僕と友人と学校の天使
僕は月島拓真。
好きなものはゲーム、アニメ、漫画。
顔は悪くなかったはずなのだが
小さい頃から勉強、運動etcで
遊ぶ暇はあまりなく
残念な事に今では立派な非リア充。
今日からやっと高校生。
今年の春教室のドアを開けた僕は
今年初の絶望を味わった。
「拓真、今年もよろしくな!」
「あ、拓真も一緒だったんだ。」
「また一緒?なんか固まりすぎじゃない?」
「ちっ…。美少女が来ない…。」
去年とほぼ同じメンバーが集まっていたからだ。
変態が一匹、変態が二匹、変態が三匹…。
中高一貫校であるため
仕方ないといえば仕方ないのだが
このクラス替えには悪意しか感じない。
とりあえず誰にでもいいから異議申し立てをしたい。
はぁ…と自分の席につく。
ガラガラっと教室のドアが開きまた誰か入ってきた。
また変態か…と振り返ると
僕は今年初…いや人生初と言っていいほど
喜びを味わった。
そこには黒髪美少女が立っていたからだ。
神坂和泉。〈コウサカ イズミ〉
それが彼女の名前である。
陶器みたいに真っ白な肌。
腰くらいまである黒髪。
清楚な美少女で勉強も運動も出来る優等生。
当然の如く人気も高い。
学年トップで入学し半年に一度のテストでも
不動の一位を守り続けている。
「…神坂さん?」
「クラス間違えてんじゃねぇか?」
「あの女神がここのクラスとかそんなはず…」
「ヒャッハーーー!和泉たんが降臨されたァァアァ!」
「どうせ糠喜びなんだから現実を見なよ皆…」
ヒソヒソと話す輩の中には
クラスを間違えてるという奴や
本当に始末しておくべき変態もいた。
長い髪をふわりと揺らし
すっと席に着いた彼女は神々しいとしか
言い表せないほど美しい。
しかしこのクラスに来る時点で
少々頭がおかしい奴という
認識で人を見なければならない。
「よろしく…」
無表情のまま隣の席の僕に声をかけて
携帯を触り始めた。
何を見ているのかはよく見えないが
神坂さんが携帯をいじるなど
あまり結びつかない…
だが今は全力で携帯になりたい。
「よろしく神坂さ…」
バシッ!
言い言わる前に辞書が飛んできた。
顔に激突した。
多分このクラスの誰かだ。
誰かを突き止めることより
目の前の美少女を取る!!!
気を取り直してもう一度…
「よろし…」
ダンッ!ザクッ!
今度は先がこれでもかと言う程に
細く削られた鉛筆とカッターだ…。
今度は人数が増えたうえに
三文字しか言わせてくれない…。
しかも的確に急所を狙っている。
僕の息子をどうしようと言うんだ!
周りに注意しながら視線を巡らせる。
どいつだ…どいつが犯人だ…!
多分こっちの方から飛んできたはずだ…。
今度は早口で全部言い切ってやる。
「よr…」
ザシュッ!!!!!
1,2,3,4………16本のカッター…。
今教室にいるのは神坂さんを除いて………16人!!!
………………全員が敵だ。
仕方なく挨拶を諦め席を立つ。
「はは…翔太おはよう
これから一年間また一緒だね」
幼馴染兼親友の松岡翔太。
こいつはバスケ部のイケメンでエース。
良い奴ではあるがこのクラスでも
トップ5には入る問題児。
しかしこいつもさっきカッターを
容赦無く投げつけてきた奴で十中八九間違いない。
腐れ外道!!死ね!!爆ぜろ!!
と心の中で思うのは許容して欲しい。
「そうだな
早くお前を始末したいぜ」
「もう!嫌だなぁ!翔太ってば…」
軽口に聞こえるがそうではない。
目が本気である。
そこへ去年も同じクラスだった少女が話に入ってくる。
名前は織田沙織。
オレンジ色のツインテールに
可愛らしい外見で数少ない巨乳だが
神坂さんの信者で平気で毒を吐くクソ野郎だ。
「松岡ってばそんなこと言っちゃダメなんだよ?
和泉たんに話しかけられやがったこのブタは今私が始末する…」
「ちょっと待ってよ二人とも!
二人なら本当にやりそうだからやめて!?」
そう言ったのは天宮優…いや…天宮海だ。
優という双子の兄がいる。
護身用と称してスタンガンを常備している危険人物だが
このクラスでは比較的まともな奴だ。
というかクラスの全員がカッターを
所持している時点で安全とは程遠い。
「まぁここで殺ると掃除面倒だからやめて」
後ろに光がいた。
兄弟揃って美形で優は右、
海は左とお揃いの髪留めをしている。
一卵性双生児だからパット見区別出来ない。
長年の訓練を経てようやく髪留めなしで
見分けがつくようになった。
「あ、そっか…今日僕達が掃除当番…ってそこじゃない!
掃除当番じゃなくてもダメだから!」
容赦無く僕を抹殺しようとする
一応友人達は三年前の入学初日に仲良くなり
以来三年間クラスも同じ。
今話している4人(僕は除く)は問題児の認識で問題無い。
僕?僕はまともだよ?………多分………。
断言出来無いのがつらいけど…。
学校の女神…神坂さんの方を見て幸せそうにはぁ…と
溜息をつく沙織は
神坂さんの顔を見ているだけでは飽きたらず
我慢出来ない!!と言って
「神坂さーん」
とフレンドリーに神坂さんの方へ駆け寄る。
解せぬ…。
変態で狂人のくせに見た目が良いから
ファンもいる訳で迂闊に手を出せないのが腹立たしい。
さっき神坂さんに僕が挨拶しようとしたら
思いっきりカッター投げたくせに!
しかし神坂さんは天使の笑顔で
女子の革を被ったクソ野郎…沙織にも優しく接する。
あぁ、天使…。
何を話してるのか聞こえないのが惜しいが
神坂さんの笑顔が見れて幸せだ…。
「え!いいの!?」
と言う沙織の興奮した声を聞きながら2人を
僕と翔太と海と光は固唾を呑んで見守る。
「きゃぁぁぁ!ありがとう!」
そう言ってこちらに戻ってきた沙織は
目の焦点が合わず身体は震えているし
息が止まっている。
「どうした!!」
という翔太と僕の声に全く反応しないので
光が海持参のスタンガンを容赦無く
沙織に押し当て電流を流す。
泡を吹いて倒れていたが
暫くして意識を取り戻した。
沙織は
「和泉たんの…和泉たんの…連絡先を…フヒヒ……ゲットいたしましたであるます!!!」
と若干言葉がおかしいが
涙を流し敬礼しながら俺達に報告した。
「「「「それは本当か!?!?」」」」
僕らの声が重なる。
羨ましい…正直こいつを殺したいくらい羨ましい。
この喜びを家で一人噛み締めるね!と言って凄い勢いで教室を飛び出す沙織を僕ら四人は必死で追い掛ける。
一人だけ神坂さんの連絡先を手に入れた
裏切り者を追い掛け回して
始業式を無断欠席した僕らは
五人で放課後1時間以上説教されまくり
こいつらと一緒のクラスじゃなければ
こんな事しません!と四人を売ろうとした僕は
プラスでもう1時間説教された。
なぜカッターやスタンガンと言った物騒な名前ばかりしか出てこないのかというと答えはたった一つ。
僕達が通う学校はただの中高一貫校ではない。
特出したスキルを持つ将来有望の若者を
育てるための特別養成学校だからだ。
卒業すれば報酬と確立された地位を得られる。
有名企業のトップだったり、
一流の暗殺者にだってなれる。
小学生の頃に体力面・学力面の
どちらか一方で審査され合格すれば
受験の権利を獲得することが出来る。
体力面でその判定に合格した僕は
両親の期待を受け勉強にも励まされ
何とかこの学校への受験戦争を勝ち抜き入学権利を獲得した。
ここに居る友人たちも受験戦争を
勝ち抜いてここまで来た奴らの一部だ。
変人で変態で狂人だけど。