スープ
「おいしい!」
「そうかい、良かったねぇ嬢ちゃん」
「うん!」
あの後言葉に甘えて店に入れてもらい、ちょうど少女が目を覚まし、ご飯まで出してくれていたのだった。
食事として出されたクロワッサンとコーンスープからは湯気が立ち上っており、コーンスープとバターの甘い香りが鼻腔をくすぐる。久々のしっかりとしたご飯に感動していると、隣ではしゃいでいた少女がこちらを振り向き、
「おにーさんたべないの?」
「なんか苦手なもんでも入ってたのか?まあ俺は無理してでも食える時に食っとくのをオススメするがな!」
ガハハ、などと言ってきたので、首をぶんぶん横に振り、
「そんなことないですよ!……久々のしっかりとした食事につい……」
……自分で言ってて悲しくなるな…と思いつつしんみりと言うと、男が
「ってこたぁ、お前さん下級民出身か?」
と聞いてきたので、驚いて男を見ていると
「ああいや、すまん、悪気があったわけじゃあないんだが……俺も元々はそうでな。まあ今でも扱いは変わってないが……」
「……そうだったんですか」
と相槌を打ちつつコーンスープに口をつける。
「ぁ………」
思わず吐息をこぼしてしまう。
──スープはこんなにも温かいものだったのか……
今まであの屋敷で食事として出されていたのは味のない水のような液体だったのだ。ここまで美味しいと思えるスープを飲んだのは初めてだった。
「喜んでくれたみてーで、よかったよ」
そんな俺や少女を見て男は満更でもなさそうな表情をしていた。