『鑑定』してみる
卒業(何をとは言わない)。
「言葉、宿に帰る前に露店に寄っていかない?」
宿に戻るまでの道で、言葉にそう提案した。
「いいよ。何か買う物でもあるの?」
「いや、せっかくスキルが進化したからいろんな物を見てみようと思って。このスキルについてはまだ完全に理解出来てないからさ。」
「そっか、私も気になるし試してみよっか。『鑑定』っていったらファンタジーの定番スキルだもんね!楽しみだなぁ!」
どうやら言葉も乗り気みたいだ。
という訳で、早速スキルの性能と使い心地チェックだ。まずは効果の上限から。予想が正しければ少なからずダメージがあるはずだから、心の準備をしておこう。
よし、
『鑑定』
太陽 鉄 銅貨 銀貨 麻 石 ラピットラビットの肉 ファントムバードの肉………
「くっ!…ふっ……ふぅ。」
脳が焼ける様に痛い。完全にオーバーヒートだ。
「大丈夫!?」
言葉が慌てて駆け寄った。予め説明しておくのを忘れてたな。そりゃ隣で急にこんなになったら心配するわ。
「うん、大丈夫。想定内だよ。取り敢えず上限は分かった。効果範囲は視界全体か。でもそこまで広げると情報の処理が追いつかないな。案の定頭痛がしたし。普段は限定して使うようにしよう。後は情報の細かさだな。」
範囲を限定してもう一度使用してみる。
ラピットラビットの肉
比較的安価な肉。クセが少なく幅広い料理に使える。栄養価は高め。
うん、ちょうどいい感じの情報量だね。これくらい分かれば普段の生活には十分だ。後は魔物や人にも適用出来るかだけど、それは後でいいかな。
取り敢えず分かったことを言葉にも説明すると、
「結構融通が利くんだね。想像以上に便利かも。」
そう言って言葉も感心していた。
だよね。これはこの先末永くお世話になりそうだ。ということでこの話は一旦おしまいにして、
「取り敢えず目的は果たせたけど、何か買っていきたい物とかある?」
「う〜ん、特には無いかな。今は浪費出来るほどお金に余裕ないし、今すぐ必要な物もないから。また余裕ができたら考えよう。」
「そっか、じゃあ今日はもう帰ってゆっくりしよう。」
そうして宿に向かって歩こうとしたんだけど、言葉が立ち止まって何か言いたそうな顔をして僕を見つめてくる。なんだろう?
あ、もしかして…
「言葉、手繋ごっか。」
「っ!」
きゅっ。
恥ずかしそうな顔をしつつも、声をかけるとすぐに僕の手をとってきた。そして幸せそうな笑顔を向けてくる。
なんだこの可愛い生き物は!あ、僕の彼女か。
……なんかこのくだり朝にもやった気が。まあいいや、可愛いのは確かなんだし。素直に喜んでおこう。
とまあそんな感じで帰り道は至福のひと時となった。
宿に着いてすぐに風呂場に行き体の汚れを落とし、その後食事を手早く済ませて部屋に戻ってきた。後は寝るだけだけど、その前に一つやりたい事がある。
「言葉、いくよ。」
僕は言葉を真っ直ぐ見つめて言った。
「う、うん。」
それに対して言葉も僕の方を緊張した面持ちで見つめ返し、震える声でそう返事をした。
「嫌だったら言ってね。すぐ止めるから。」
それを見て僕は少しこれからすることに躊躇いを感じそう言った。けど、
「大丈夫。恥ずかしいけど、もう覚悟はしてるから。」
そういって言葉は僕に潤んだ瞳を向けた。ここまで言ってくれているんだ。躊躇わずにやってしまおう。時間をかけるほど言葉の恥ずかしさは続くんだから。
「分かったよ。じゃあ…」
『鑑定』
名前 コトハ・ユメサキ
Lv 1
職業 【司書】
体力 100
魔力 50
物攻 20
魔攻 20
物防 30
魔防 30
スキル 『速読』『高速読解』
魔法
称号 《転移者》《ck8n3と#&》
お!やっぱり生物にも適用できたな。これで対人や対魔物でもある程度の実力を知った上で行動が出来るな。これは大きな収穫だ。
まぁここまでは予想通りなんだけど、ここからは僕が感覚的に出来ると感じただけだからやってみるまで分からない。一応言葉には事前に説明しておいた。ただステータスを見るだけなら以前にも見せあってるからなんともないのに言葉が恥ずかしがっている理由はそこにある。
その理由はというと、
性別 女
誕生日 11月22日
身長 148cm
体重 44kg
B 78cm
W 56cm
H 79cm
趣味 読書・アニメ鑑賞・執筆活動、料理・お菓子作り
経験人数 0人(恋人有)
詳細情報
明るくて優しい女の子。
いつもしている眼鏡は実は度が入っていなく、過去の経験から目立つ容姿を隠す為につけている。それでも男子の中で密かに人気が出ている為、他の女子からはあまりいい顔をされていない。
普段はふわふわしているがここぞという時は折れない信念を持っている。
日常的に物語に触れる事が多く、自分で物語を考える事もしている。
最近ずっと好きだった紡詞綴理が初めての彼氏になり、ファーストキスも彼とした。彼の寝顔を見ることが趣味に加わるなどもし、もっと先の関係にも進みたいと思っている。
……なんというか、出来てしまったのはいいけど申し訳ないな。ここまで細かく見れるとは思わなかった。これじゃあ殆どの個人情報が筒抜けだ。しかもリアルタイムではないといえども、大まかな心の中まで見れてしまっているんだけれど。想像以上にヤバいぞこのスキル。
「つ、綴理くん?」
はっ!色々凄すぎてつい思考に没頭してしまった。言葉が不安そうに瞳を揺らして僕を見つめている。このまま黙っていると言葉も困るし早く結果を伝えないと。
「ごめん、思ってた以上の結果でつい色々考えちゃった。事前に伝えていた通りステータス以外も細かく見れたよ。ちょっと申し訳なくなるくらいにね。」
「そこまでなの?」
「うん、大体内容は…」
そうして僕が見た内容を簡潔に伝えると、
「うわぁ。そんな事まで知られちゃったの?もうお嫁にいけないよぉ。しかも綴理くんが寝てる間の事までバレちゃうとか聞いてないよぉ。もうお嫁に行けない。」
言葉は顔を真っ赤にしてベッドの上で布団に包まってしまった。
とてもかわいそうだし申し訳ない気持ちはあるんだけれど、そんな言葉を見てついつい可愛いと思ってしまった。本当に困った奴だな、僕は。
気を取り直して言葉に近づき包まった毛布ごと抱き締めてから口を開いた。
「言葉、こっち見て。」
「うぅ。何?」
言葉が布団からそっと顔を出して僕を見つめた。
「責任は、取るから。」
言葉の瞳をしっかりと見据えてそうはっきりと口にした。
「っ!…ほんとぉ?」
言葉は顔を真っ赤にしながら聞き返してきた。だから、
「最初からそのつもりだよ。そうじゃ無かったらそもそも付き合ったりしない。僕はそういう奴だって知ってるだろ?」
そう言って笑いかけた。それを見て言葉は、
「そう、だったね。綴理くんはそういう人だった。人一倍こういう事には敏感だもんね。…うん、じゃあ末永くよろしくお願いします。」
どこか納得したように微笑んでそう言った。
「こちらこそ。言葉、大好きだ。愛してる。ずっと、ずっと側にいてほしい。」
「うん、私も愛してるよ。何があっても側にいるからね。」
そうして抱き合った僕たちは互いに見つめ合ったまま顔を近づけていき、
「んっ…んんっ。んふっ…んうっ。はぁっ、はぁ。」
「んむっ…んっ。ふっ…んんっ。ぷぁっ、はぁっ。」
「明かり、消そっか。」
「そうだね。僕も、もう止まれそうにない。」
それからお互い初めての経験を経て、また一つ先の関係へと歩みを進めた。
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