僕と彼女とからかい母娘
ただ、イチャつくだけ。
窓から差し込む温かな光で目が覚めた。
あれだけ動いたからなぁ、体があちこち痛い。そして凄く眠たい。まぁ、贅沢な悩みなんだけど。
そうしてふと隣を見てみると、そこでは一糸纏わぬ姿の美少女が、安らかな寝息をたてていた。それを見て改めて想い人と結ばれた実感が湧いてきた。胸の内に湧き上がる想いのままに、僕は彼女の頬をそっとなで、その額にキスをした。
「んっ。つ…づり、くん?」
言葉がゆっくりと目を開けた。まだ眠たそうだ。
「ごめん、起こしちゃったね。まだ、寝ててもいいんだよ。」
「ううん、大丈夫。目は、覚めたから。おはよう、綴理くん。」
「おはよう、言葉。」
「綴理くん。お願いがあるんだけど。」
「ん、何?」
「えっと、あの…」
言葉が躊躇いがちに何か言おうとしている。
この顔はもしかして…
「言葉。」
「へ?つ、綴理くん?んむっ!んっ…んう。」
顔を上げさせそっと唇を触れ合わせたると、言葉はすぐに蕩けた表情を浮かべた。
「違った、かな?」
「ううん、当たってる。なんでも分かっちゃうんだね。」
そういって言葉は嬉しそうな笑顔を向けてきた。だから、
「言葉のことは誰よりもずっと見てるからね。」
僕は笑顔でそう返した。それを見た言葉は、照れた様に顔を赤くした。
その後昨日と同じ様に抱き合ってから、ベッドから出て各々朝の支度を始めた。
準備が出来て下に降りると、案の定女将さんが声をかけてきた。
「昨日は随分とお愉しみだったみたいね。」
それはもういい顔をしている。
「うるさかったですか?」
「いいえ、偶々部屋の前を通りがかった時に少し聞こえただけだから。あまり気にしなくていいわよ。」
「そうですか、それなら良かったです。」
「それで、今日の朝はどうするの?」
「そうですね。だいぶお腹が空いているのでがっつり食べたいです。言葉はどうしたい?」
「私もお腹空いてるから綴理くんと同じでいいかな。」
「では、二人分がっつりでお願いします。」
「任せて。すぐに用意するわ。」
十分程経って、
「お待たせしました。今日の朝はオーク肉のソテーとクロックバードの卵のスープです。」
「お、本当にがっつりだね。これなら今日一日しっかり動けそうだよ。」
「オーク肉は滋養強壮や疲労回復にいいんです。特によく運動した後とかは一番効果的ですね。ちょうどお兄さん達みたいな。」
そういってにんまりとする看板娘リーンちゃん。
「ははっ、相変わらずだな、ここの母娘は。…はぁ。」
本当に共有が早い。
「そうそう、サービスでデザートも用意したんです。祝福の気持ちを込めて私が作ったんですよ。良かったらどうぞっ。」
そう言って満面の笑みを浮かべるリーンちゃんを見てとても嫌な予感がしたが、流石に断るのは申し訳ないので受け取ってはおく。
「そ、そっか。ありがたくいただくよ。」
「よかったぁ!じゃあ食べ終わりを見計らって持ってきますねっ。」
そういうとリーンちゃんはとても愉しそうに戻っていった。華麗にウインクを決めて。これは完敗だな。勝てる気がしないよ。
まあそれはさておき冷めないうちにいただきますか。
「うん、美味しい。しっかり肉だけど重たくなくてどんどん食べられそうだ。」
「そうだね。私は基本的に朝はそんなに食べれないんだけど、これならいけそう。」
こうしてあっという間に二人とも完食してしまった。そして最後にデザートなんだけど、
「は〜い、こちらデザートです。お二人でどうぞっ。」
運ばれてきたのは一見普通のパフェ的なものだったのだけれど、一番上のクリームのところにプレートがのせられていた。
”卒業おめでとう”
「これは、その…なんというか。」
「うん、ちょっと…ね。」
もう既に昨晩の事について知られてるのは分かってたけれども。けれ、ども!なんでお互い初めてだってバレてんのかなぁ…。本当にあの母娘はそういう事に関して勘が鋭いというかなんというか。まあいい、なんとなく分かってたことだ。切り替えていこう。
「取り敢えず、食べよっか。せっかくだし。」
「う、うん。じゃあ…」
そういって言葉はデザートを掬ってスプーンを僕の方に持ってきた。
「え、言葉?」
「それとこれとは別だよ。」
その瞳からは強い意思が感じられたので、黙って流される事にした。
食べている間、遠くの方から生温かい視線を感じていた事は気にしないでおこう。幸せな時間だった事には変わりないしね。
次回、賭博師 綴理。




