違う未来と繰り返される転生
僕は工場の中でひたすら待ち続けていた。
だが、退屈ではなかった。待ち続けることが苦痛ではなかった。
どのくらい待っていたのかわからなくなるほど待ち続けていた。
僕は何もしないで待っていて良いのだろうか?
そんな疑問が頭の中に浮かんだ。
その答えがわからないままの頭の中に次から次へと謎の思考が入ってくる。謎の思考は工場からの罵声のように思えた。
工場の壁に押しつぶされている気がした。
僕の意識は遠くへ飛んで行き、そのまま眠りについた。
目が覚めたら知らない場所にいた。いや、僕はこの場所に何度も来ている。全ての世界につながる唯一の場所であるここに。
「よくわかりましたね。ここまでたどり着いたのは初めてです」
謎の声が聞こえる。だが、ここで反応してはいけない。僕の魂が警戒している。
「……」
「……」
「お前は何もない世界に転生させます。もう二度と会うことはないでしょう」
ここで僕の意識は飛んで行った。
何もない世界――僕が来るまでは何もなかった世界――ここに僕が来たことで矛盾が発生した。
この世界は僕を拒絶した。そうして、僕はまた別の世界に飛ばされ、長い旅を続ける。
僕は転生すると何か一つ特別な能力を手にしていた。前回は強力な火魔法。意識を失う時、正常な判断ができなくなるほどの強火力の赤い炎に焼かれていたはずだ。
今回の僕は能力を持っていないが、なんとかなるだろう。
そうして僕は新たな世界へ飛んで行く。