表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

【焼肉の敷居】

* * *

焼肉の敷居

* * *


とうとうランチでは気が済まず、『焼肉おごって』と言い出した時がありましたね。


もちろん即答で、「それは無理!」と断りました。


”焼肉”って……それは、ちょっと敷居が高いと思うんやけどな。

家族でも特別予算を適用するところやん。


でも、結構しつこかったね。日を変えて度々言うてたし。


断った後、『”なんで” ですか?』って、訊かれることもありましたけど、


(”なんで” もなにも……え~~~、説明いるかなぁ~?)って思っていました。

どう言えば、いいかわからなかったので


「それはちょっと、わたしのお小遣いの範疇では、ご馳走できへんわ。 わたしの財布に入ってるお金は、家計も担ってるからね。

 何より主人が焼肉好きやからね。 悪くて連れて行かれへんわ」


皆と同じ正社員で働いているとはいえ、一旦会社を出たら、家庭優先の背景を持っていることを意識しておいてもらいたくて、主人のことをあえて表に出して言いました。

本当は主人のことを言うと、まるで”女性として警戒”しているような発言に聴こえそうで抵抗があったんですけどね。


オオカミ君が”目に入れてもいいくらい可愛い”存在だとはいえ、優先順位として(まずは”家庭=主人”が第一。 わたしがオオカミ君にできることは、あくまでもその余剰の範疇で可能なことだけなんだよ)と分かっておいてほしかったから。


あなたは、合点がいかん顔してましたけど。


☆ ☆ ☆


結局、焼肉ご馳走してくれたのは、オオカミ君の方でしたね。


その時も、やっぱり賞与の違いが大きくて、わたしのことを気の毒に思ってくれたのでしょう?

オオカミ君が『古狸さん、僕おごりますから、焼肉行きましょう』と声をかけてくれました。


思わぬ申し出に、わたしが「えぇっ! ほんまに~~!? なんで~?? 」と大きな反応をしてしまいました。ご馳走される側に立場が逆転しても、気の弱いわたしは(”焼肉”なんて、御馳走になってもいいの? バチ当たらん?)って、思ったのです。


そしたら、オオカミ君が優しい笑みを浮かべて


『いらんお金は使いたくないですけど。 僕は、古狸さんならいいんです』


と、はっきり応えてくれて、わたしは(うわ~~~っっ)と湧き上がってくる感情に、涙が出そうでした。


嬉しくて。 とっても嬉しくて。


今まで一方通行だと思っていた気持ちが、いつの間にか双方向で通じていたことが確認できた思いでした。


相手が女性の後輩だったとしても、なかなか無いことです。


――助けても、叱っても、振舞っても。


当たり前のことなのかもしれませんが、大抵は一方通行でした。それが普通と思うようになっていました。


☆ ☆ ☆


でも、実際に行くとなると、ずいぶん躊躇しました。

”おごってもらえる”とはいえ、焼肉好きな主人を差し置いて、ご馳走になっても良いものか、だいたい主人からしたら、どうなんだろうか?と悩んでしまいました。


オオカミ君とわたしからしたら、”他意がない”ことは明白です。

けれど、そんなことを感知しようのない主人にとって、それが主人の不信を呼んだり、不快な思いをさせるような行動であれば、慎むべきだろうなと悩みました。


こんな事で悩むなんて、あなたには失笑されそうですね。


わたしが食べ物(ことに焼肉!)への卑しい気持ちを断ち切り、お誘いをきっぱり断れば悩まずとも終わる話だったのですが、


それでも、(どうしても行きたい!)と思いました。


本当に嬉しかったから。


日頃のわたしは、自分のわがままにあたると思うことならば、主人に相談することはありません。相談するまでもなく、[我が儘=我慢する]が相談するまでもない結論だからです。


けれど、この時ばかりは”決しの想い”で主人にお願いしました。


主人も、まずは『えっ、なんで?』と大変不思議がりました。『そんなことある? なんかあるんか? 』と随分いぶかっていました。


「日頃、仕事をお手伝いしているお礼って言ってくれてて。

 たぶん、わたしのボーナスがめちゃ低いの知ってて、20歳も年下やのに自分の方が多いから、同情してくれてるんもあると思う。 それを踏まえてのお礼かなぁ? 」


と、わたしは説明しました。それでも不思議そうでしたけど、


『それ、ほんまに(仕事上の)下心無いんやろうな? それなら、おごってくれると言うてくれてるんやし、行ったら? ……いいなぁ~~』 と許可してくれました。


おかげで晴れ晴れとした気持ちで、焼肉をご馳走になれました。

あの時は、”本当にありがとう!” めっちゃ嬉しかったです。


ただ、うちの主人、よっぽど羨ましかったんでしょうね。その後の行くまでの間、何回も『いいなぁ~。 あんただけ、いいなぁ~~』言うてました。 今だに言うときあるんですよ。

本当に焼肉好きでしょ( 笑 )


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ