転生初日
太陽がまぶしい。意識が戻ってきたとき僕は草原に寝ていた。
服装は転生する前と同じ古くてぼろぼろの動きやすい服だ。
転生したなら新しい人生を楽しんでみたい。だが、過酷な労働をやりすぎたせいで何をしたいのかわからない。
とりあえず、近くにある木の下で考えよう。ここはどんな世界だろう?今の僕の状態は?この世界に人は暮らしてる?町はある?魔法はどんなもの?魔法の使い方は?……たくさんのことを考えた。
しばらく考えていると近くを人が歩いていることに気づいた。歩いている人々は当然のように素通りしていく。僕も声をかけないので当然会話などしない。二人以上のグループはおしゃべりしている。聞こえてくる会話を理解できそうなので言葉は通じるみたいだ。
よし、会話をしよう。どんな物語も会話がなければ進まないではないか。そう思ったが、思っただけで会話ができるようになれば苦労はしない。結局、会話をすることもなく時間だけが徒に過ぎていく。立ち止まっているだけでは食事もできないので移動する。どちらに行けば良いのかわからなかったので、近くを通った人についていくことにした。不審者に見えるかもしれないが気にしたら道に迷う。
町のようなところに着いたが金を持ってない。そろそろ日が暮れそうなので寝る場所が欲しい。宿があるが入って良いか迷う。腹を決めて宿に入る。
「いらっしゃい」
宿のおじさんの声がものすごい元気だ。
「……」
しばらくの間の沈黙。
「転生者か?」
おじさんの心配したような声にうなづく。
「この世界に転生者は多いから心配するな。今日は遅いからとりあえず寝とけ」
おじさんに案内され、ベッドに寝る。一言も話さず転生生活の一日目が終わった。