プロローグ
僕は孤独だ……
なぜ僕はこんなにも人付き合いが苦手なのだろうか?どうして一人でいることを好むようになったのだろうか?こんな風に考えるようになったのはいつからだろう?
そんなことを考えているとまた新しい朝がやってくる。いつもと変わらないごく普通の朝だ。そうしていつもと変わらない労働――過酷な強制労働――をしていつもと変わらない夜を迎える。
いつからこの生活を続けているのだろうか?このままで良いのだろうか?そもそも変わる必要があるのだろうか?変えるつもりがないならば考えるのは無駄ではないのか?こんな風に考えるのは意味のあることなのだろうか?
いつも通りの夜になるはずだった。だが、僕に訪れた変化は突然やってきた。頭が痛い、吐き気がする、手足がしびれる、目が見えない、気持ち悪い、全身の感覚が消えていく、次々と現れる症状に思考が追い付いていかない。床が赤く見えるのは気のせいだろうか?もうすぐこの過酷な環境から抜け出せるのか?最期の言葉は思いっきり叫んでも良いだろ?
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
その言葉を発したとき、たくさんの辛かった記憶とわずかな楽しかった記憶といつも大切にしている心の支えが流れていくような気がした。
失ったものがあるなら得るものも存在する。この世界は僕を失い何を得るのだろう?僕はこの世界を失い何を得るのだろう?その答えを知らないまま僕はゆっくりと意識を遠くの方へ向ける。
それから僕は静かに眠りについた。
目が覚めたら知らない場所にいた。ここはどこだ?自分が立っているのか横になっているのかもわからない不思議な場所だった。
「目を覚ましたようですね。どんな気分ですか?」
突然聞こえた音に驚いた。音のした方に意識を向けるとそこには何かがいるようだった。しかし、僕の興味を惹くものではない気がしたので放置することにした。
「あなたは元の世界に帰ることができません。哀れなあなたを私が転生させてあげます」
何かチャンスを貰えそうなのでコミュ障だったことを忘れて相槌を打つことにした。
「ふーん……」
よし、これで完璧だ。コミュニケーションもやればできる。
「あなたが好きそうな魔法が存在する世界に転生させてあげます。では、ごきげんよう」
魔法ってどんなものだろうなどと考えているといつの間にか意識が落ちていた。