別れ、そして新天地へ
レベルも上がって比較的身を守れる様になり、安定して稼げる様にもなったので、そろそろ別の街にも足を運んでみようと思う。これは前から言葉と話し合って決めていた事で、二人のレベルが共に二十に達した事を契機に実行に移すことにした。
そして今、この世界に来てからずっとお世話になった妖精の宿り木亭に暫しの別れを告げようとしている。
「初めての泊まりに来た日が懐かしいわね。あの時はまだ二人はただの友達だったのよね。それが今じゃ立派にイチャイチャする様になって。毎日見ていて元気を貰っていたから、本当寂しくなるわね。まあでも今生の別れでもないし、来たくなったらまたいらっしゃい。いつでも大歓迎よ。」
遠くを見つめて今までを振り返る様にして女将さんがそう言ったから、
「ははっ、そうですね。そこも含めて色々とお世話になりました。今僕たちがこうして幸せに過ごせているのも女将さん達のお陰です。この街に戻ってきた時はまたお世話になります。」
「私も、お世話になりました。全く知らない街で不安だらけだったから、帰ってくる場所があるだけで本当に安心出来ました。それに、綴理くんとのことも後押ししていただいたみたいで、本当にありがとうございました。」
そう返して二人で精一杯感謝を込めて頭を下げた。
「いいのよ。私も好きでやったことだし。やっぱり若者は青春してる時が一番なんだから。」
「そうですよ。私も楽しかったです。」
「リーンちゃんもありがとう。また来た時はよろしくね。」
「はい。彼女さん、大切にするんですよ。それで、次来た時も変わらないイチャイチャを見せてくださいね!」
「うん、任せて。」
最後までこの母娘はこの母娘だったな。
まあでも、ここに泊まって本当に良かった。いつも温かく見守ってくれて家族みたいに感じられて、ここに居る間は気を張らずに過ごすことが出来たのは何よりも大きかった。また必ず戻ってこよう。そう思った。
宿を離れた後、新しい街に行くに際しての消耗品の補充の為に武器屋に寄った。
諸々の準備を整えて店をあとにする前に、店主のグラートさんに別れの挨拶をした。
「そうか、行くんだな。まあ冒険者ってのは一箇所に留まらないものだからな。それだけ冒険者らしくなったってもんだ。次の街でも頑張れよ。」
「はい、相棒の短剣と一緒に頑張ろうと思います。お世話になりました。」
「おうよ。そいつでちゃんと彼女を守ってやれ。」
「はい、それは勿論。」
「よし。じゃあ行ってこい!」
「はい!」
思いっきり背中を押された感じでやる気が出てきた。次会うときは今より男らしくなった姿を見せられるといいな。
さて、それじゃあ後は次の街に向かうだけだ。
「行こうか、言葉。」
そういって僕は自然に言葉の手を握った。
「うん、行こっか。」
そうして言葉もそっと握り返してくれた。
ああ、幸せだな。言葉がいれば、次の街でもきっとやっていける。やってみせる。そんな思いを胸に、馴れ親しんだこの街をあとにした。
一章が終わり二章に続きます。二章以降は綴理のステータスが変化していき、空白部分の理由も少しずつですが分かってくるかと思います。作者自身、一章の内容よりも書きたかった部分なので、自分が楽しみつつ、読者にも楽しんでもらえるものを書けたらと思います。二章以降も綴理と言葉たちカップルや聖奈と策など勇者組、そして新たに登場するキャラクターたちを温かい目で見守っていただけると幸いです。一章完結までありがとうございました。




