召喚と不遇職、そして追放
「ん……、ん?どこだここ……っ!」
どうやら僕はクラスメイト達と共に見知らぬところで見知らぬ人達に囲まれているらしい。
これはもしかしなくてもあれではないか?
勇者召か…いやまだそうと決めつけるには情報が足りない。
単に普通に誘拐されただけかもしれないし。
とにかくまずは状況の把握だ。
今いる場所は石造りの大きな広間で、周囲を囲む人達は皆ローブの様な物を着ていて、その外側には鎧に身を包んだ騎士の様な人達がいる。
そしてよくよく見回してみると、僕と同じ様に連れて来られたのはクラスメイトだけではないようで、他学年の生徒達もいるみたいだ。
全校集会とかで見た記憶のある先輩方がいるから間違いない。
ここまでの人数を誰にもバレずに移動させるのは普通に考えれば不可能だ。
これは勇者召喚だと考えて問題無いだろう。
さて、改めて状況を理解してみると少しわくわくしてきた。
いや、もちろんこの先の展開が決まってない以上不安はあるが。
でも勇者召喚だよ?異世界だよ?
物語が大好きな身としては、自分がそれを体験できるなんてこれ以上ない楽しみじゃないか!テンションが上がってしまうのは不可抗力だと思う!異論は認めんぞ!
………すみません、調子に乗りました。少し頭を冷やします。
少しして、気絶していた人達がみんな目を覚ましたのを確認して、ちょっと前からこの部屋に来ていた王と呼ばれている人が口を開いた。
「突然の事でまだ状況に理解が追い付いていない者もいるとは思うが、これから説明するからとりあえず聞いて欲しい。諸君らを此処に喚んだ理由は他でもない、我が国の勇者として魔王軍の侵攻をくい止める騎士達と共に戦い、魔王を倒してもらう為だ。それに際して、早速だが各人のステータスを確認させてもらう。」
そう言ってステータスの表示方法を説明され、周りの人達が次々とステータスを表示していった。
一方的に話が進んでいたが、周りには武器を持った騎士達がいるからなのか反抗しようという人はいないようだ。
「んっと?他人に見せる様に念じるだけでいいんだよな?……お!表示出来た。これ見えてんのかな?」
なんて呑気にしていたら、少し離れたところで歓声が上がった。どうやら好ステータス者がいたらしい。
「これは凄いぞ!職業が【勇者】だ!それに能力値も軒並み高い。今回の召喚は当たりだぞ!」
やっぱり出たか。
あいつは……うわぁ、こんなとこまでテンプレかよ。
うちのクラスの陽キャでいつも五月蝿くしてる奴じゃん。
確か名前は佐藤 龍牙だ。
なんでこうろくな奴が勇者にならないのかなぁ。
なんて思っていたらまた歓声が上がった。
今度は【聖女】が出たらしい。
確かあの人は……
「流石生徒会長だな。やっぱ元々持ってる人は違うな。召喚されても中心人物か。」
そうそう生徒会長だよ。私立星光学院三年、神代 聖奈。
クールな美人だが、冷たい訳ではなく人当たりも良い事から学年問わず人気がある。
あまりに遠い人過ぎたし関わり無かったからすぐ出て来なかった。
名前も知らない誰かさんありがとう。
あれ?でもどっかで話した事あった様な……だめだ思い出せない。
まあそれは置いといて、ここまで来たらまだ来るだろう。
……やっぱりな。次は【賢者】だと思ったよ。
そしてその賢者はというと、校内では有名な一つ上の先輩で、常に全国模試トップに君臨する秀才、御影 策だ。
まぁ、これは納得だな。
勇者があれだったから心配してたけど他の主要職業がまともな人で良かった。
そうそう彼らのステータスはっと、
名前 リュウガ・サトウ
Lv 1
職業 【勇者】
体力 350
魔力 250
物攻 200
魔攻 180
物防 120
魔防 120
スキル 『武装召喚』『聖剣解放』『統率』
魔法 光属性魔法Lv1 無属性魔法Lv3
称号 《転移者》《聖剣使い》
名前 セイナ・カミシロ
Lv 1
職業 【聖女】
体力 250
魔力 250
物攻 120
魔攻 120
物防 180
魔防 200
スキル 『聖壁』『修復』『統率』
魔法 聖属性魔法Lv1 無属性魔法Lv2
称号 《転移者》《聖なる癒し手》
名前 サク・ミカゲ
Lv 1
職業 【賢者】
体力 300
魔力 350
物攻 150
魔攻 200
物防 110
魔防 200
スキル 『全属性魔法適性』『詠唱破棄』
『高速学習』
魔法 火属性魔法Lv2 水属性魔法Lv2
土属性魔法Lv2 風属性魔法Lv2
無属性魔法Lv2
称号 《転移者》《変幻自在の魔術師》
おぉ!なかなか凄いな!
そうじゃないと戦力にならないんだろうけど。
これで最上位だとすると平均的なステータスは80〜100いければいい方だな。
っと、忘れてはいけない。自分のステータス確認がまだだった。
さて、どうかな?
名前 ツヅリ・ツムギシ
Lv 1
職業 【 】
体力 90
魔力 50
物攻 30
魔攻 20
物防 40
魔防 20
スキル 『観察』『読心術』
魔法
称号 《転移者》《jm%d23@あgf》
これはヤバい。能力値低すぎるし、スキルが戦闘の役に立たない。
多分今のとこ最弱だろう。
それに、職業が空欄でルビだけ振ってるのとか、謎の文字化けした称号とか何なんだろ?特別な意味でもあるのかな?
まぁ今考えても答えはわからないし、何より今後どうなるかだ。
このステータスなら最悪ここで消される可能性も出てくる。良くて追放か?
これは色々と覚悟を決めないといけないかもな。
暫くして僕のステータスが確認される番になった。
その反応は思っていた通りで、
「なんだこのステータスは!これではこの世界の人間と比べても低いではないか。おまけにそれを補えるだけのスキルも持っていない。こんな役立たずは我が国の勇者としてふさわしくない!即刻追放してしまえ!王城からでなく王都からもだ!」
すぐに殺されはしなかったが、予想通り追放にはなってしまった。
不本意ではあるが、命があるだけまだマシなのでここは従おう。
そうして外に連れて行かれるとなったとき、ふと視界の隅に不愉快な笑みが映った。
佐藤 龍牙とその取り巻きだ。
あいつらはあまりクラスに馴染めていない陰キャの僕をいつも馬鹿にしてくる。
どうでもいい奴らだから無視しているんだが、それがまた気に入らないらしく最近では少し当たりが強くなってきていた。
今回は自分が勇者になって調子に乗っているのもあるだろうし、目の敵にしてきた僕が追放になってさぞかし嬉しいんだろう。
多少むかつくが、まぁ、無駄な事に労力は使わないさ。
どうせあと少しでその顔も見なくて済む様になるんだから。
そう思って騎士に連れられ歩き出したとき、声が上がった。
「こやつも追放だ。共に連れていけ。」
どうやらもう一人追放者がいたらしい。
誰かと思い振り返ってみると、それは馴染めないクラスの中で唯一親しくしていた女の子だった。
彼女の名前は夢咲 言葉。
僕と似たような境遇で、周りの女子からはぶかれ、中心グループからは軽いいじめのようなものを受けていた。
気の弱い彼女が心配になって、二人だけの時に声をかけたのをきっかけに、よく二人で話す様になった。
共通の趣味である物語について話すことが多く、仲のいい友達が全て他クラスになってしまった僕としてはこの時間がこのクラスでの唯一の癒しになっていた。
そんなこともあって、追放になった彼女の事が少し心配になった。
幸いと言ってはあれだが僕も一緒に追放されるので、後で声をかけて、落ち込んでいたらフォローしようと思う。
そんなこんなで、僕たち二人は王都の外壁の外まで連れて来られた。
騎士達が外壁の内側に戻って行き、門が閉められた。
かろうじて頑張れば一月くらいは暮らせるだけの金額は持たせて貰えたが、なんせこの世界のことは全くもって分からないから正直ちゃんと生きていけるか不安だ。
とりあえず情報を集めて今後どうしていくか考えないと。




