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【バスケット】

* * *

バスケット

* * *


オオカミ君は、高校時代にバスケットボール部でしたね。

定期的に『今日はバスケットがあるんで』と早く帰っていましたね。

今も続けているのでしょうか?


かの有名なバスケット漫画の影響でしたよね。

わたしのアゴが、そのバスケ漫画の先生のアゴに似ているからと


『タプタプしてもいいですか? 』


と訊いてきたこともありましたね。

流石にタプタプさせるはずがありませんが、似ていることは認めざるを得ないですね……。


そういえば、タプタプの代わりだったのでしょうか。

一時、毎日のように、グーにした指の節を、わたしの太い二の腕に、思いっきり押し当ててグリグリしてきましたね。

あれ、ほんまに痛かった。1日に何度もやられたら、痕が残るようなこともあったんですよ。


そんな子供のようなことをするのには、(オオカミ君には、わたしの理解しえないストレスが、さぞ、かかっているのだろう)と思いやった末、耐えられないことはなかったので、受け止めていました。

受け止めるというか、グリグリしてくる指の節を、こっちはこっちで押し返すように真正面から迎え撃っていました。


あまりに毎日だったので、途中からあえて大きな声で「イタイぃいーー!」と大げさに周りにアピールし、訴えかけることで、やめるかなと思いましたが、やめなかったですね。

わたしが「そんなことを平気な顔して他人にできるって、信じられへんねんけど?」と質問じみた不平をもらすと、


『古狸さんはマシですよ。男だったら、そのだらしない腹の肉を引き千切らんばかりの勢いで、思いっきりつまんでますから』と応えてきましたね。


(へぇ~、そうなんや。ストレスというか……この人、ただただ根っからのサドなんやな)


と思いました。


……女性扱いしてくれて、ありがとう。と言っておきましょうか。


☆ ☆ ☆


いつだったか、友達と行くはずだったBリーグの観戦チケットのことで


『友達誘ってたんですけど、断りの連絡があったんです。

 一人で行くのも気が乗らないし、古狸さん一緒に行きませんか?

 平日の夜ですけど、僕、家まで送迎しますよ』


と、会社のみんなの前で誘ってくれたことがありました。


家の事情から「無理」と即答しましたけど、一度行ってみたいと思いましたし、(あら? みんなの中からわたしを誘ってくれるんや)と、ほっこりと嬉しい気持ちになりました。


今、この手紙を書いていて初めて思ったことですが、あなたのその優しさは、友人や親に対する類のものではなくて、お婆ちゃんに対する類と同じものだったんですね。


”送迎付き”のところに、なんだか労わりを感じましたよ。

これも素直に喜んでおきましょう。


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