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学園抗争歌戦姫~スクール・ストライフ・ソング・ヴァルキュリア~  作者: 十参乃竜雨
第一章 キグルミ、サンドイッチマン、プラカード。そして物語は再スタート。
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それぞれの適正、特徴

スレイナの信奉者と会ってから数日経った時に俺はミーティングルームに『フェルクレイリィ ヒナ』のメンバー五人を集めた。

 なぜ彼女たちを呼んだのか。

 別に重要なことを伝える為に集めたわけではない。

 二日前に行った臨時のテストの結果を伝える為だった。テストといっても学校がしたものではない。俺が体力、歌唱力、知力といった歌戦姫として必要な能力を知るために独自に考えたテストだ。

「…………用があるならさっさと終わらせてくれない? 変態さん」

 そう声を上げたのはクリスだった。悲しいかな、この前の一件から俺の呼び名は変態さんにグレードダウンされている。まぁ、それもそうだろう。あんなことになったんだから、むしろありがとうとかお礼を言われたら人間性を疑う。

「とりあえず、前のテストの詳細の分析結果が出たから参考にしてくれ」

 そういうと俺はそれぞれに結果を渡した。

 クリスの時は明らかにひっぱり取られたが気にしない。

 体力結果のテストだが、主に大きな差が出た項目でもある。

 ダントツの一位でセリィだ。次はクリスで、続いて睡蓮、スレイナ、チユリの順番だ。チユリは引き籠り体質なのか持久力のテストではダントツに遅かった。

「上位の三人は特に問題はないな。スレイナ、チユリは要特訓だ」

「……あぅ」「……はい分かりました」

 チユリは困った顔をして赤い眼鏡をかけた顔をうつむかせる。スレイナはしゅんと下を向いて言った。

 歌戦姫に持久力をはじめとして、体力はとても大切だ。

 勝利条件は主に三つ。

 ①相手歌戦姫のマイクを奪う。

 ②相手歌戦姫の抗争続行不可能と審判に判断された場合

 ③相手歌戦姫のギブアップ。

 簡単に言えば①はKO。②はTKO。③白タオルといったところだ。

 当然ながら①が主になる。でもマイクを奪うというのが曲者で、どちらかが奪うまで抗争は終わらないのである。なので長時間に及ぶこともある。

 俺の経験したものでは三日間というのがある。最長では五日間というのがあったはずだ。

 それに歌って踊る、それを何曲も繰り返す歌戦姫には体力はもちろん必要だ。

 それらを踏まえれば二人には体力をつけてもらわなければ困る。

「次は知力だ」

 俺は次に知力の分析結果を見るように促す。

 時に歌戦姫は自ら先頭指揮を行わなければならないときがある。いつも隣に調整者や統括者がいるとは限らないからだ。その時にバカでは話にならない。

 結果としては、一位から順に睡蓮、クリス、チユリ、スレイナ、セリィだ。チユリが三位となっているが決して普通というわけではない。上位の三人は高水準。この三人に関してはこちらが注文しなくてもよさそうだ。しかし、スレイナは中の中。甘く見積もっても中の上あたりだ。つまり普通といったところか。

「で、問題なのはセリィ、お前だ」

「え、は、なんでっすかね⁉」

「てめぇに何も言わないと思ったか‼ とくに【抗争時の戦略的知識、事例編】の三問すべてに、『とりあえず突っ込む』と書くバカは初めて見た! 猪突猛進にもほどがあるぞ!」

「とりあえず行動にうつすのが正解じゃないんっすか?」

 その受け答えにミーティングルームにささやかながらも笑いが起こる。

 ああ、これは本物のバカだ。たまにキャラクターとして馬鹿を売りにするアイドルがいるが、これは嘘偽りなく本物のバカだ。

「とりあえず、お前には課題を出しておく」

「えぇー‼ そりゃないっすよ~」

「もしやらなかったら、俺が死ぬより怖い勉強指導をしてやるからな。絶対にやれよ!」

「うー、わかったっすよ」

 ポニーテールがしゅんとたれて落ち込む。なんかほんとにこいつは人懐っこい大型犬みたいな奴だな。俺は次の項目へと移る。

「次は歌唱力。これは専門分析官がコメントを残しているからそれを各自参考にしてくれ」

 これに関しては順位をつけるものでもないため、そういうにとどまっておく。

 まぁ、全員標準以上を維持しているため、俺から特に言うことはないだろう。

 総合的に見れば、

 クリスに関しては問題はない。水準以上を維持しているのはさすがだと言える。あえて言うならばメンタル面だ。先日の一件で分かったことだ。あれほど勝つことにこだわっているところはどうにかするべきかもしれない。それだけの理由があるのだろうが、これからエスカレートして自分の信奉者に押し付けるようになってしまってはまずい事が起こる。

 睡蓮に関しても大きな問題点は今のところない。ここもあえていうなればメンタル面だ。クリスとは逆で、勝つも負けるもどちらでもいいといった感じなのはまずい。意識の改革が必要だな。素質は高いのだからランキングも上げる事も難しくない。

 セリィは、体力はこの五人の中でも群を抜いている。でも全部体力に能力が割り振られているので知力が乏しい。本人の知力を改善させることも必要であるのだが、調整者がいれば、化けるはずだ。今はランキング下位にいるが、大幅に上げることは可能。

 チユリは、能力に関してはセリィのまったく逆だ。体力をつけることがまず必要。あとは彼女が歌える特別な歌か。彼女がなぜそれを歌いたくないかを知らなければならないな。

 ……スレイナか。正直どの項目も平均。特に特筆すべき点がない。なんというか地味というか、没個性というか……。あえて言うならメンタル面。内気すぎる。姉という存在が、今の彼女に大きな影響を及ぼしているのだろう。何をやらせても完璧にこなしていた姉をもっていればそう思うのも無理ないが。

「これからだが、レッスンの予定が入ってるからレッスンルームに移動してくれ。俺は少し用事を済ませてあとから向かう」

 そういうと彼女たちは各々立ち上がって移動を始める。

 ミーティングルームに俺だけになった。

 とりあえず、用事をさっさと終わらせるか。クレマから頼みごとがあって呼ばれているのだ。

 俺もミーティングルームの後始末をした後に退出する。

 俺は歩きながらふと考え事をした。数日が経ち刻一刻と団体戦の大会が近づいてきている。まだ先だが、抱えている問題は多々ある。それらの解決策を考えなければいけない。

 大会で初戦突破すれば、こいつらともおさらばになるのだが、かといって中途半端にするのは俺の性格ではできない。

 とりあえず、明日と明後日、学校の授業がない。だから部屋で引き籠りライフを送ろう。

 俺は楽しみのためにもう一頑張りしようと歩を進めるのであった。


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