外の景色
僕はとなりの町を目指して走りだした。旅に出ると自然とテンションが上がってしまい突然走り出したが、数分経過すると冷静になってきてハイテンションだった自分がとても恥ずかしくなってしまった。恥ずかしくなった僕は歩調を緩め、ゆっくりと隣町への道を歩いていく。
隣町への道はとても平和だ。時々、馬車に乗った商人とすれ違う以外は人と出会うこともなく、魔物も盗賊も現れないのでとても楽に隣町を目指している。
魔法の修行かぁ……何をすればいいのかな?とりあえずいっぱい魔法を使えば良さそうかな?などと考えていると魔法を使いたくなってきた。
「いいよね……」
独り言を言うように確認すると風魔法で草原の草の先っぽだけ刈り取っていった。
「……草……」
草を刈り取ると独り言のようにそう呟いた。呟くと無性に恥ずかしくなってきたので自分の世界に逃げ込むように考え事を始めた。
草を刈り取って草って言うのはストレートすぎるだろ。もう少しひねってフラワーとかの方が良かったか?あっ……フラワーは花だよな。草を格好良く言うとなんて言えばいいのかな?クサァ……なんか臭そうな感じがするな。もうちょっと格好いいのはないかな?グラス……まあ普通だよな。グラッスッ……なんかダサい気がするのは気のせいか?花も雑草と一緒に生えてるしフラワーで良いよね。フラワーって何か違う気がするんだよな。ふらぁわぁ……ふぁああ……なんか眠そうだな。ここで昼寝したら気持ちいいかもしれないな。ちょうどいい木陰があるから昼寝しようかな。
「よいしょ」
木に腰掛け僕は昼寝を始めた。そよ風が気持ちよくて僕の意識は夢の世界へと落ちていった。
「……ふぁああ」
目が覚めたころ、あたりは薄暗くなっていた。僕は暗くなる前に隣町に到着する予定だったので急いで隣町へ向かった。風魔法で空を飛ぶ人がいるという話を聞いたことがあったので、僕は全力の風魔法で空を飛び、隣町へ到着した。
「おぇぇぇぇぇぇ……」
空を飛ぶととても気持ち悪くなってしまったので、町に到着したとき門番にとても心配された。門番は僕の風魔法に驚いていたが、気持ち悪そうな僕のことを心配してくれて宿屋まで案内してくれた。ベッドまで運んでくれたのは僕の方が驚いてしまった。
次の日、冒険者としての仕事を探すために冒険者向け職業案内所へ向かった。
旅に出るときはある程度お金を持っていたが稼がないと生活できないので仕事を探すのは重要だ。だが、職業案内所はファンタジー感が無さすぎるだろ……
「どのような仕事をお探しですか?」
受付のお姉さんが営業スマイルで対応してくれた。
「えっと……」
とりあえず冒険者証を見せる。
「このランクの冒険者でしたら現在はこちらの依頼が受けられます」
依頼の書いてあるリストを渡される。
――ゴブリンの討伐、熊の捕獲、木の実の収集、商人の護衛――
この中ならゴブリンの討伐ができそうだな。ゴブリンなら燃やしたことがあるから大丈夫だろう。
そう思いゴブリンの討伐を受けることにした。
ゴブリン討伐の依頼主は町の役所だった。僕ともう二人でゴブリンの討伐を行うようだ。依頼主からの説明によると、森でゴブリンを二十体ほど倒してくれば良いということだった。
「森まで行くのか……面倒だな」
「仕方ないだろ。割がいい仕事なんだから」
僕以外の二人で会話が盛り上がっている。
「あんたは魔物退治はよくするのか?」
突然のキラーパスに驚いたが
「初めてです」
「そうか、まあ死ぬなよ」
「……」
一瞬で会話が終わった。
森に到着するとゴブリンが意外とすぐに現れた。
「よし、そっちは任せた」
二人組はそう言ってゴブリンの群れに突っ込んでいった。
僕の方には二体のゴブリンが来たので、火魔法で燃やしていった。火魔法で順調に討伐できたのですぐに終わった。
「あんたの魔法、すげぇな。どんな修羅場をくぐり抜けてきたんだ?」
討伐後、二人組のうるさそうな屈強な男にものすごい絡まれた。
「その猫ちゃん困ってるからほどほどにしてやりな。ごめんね、こんなうるさい奴で……」
……猫耳あるけど猫じゃないです。転生したら猫耳がついてきたんです。フォローはありがたいですけど、猫耳は……
「あの……」
猫耳について弁解しようと試みるが、
「転生者だろ。猫じゃないもん……って顔してるぜ」
「知ってるんですか」
あっさりと誤解が解けた。というか元々気づいていたらしい。
こうして、旅に出て初めての仕事は案外簡単に終わった。