ゴブリンの復讐
冒険者としての初仕事を終え、町へ戻ろうとしたところ僕は後ろから誰かに尾行されている気がした。
「じーっ……」
後ろの方をよく見るが誰もいない。
「……」
もう一度見るが誰もいない。
まあいいや。と思いながら歩いていると、見たことのない景色が広がっていた。
どうやら道に迷ったようだ。
「どうするか……」
途方に暮れていると猫耳を生やした人々がやってきた。
「ここはどこなんだ?」
「……えっ?」
突然の質問に困惑した。
「俺は気づいたらここにいたんだ」
「私も気づいたらここにいました」
どうやらここにいる人々はわけも分からないでここにいるらしい。
大人数で困惑しているとどこからともなく声がしてきた。
「あなた方はゴブリンの無念によって創られた空間にいます。ゴブリンの無念が晴らされればあなた方は解放されるでしょう」
突然の情報に混乱してきた。
「ゴブリンだと……」
「なんでゴブリンにこんなことができるんだ」
「ちくしょう……」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
周囲が途端にざわめく。
これは非常にまずい気がしてきた。ここから出る方法を探さなくては……
しばらくすると疲れて眠くなったので僕は集団から離れて夢の中に導かれていった。
ここはどこだろう……
うまく頭が回らない状態であたりを見渡すと懐かしい景色が広がっていた。
懐かしいが思い出したくないずっと昔の景色だった。
そこには僕が使っていた物と同じ軍手があった。
その軍手から目を逸らすと昔の服が視界に入ってきた。
服から目を逸らすと次には見慣れた作業台が視界に入ってくる。
どこを見ても思い出したくないものが視界に入ってくる。
僕は目を閉じて混乱する自分を落ち着かせようとした。
忌々しい思い出がよみがえってくる。
「……ぁぁぁぁぁぁ」
声が思うように出ない。
僕は目を開くことができずにいる。
これが夢なら覚めてくれ。もう終わりにしてくれ。
何度も願った。
僕の思い出が流れ込んでくる。
ここから僕の思い出の時間が始まる。