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03.信仰を示す

 はて『どうしてここにいるんですか?』とはどういう意味だろう。その言葉どおりの意味だろうか。だが彼女は先ほど、独りごとの中で"人間"と口にした。


 それはつまり人間という種族について理解しているということであり、彼女が人間ではないかもしれないという憶測が出てくる。


 ……あるかもしれない。彼女の人間離れした美しさと水しかない異様な風景。彼女が人間ではない"神"のような存在だと考えるのが当然のような気さえしてくる。


 神であるならば人間の限界についても熟知していると思う。だが彼女は『どうしてここにいるんですか?』と聞いてきた。


 それは人間について理解が及ばぬ部分があるか、あるいは……。



 『あの、大丈夫ですか……?』


 『ひえっ!?はいっ!もう少々お待ちくださいッ!!』


 『ヒッ!?……はっ、はい……』



 ヤバい。あれこれ考えて催促させてしまった挙句に勢いよく返事をしてまたビビらせてしまった。これはいよいよもって俺はもうヤバいと思う。


 神というのは大抵碌でもないものだと相場が決まっているようだ。だが、中には信仰すれば護ってくれるという神もいるらしい。この少女が神だとしてはたしてどうだろうか。


 ……待てよ。その考えでいくならばこの少女の『どうしてここにいるんですか?』は"信仰を示せ"という意味になるかもしれない。


 非常に難解な問いである、といえるだろう。出会ったばかりの存在に信仰を示すというのはよほどの価値観の破壊、即ち自分を根底からひっくり返すような衝撃的な体験がなければ難しい。


 理解しがたい神を理解して意思疎通を行うのがまず困難だろうし、さらに自分のやり方で結果を出して納得させるのは並大抵のことではないと思えるからだ。


 ……ああ。彼女がとても不安そうな顔になっている。覚悟を決めなければならない。今までの人生で培ってきた知恵を凝らして、出会ったばかりの"神"とも思しき少女に無理やりにでも信仰を示す時が来たのだ。


 そうして俺が取った行動は――。



 『すいませんでしたぁぁーッ!!生きててごめんなさいーッッ!!……うぼろおぼろぼろ』



 この時の俺はどうかしていた。とち狂っていたとしか言いようがない。斯くして俺は自分でも何をしているのかよくわからないが、少女に信仰を示すために命を落とす覚悟で大量の水を呑み込み始めたのだった――。

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