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はじめてのおともだち

 男性陣の髪をすべてカットし終わり、ついにこの時がやってきた。

 いよいよ、初めての女の子だ。

 その子は少々日に焼けた肌、髪はブラウン。ボディーアーマーはぱつんぱつんになるほど…胸が豊か。

 いや、全体的に体が立体的なんだ。西洋人に多い体格。

「よ、よ、よ、よろしく…お願いします!」

 彼女は私を見るなり真っ赤になり、ちょんと頭を下げた。

 私よりずいぶん大きいのに、いちいちのしぐさがかわいらしい。


 シャンプー台で洗いながら気づく。女の子は男性とは別の油を使っているみたい。ちょっといい匂いがした。

 「髪には何を付けていたの?」

 「あ、はあ…椿油を」

 おお、あるんだ椿油。それに香油も入っているらしい。

 クセは強いほう。むしろクルクルにして華やかな感じにしたいんだけど、この子の仕事は兵士だ。

(これは、話をしてみないと)

 スタイリングチェアへ移動させる。クロスを巻いてタオルを取るとやはりくるくるした感じになってる。

「さて、あなたは女の子なのでちょっとお聞きしたいんだけど…結べるくらいに切るだけでもいいし、そうでないなら耳くらいのショートにしてくせ毛を生かす感じにしたいな、と思うんだ」

 私が鏡越しに話しかけると、ペティさんはえっ、と小さく声をもらしてこちらを向いた。

「サギリ様みたいな長さは、ダメなんですか?」

 ほんとだ。ディーが言ってたのマジなんだ。憧れてるの?

「うーん。私はさ、戦わないからいいんだけど」そう言って下を向く。「こうすると髪の毛が降りちゃうのね。ペティさんの仕事では邪魔になると思うんだけど」

 首を戻して手櫛でかきあげる。「こんなことしてる間に魔物がきたらダメじゃん?」

「はい…」

「ペティさんはクセが強いけど、結んでしまえばどうってことないし、毛量を減らすことでオフにはおろして楽しめるから、そっちを薦めたいんだよね」

「そう…なんですか…」

 かなり落ち込んでいる様子だ。しかもロングかショートの二択なんて、乙女にとっては一大事だ。

 ストパーという手もあるにはあるんだけど、なんにせよボブはおススメできない。

 うーん。どうしたもんだかなあ。

 サイドが降りなきゃいいんだよね?

「そうだ。アレンジ自分でできるかな? 手は器用なほう?」

「アレンジ、ですか?」

「例えばね」私は自分のサイドを編み込みした。「こうしてしっかり編んで、後ろで止めるなりピンで固定する方法はあるの。椿油を使えばやりやすいかな」

「…それ、姉さんがやってるやつです…!」

 え?お姉さん?そういえばこの子、髪の毛の色…。

「もしかして、エルドリスさん?」

「はい、姉です!一つで束ねるのも、ただ編むのもつまらないといろいろやった末、あのようになっていて…私はちょっと変だと思っていたのですが」

「いやいや、エルドリスさんのあれはすごいよ。あれは私の手がいらないって思ったもん。じゃあ、慣れないうちはお姉さんがやってくれるね。私くらいの長さ…いけるよ?」

 ペティさんの目が輝いた。


 こうして、初めての女の子のお客様は、輪郭下くらいのボブになったのである。

 両サイドを丁寧に編み込み、ゴムで止め、ちょっとピンで固定。ふわふわの髪はすいてあるけど、彼女の姿はものすごく華やかになった。

 男性たちがおお…とざわめく。

「ステキ…サギリ様みたいだけどまた違う」

「そうそう。私とペティさんは違うの。それぞれの魅力っていうのがあって、それを生かさなきゃ」

 アシンメにした短い前髪を撫でながら、彼女はこちらを向いた。

「あの、サギリ様。姉からいろいろ話を聞いていて。ほんとに素敵な方だなってずっと思ってたんです。よ、よければ…私とお友達になってください!」

 ええーっ!!

「ほんと?こちらこそだよ!ウェルカム!うれしい!」

 やった!女の子の友達だ!今まで男ばっかしか相手にしてなかったもんなあ!

「ペティちゃんって呼んでいい?あと、お姉さんも友達になれるかな?」

「はい!ぜひ姉も!」

 女の子同士で歩いたり、ケーキ食べたり。想像してたらふわふわしてきた。

 うれしすぎる! 


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