泳ぎ②
泳がせていた相沢が動いた。夕方、AGUを退社したが、自宅には戻らずに、東京駅から新幹線に乗ったらしい。目的地は不明だが西日本に向かっていることは確かだ。分身仏に、引き続き、見張るよう指示した。誰と接触をするのか。それは、奴の取引先なのか、あるいは黒幕なのか。それとも魔界の者なのか。いずれにせよ、危険な者に違いない。
分身仏の連絡から、一時間後にMR.Tからの報告があった。相沢のパソコンのハードディスクには、様々なデータのファイルがあり、彼の性格らしく、分かりやすく整理されているそうだ。ただ、一見すると、これといって目ぼしいものは、無いように見えるが、相沢よりMR.Tは数段上の技能を持っている。隠しファイルを見つけるのに、時間はかからなかった。その中に『HIRO』と書かれているファイルがあり、彩先生のアドレスに添付して送られてきた。ファイルに書かれていた内容は、俺たちのプロフィールであった。
【HIRO】本名、赤崎博通。新宿をアジトとする暗殺者。JUKUに所属していたが、その後、フリーになる。裏世界では知らぬものはいない。極めて危険な男。あらゆる格闘技に精通し、999連勝後、引退をする。女性や子供には優しいが、悪には容赦しない。ほぼ完璧な男なので、弱点はない。闘うのは避けるべき相手である。今年、死亡説が流れるが、その確認は未だされていない。
【Kasumi】本名、大沢香澄。AGUに所属していたが、HIROの暗殺失敗を契機に組織を抜ける。国から殺人のライセンスを公式に与えられている数少ない女性。その繊細の指は、体に触れただけで、死を与える。一流の暗殺者である。ただし、防御に弱点があり。攻めるなら、先手必勝。記憶をなくしており、現在は、現役を引退し、大宮にて暮らしている。美しい女性である。おそらく、世界一の美貌の持ち主だ。ただし、襲うのは危険極まりない。なぜなら、彼女には、鉄壁なガードがいるらしい。だか、詳細は不明である。
【レイ】本名、大沢玲。前述した、Kasumiの娘である。年齢は3歳。3歳とは思えない知能が備わっている。HIRO及び下に記述している彩がひたすら守ろうとしている。噂では、神の子供だと言われているが、正体は分からない。謎多き子供である。あの朴正恩を一瞬で手なずけた、空を飛ぶ、花を咲かせた、、、などなど目撃情報は多数。真偽は定かではない。
【宗彩聖】本名、赤崎彩。別名、高梨彩。年齢不詳だが、その存在はかなり昔から知られている。心技体、全て完璧な女性。頭脳明晰。そして、容姿端麗。彼女について、調査をしようとすると、必ず妨害が入る。日本だけではなく、諸外国にも影響力を与えている人物のようだ。HIROの育ての親らしく、頭の上がらない存在である。常に冷静沈着。攻撃も防御も無駄な動きはしない。美しさの裏に秘められた性格は、鬼そのものである。彼女には欠点はない。
【ちひろ】本名、大沢ちひろ。Kasumiの娘である。0歳児。前述の彩と行動を共にすることが多い。突然、現れたり、消えたりする。この前も、彩と二人で、しばらく姿を消していた。姉のレイ以上に謎の子供だが、所詮0歳児。狙うなら、この子だ。
ファイルを閉じようと思った時、彩先生がやってきた。嫌な予感がする。
『何これ、全く当たってないわ。しかし、誰が調べたのか、見つけないと。調べた者に、説教を与えなければならないわ。』
いえいえ、よく調べ上げてると思う。特に彩先生のところは完璧に当たっている。しかし、ごく最近のことまで乗っている。俺が『ちひろ』の名前で、ここで生活を始めたのは、半年ほど前からだ。その間、誰かが見張り、あるいは侵入した可能性があるということか。彩先生としばらく出かけたというのは、バチカンの時のことか。2週間前のことだ。俺と彩先生が不在の時に、やってきた者が、最も怪しい。かすみとレイ、それと分身仏に聞かねばならない。
その前に、盗聴器が仕掛けられていないかを調べなければ。俺はヒロに戻り、新宿のアジトに瞬間移動した。盗聴器を調べる道具を探した。俺が作ったオリジナルの機械だ。これより性能のいいものはない。俺はそれを手にし、大宮に戻った。全ての部屋、及びキッチン、トイレ、浴室などを調べたが、盗聴器は仕掛けられていなかった。念のため、彩先生の部屋も調べたが同じ結果であった。盗聴器が仕掛けられていないということは、近くで見張られているか、定期的に潜入している可能性がある。
ちひろに戻り、彩先生とかすみのところに行った。
かすみの話によると、定期的にやって来るのは、クリーニング屋、掃除代行サービスの2業者だそうだ。クリーニング屋は、玄関での受け渡しなので、怪しいのは掃除代行サービスだ。ちょうど明日、来る予定だと聞いた。俺は、罠を仕掛けることにした。
翌日、昼過ぎに掃除代行サービスが、やってきた。男1人、女性2名のスタッフだ。俺はリビングで、彩先生に抱かれていた。
『ママあ、ママあ、パパは?パパに会いたいよ。』
『ちひろ、ママだけじゃダメなの?パパは、お星様になったの。』
『彩さん、ちひろちゃん、ヒロが亡くなって、やっぱり寂しいのね。頭のいい子だから、彩さんが寂しがるのが分かってるんだと思うわ。このまま、私の子供で育てていいのかしら。』
『ちひろは、かすみさんにとても懐いているから、大丈夫よ。わたくしの余命はあと半年。あなたに任せるわ。ヒロとわたくしの血を受け継いでいる子供よ。成長したなら、きっと世界のために活躍すると思うの。』
掃除代行サービスを泳がせた。しかし、なんて、臭いお芝居だ。こんなんで騙せるかどうか不安だ。しかし、もし、この業者がスパイなら、相沢のファイルが更新されるはずだ。
『何で、わたくしが、この子の母親にならないといけないの。』
俺は彩先生に頭を殴られた。




