だから何も気にしなくて良い。君の全てを僕にぶつけて。どんな君だって受け止めてみせるから。」


 ティアはきゅっと僕の服の胸元を掴んで、


「好きになったのが貴方で良かった。」


 そう小さく呟いた。


「そっか。この先も変わらずそう思ってもらえるよう頑張らなくちゃね。」


 自分自身に言い聞かせる意味も込めて、ティアにそう返した。


 それから再び眠りにつくまでの間、言葉とティアに挟まれて、二人から伝わる温かさに身を委ねていた。

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