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そういえば

ここから二章です。

 次の街に向かう道中ふと気付いたことがあった。そういやこの国の名前知らん。


 よくよく考えてみると召喚されてまもなく追放されて説明一切聞かされなかったし、必要も無かったから知ろうともしなかった。


 もう一月は生活してるのにあの街の名前も知らないな。


「ねぇ言葉、この国ってなんて名前か知ってる?」

「えっと……そういえば知らない。他の事でいっぱいいっぱいだったから気にしてる暇も無かったよね。」

「そうなんだよね。まぁ大したことでもないけど一応次の街に着いたら聞いてみよう。」

「そうだね。今いる場所くらいは把握しておいたほうがいいよ。」

「じゃあもし着いた時忘れてたら言って。多分大丈夫だとは思うけど。」

「うん。」


 よし、これで問題無いな。後は辿り着くだけだ。



 それから二時間が経った頃、目的の街が見えてきた。


 そこまで遠くない街だったのでトレーニングの意味も込めて徒歩で来たんだけど、途中の道が思ったより整備されていなかったせいか結構疲れた。


 まぁこのくらいがトレーニングにはちょうどいいか。でも言葉には悪かったかな。


「言葉、足とか痛くない?」

「ちょっと痛いかな。出発の時は大丈夫な気がしてたんだけど、思ってたより道が、ね。」


 やっぱりか。


「だよね、ごめん。馬車くらい借りておけば良かった。」

「いいんだよ。徒歩で向かうのは二人で決めた事だから。次からそうしよう。ね?」

「そうだね、ありがとう。取り敢えず着いたら休める所探そう。」

「うん。」


 そうこうしているうちに目的地に到着した。街の入口には衛兵が立っている。ちょうどいい、この人に聞いてみようか。


「すみません、ここってなんていう街ですか?」

「旅人か?見た感じ若いのになぁ。まあいいか。この街の名前はバイタシアだ。商業が盛んな街でな、兄ちゃんたちが来た方の冒険者の街エルカシアじゃ見られない様な物が売ってたりするぞ。まあ詳しい事は見てみれば分かる話だ。存分に楽しんでってくれ。」

「そうなんですか、ありがとうございます。」

「おうよ。それじゃあな。」


 中に入って少しして、言葉が口を開いた。


「国の名前は聞かなくて良かったの?」


 本来の目的はそっちだったもんね。でも、


「国の名前は今知らなくてもあんまり困らないんだよね。後で地図でも買えばすぐにわかる筈だし。それとここが重要なんだけど、国の名前を知らないって凄く不自然なんだよね。細かい街の名前は知らなくても普通なんだけど、この年で自分がいる国すら分かっていない人はまずいない。だから国の名前を聞かないって選択は、僕たちがこの世界の人間じゃないって事実を隠すのに必要だったんだ。」

「そっか、確かにそうだよね。高校生の友達が日本を知らないって言ったら変だもんね。納得した。」

「良かった。国の名前に関しては今度僕が地図を買ってくるよ。それで次の目的地も決めていこう。」

「うん。」


 という訳で、この街の名前と最初の街の名前が判明したので、休憩出来る場所を探すとするか。


「言葉、宿を取ろうと思うだけど何か希望はある?」

「う〜ん、やっぱりお風呂は欲しいよね。あ、後はベッドが柔らかい方がいいかな。ふかふかな方が疲れもとれやすいし。」

「そこら辺は僕も同じだな。あとは防音設備が整ってたらもっと良いかな。その方が何かと都合が良い。」


 そう言うと、言葉がジト目を向けてきた。どういうことだ?


「綴理くん、まだ昼間だよ?」


 あぁ、そういうことか。


「ん?……ああ。そういうつもりで言った訳じゃなかったんだけど、そうとられてもしょうがないか。日頃の行いかな。」

「え、そうじゃないの?てっきりそのつもりなのかと思ったんだけど。」

「言葉はその方が良かった?」

「ヘ?いや、そんなことは……なくもないけど。もう!変な事言わせないでよ。」


 言葉がぷくぅっと頬を膨らませた。つつきたい。


「ごめん、からかい過ぎたね。」

「ほんとだよ〜。それで、どういう意味だったの?」

「いや、単純に話してる内容とか個人情報が漏れないなって。………まあ夜の事を全く考えなかった訳でもないんだけど。」

「そ、そっか。これじゃ私の方がエッチな娘だ。」


 言葉が赤くなった顔を手で覆う。可愛いな。


「そんな言葉も僕は好きだけど。」

「う〜、じゃあいいの、かな?」

「いいってことで、ね?」

「いまいち納得出来ないけど綴理くんがそう言うなら気にしないでおく。」

「よし。じゃああの宿にしようか。ちょうど『鑑定』し終わったし。」

「え、いつの間に?」


 言葉が目を丸くした。表情がころころ変わるなぁ。やっぱり可愛い。


「話してる間にだけど?」

「私と話しながらでよく出来るね。それって結構頭使うんでしょ?」

「まぁそうなんだけどね。普段から七個くらいは並行して作業する事が多いから、二つならそんなに大変じゃないんだ。」

「前々から思ってたけど、綴理くんって凄い事してるよね。皆知らないけど。」

「まぁ見せないようにしてるからね。便利な人は使われるから。」

「そうだったんだ。でも私の前だとそんなことないよね。どうして?」

「言葉になら使われても構わないからかな。寧ろどんどん頼って欲しいし。あとは……そうだね。ちょっとした見栄みたいなものだよ。彼氏としてのね。」

「でも付き合う前からそうだったよね?」

「簡単なことだよ。付き合うかなり前から好きだっただけ。」

「かなりってどれくらい?」

「まあその……初めて話した時、かな。」

「そんな前なの?それじゃ一目惚れってこと?」

「う〜ん、間違いではないけど、正確にいえば一話惚れだね。」

「どういうこと?」


 言葉がとても不思議そうに首を傾げる。まぁ分かんないよね。


「確かに見た目はどストライクだったんだけど、やっぱりどんな人か分かるまでは安心できなくて。だから一回話してやっと本気で好きになったって感じなんだ。」

「綴理くんは人一倍そういうことに敏感だもんね。普段の感じからなんとなくそういう感じはしてた。」

「人の嫌な所は沢山見てきたからどうしてもね。」

「それでいいんだよ。私もそんな綴理くんを好きになったんだから。」

「そうだね。このスタンスは変えられないし変えるつもりもない。言葉もいいって言ったしね。」

「うん。」

「じゃあちょうど着いたし入ろっか。」


 そうして僕たちは第二の街バイタシアでの拠点となる宿へと足を踏み入れた。

作者が講義で忙しくなる為、更新速度がゆっくりになると思われますが、少しずつでも更新していこうと思いますのでこれからも宜しくお願いします。

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