依頼達成と、やっとの休息
結局半日程かかって洞窟の外に出た。時間としては恐らく朝の九時頃だろうか。ずっと暗い中を進んで来たから、降り注ぐ太陽の光が眩しかった。
「やっと脱出出来ましたね。皆さんお疲れ様でした。」
全員に向き直り、労いの言葉をかけると、
「お疲れ様。本当に最初から最後までお世話になったわね。安全確認に道案内まで完璧に熟してくれる貴方が居なかったらこんなにスムーズに帰ってこれなかった。」
「そうですね。休憩が欲しいタイミングに先んじて休憩を提案してくれたり、回復に役立つアイテムをくださったりと細かい所に気を回していただいたお陰で体力に自信のない私でも楽について行くことが出来ました。本当にありがとうございます。」
そう礼を返してくれた。頑張った甲斐あったな。
「お役に立てたなら何よりです。」
「ほんと凄いわよね。コトハちゃん、よくこんな男の子捕まえれたわよねぇ。ここまでの子はそうそういないわよ。」
セレスさんが感心した様にそう言った。
「偶々学校で一緒のクラスになれて、趣味が一緒だったことで仲良くなれたんです。完全に運が良かったんですよ。」
「そうなの?でも、本当にそれだけじゃないわよね?」
そう聞かれたので、僕は心の内を語った。
「そうですね。確かに出逢ったのは偶々でしたけど、言葉には僕が好きになるだけの魅力がありましたから。言葉はあまり表に出て活躍するタイプではないですが、僕が他の何よりも大切にしているものを持ち合わせていたし、何よりも欲しかったものをくれた人なんです。僕にとってはそれだけで言葉を選ぶ理由になった。」
「そ、そうかな?そうはっきり言ってくれると自信が持てそうだよ。」
そう言う言葉は嬉しそうな顔をしていた。つられて嬉しくなった僕は、
「うん、自信持って。誰が何と言おうと僕にとっては言葉が一番だから。」
そう宣言をした。
「ふふっ、本当に人前でも堂々とそういう事言うのね。普通なら少しか恥ずかしがるものだけど。」
確かに普通はそうだろう。でも、
「僕にとっては他の人にどう見られるかよりも言葉がどう思うかの方が大事ですから。言葉が嫌そうなら止めますけど、言葉がこれで良いって言うなら止める気は無いですね。言いたいことは言えるうちに言わないと後で後悔しても遅いですから。」
僕はそう答える。
「なんか羨ましいです。私もここまで真剣に自分のことを考えてくれる相手に出逢いたいって思いました。」
それを横で聞いていたレヴィアさんが瞳をキラキラさせていた。
「レヴィアさんが相手に対してそれだけの態度をとっていればきっとそういう人に出逢えると思いますよ。」
「そうですかね。それなら私も自分を磨かないといけませんね。」
そんな事を話しながら僕たちは依頼を出した村長の家に向かった。
少しして村長の家が見えて来た頃、帰りを待っていてくれたのか村長が家の外まで来て出迎えてくれた。
「よくぞお戻りになられました。無事に全員帰ってくる事が出来たようで何よりです。」
「ありがとうございます。ゴブリンに捕まっていたいた人も救出しましたし、洞窟にいたゴブリンも全て討伐出来ました。これでもう安心して生活出来ると思います。」
「そうですか。良かった。では早速依頼達成のサインをしましょう。家にお入りください。」
「分かりました。」
家の中に入ると村長の娘さんらしき人がお茶を出してくれた。それを飲みながら一息ついている間に、村長が依頼の紙を取り出しサインをした。サインの書かれた紙を受け取り、持っていたポーチに入れる。これで完全に依頼達成だ。それじゃあここに来てすぐで申し訳ないんだけど疲労と眠気が限界だから帰らせてもらうかな。
「長時間の移動でしたから、早く帰ってゆっくりしようと思います。また何か困ったことがあれば頼ってください。きっと力になれると思います。」
「そうですね。その時はまた宜しくお願いします。」
別れの挨拶も済んだことだし、早速ギルドに向かいますか。
そうして皆で揃ってギルドに向かった。
街が近付いてきた頃、レヴィアさんが外套を羽織った。バレると困るもんな。
暫く歩いてギルドに到着した。扉を開けて受付に向かい、依頼達成確認のサインが書かれた紙を提出した。
「ゴブリンの巣の駆除ですね。依頼の達成を確認しました。報酬はこちらになります。」
そうして受付のお姉さんから報酬の入った袋が手渡された。
「ありがとうございます。」
こうして僕達はギルドの外に出た。同時に無事の報告をしに行っていたセレスさんとルークさんもギルドから出てきた。改めて皆で集まり言葉を交わす。
「皆さんお疲れ様でした。ここまでしっかり休める時間も無かったですし、お互い帰ってゆっくり休みましょう。」
「そうね。今回は本当にお世話になったわ。また縁があったらその時は宜しく。」
「俺からも礼を言わせてくれ。セレスを助けてくれて本当にありがとう。ポーションまで貰ってしまって感謝してもしきれない。俺に出来る事があるなら是非頼ってくれ。最大限力になろう。」
「ありがとうございます。無事に助け出せて僕も嬉しいです。やっぱり死人が出るのは嫌ですから、笑顔で終われるのが一番ですね。」
「私も本当にお世話になりました。帝国を訪れた際は是非リシウス家にお立ち寄り下さい。最大限おもてなしさせていただきます。」
「はい、いずれ帝国にも行こうと思っているのでその時は宜しくお願いします。」
「また会えるのを楽しみにしていますね。それでは私はそろそろ行きます。まだ行きたい所がありますから。」
「私達ももう行くわ。今回は精神的に結構きてるから暫く二人でゆっくりするつもりよ。」
「そうですか。では僕たちも宿に戻ります。それじゃあまた。」
「はい。」
「ええ。」
「ああ。」
全員に別れを告げ、帰路についた。
「やっと終わったね。綴理くん、大丈夫?結構顔色悪いよ。今の今まで殆ど寝てないし。というか行きに仮眠とってからずっと起きてるよね。早く帰ってしっかり寝ないと。」
「ははっ、言葉には分かっちゃうか。そうだね、今はかなりぎりぎりの状態だよ。正直宿に着いたらそのまま動かなくなりそう。流石に気持ち悪いからお風呂には入ろうと思うけど。」
「背中流してあげる。というか帰ってからのことは全部私に任せて。約束通り膝枕だってしてあげるから。」
こんな時でも言葉は優しいな。
「ありがとう。でも言葉だって疲れてるでしょ?取り敢えず帰ったら一緒にお風呂入って一緒に寝て、それからやりたいことしよう。その方が僕も遠慮なく甘えられるから。」
「分かった、そうする。」
「じゃあ方針は決まったね。あとはこの娘だけど……」
そう言って僕は背中に目線を向ける。
「うん、どうしよっか。今のところまだ話せないみたいだし、保護者も誰か分からないから誰にも任せられないよね。」
そうなんだよなぁ。今出来ることと言ったらこれくらいか。
「取り敢えず部屋まで連れて行って暫く様子を見よう。ある程度回復するまでは一緒に生活して面倒を見ようと思うんだけど、いいかな?」
「大丈夫だよ。綴理くんがこういう娘を放っておけない人だって分かってる。初めからそのつもりだよ。私もこのままこの娘を一人には出来ないし。」
「ありがとう。そう言ってくれると気分が軽くなるよ。」
こうしてまた二人でゆっくりと宿まで歩いていった。
宿に着いて自分の部屋まで戻ってきた。背負っていた少女をベッドの上に横たえる。どうやら相当な疲れが溜まっていたらしく、今はぐっすり眠っているようだ。そういうことなら目が覚めるまでそっとしておこう。
さてと、そろそろ僕も動けなくなりそうだから早いうちにお風呂に入ってしまおう。
「この娘も寝てるみたいだし、もうお風呂入っちゃおうか。」
「そうだね。汗とか汚れとか凄い事になってるから早くすっきりしよう。」
そうして手早く服を脱いで風呂場に向かった。
「あったかい。やっぱりお風呂は落ち着くなぁ。」
シャワーを浴びた瞬間、自然と声が溢れた。丸一日あんな場所にいればこうもなるよね。
「ふふっ、そうだね。こうやって身体が綺麗になっていくと今回の依頼で疲れ切った心も綺麗になっていく気がする。」
横で一緒にシャワーを浴びている言葉もとても気持ち良さそうにそう言った。
「心身共にかなり疲れたからなぁ。これで湯船に使って芯からあったまったらそのまま寝れそう。」
「寝るのはベッドまで我慢だよ。溺れたら大変だから。」
「本当に溺れそうなんだよな。頑張って起きとかないと。なんか目が覚めるもの、無いかな……」
瞑っていた目を開けて周りを見回す。
「目が覚めるものかぁ。何かあるかなぁ?」
言葉も目を開けて周りを見回しながら考える。
少しして、僕の視線が言葉の視線とぶつかった。
「あ。」
「え?」
僕は徐ろに言葉に近づき、その肩に手を置いた。言葉がびくっと震える。そしてそっと上目遣いに僕を見て、
「あの、えっと……綴理、くん?なんか、目が怖いよ?」
少し緊張した面持ちでそう言った。
「ごめん。どうやら今回の依頼で自分が思ってたよりもぎりぎりだったみたいだ。」
「えっと……つまり?」
「今ものすごく興奮してる。」
それを聞いた言葉の視線がそ〜っと下に下がっていき、ある程度の所で視線が停止した。
「わっ。これは、確かに凄いことになってる。」
一瞬驚いた顔をした言葉だったが、気を取り直してまた僕に目線を合わせた。
「言葉。」
「野生の本能が働いたんじゃしょうがないよね。いいよ、きて。今回ずっと頑張ってくれたご褒美だよ。なんて、実は私も同じこと考えてたんだよね。私ももう我慢出来ないから、しちゃお?」
「言葉っ!」
最後の一言で完全に理性の吹き飛んだ僕は、もはやただの獣となった。
お風呂からあがった僕たちは、身体の水分を拭き取り寝間着に着替えてベッドに横たわった。
「ふう、もう動けないよ。」
「私も。もう足腰がガクガクしてて立てない。」
「それについてはごめん。こんな体力どこに残ってたんだろうってくらい本当に止まらなかった。」
「良いんだよ。分かっててしたことだし。それに今は身体中があったかくて幸せなんだ。」
「それなら良かった。僕も、幸せだよ。いつもありがとう。言葉が隣にいてくれて本当に良かった。」
「うん。私も綴理くんの隣にいれて良かった。よしじゃあこのまま寝ちゃおっか。そろそろ眠気も限界だから。」
「そうだね。じゃあ。おやすみ、言葉。」
「おやすみ、綴理くん。んっ。」
自然な流れで触れる様にキスをして、ゆっくりと穏やかに深い眠りへと落ちていった。しっかりと手を繋いで指を絡ませ合ったまま。




