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学園抗争歌戦姫~スクール・ストライフ・ソング・ヴァルキュリア~  作者: 十参乃竜雨
第三章 抗争、抗争、抗争。少年は拳を振るう。流れる歌に想いを乗せて。
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スレイナ(Rank.1501) VS フリージア(Rank.1)~想いよ届け~

「ハハァッ! 一人で殿を務めてウチの部隊を相手に大立回りか。さすが私の惚れた相手だな!」

 銀色の髪の乙女が恋する瞳でステージの少し高い所から少し離れた場所を見つめていた。

 歌戦姫である彼女はいまだに歌わずに衣装を着たままその様子を見ている。

「チッ、あの野郎気に食わねぇな! 俺が行ったらその場でひねりつぶしてやるのに」

「ゲンっち、男の嫉妬は見苦しいんだにゃ!」

白音ビャクネ! うるせぇ、黙ってろ」

 ゲンと呼ばれた男は大男であった。身長は二メートルをゆうに超え、体の腕や足が丸太のように太かった。明らかなパワーファイター。明らかに周りと一線を画していた。

 一方、白音と呼ばれた女は露出の大きい服でステージにあぐらをかいて座っていた。ゲンと呼ばれた男を笑いながらからかっていた。

 彼らはフリージアの直属の親衛隊の四人いる隊長の二人だった。

 その四人は『四騎士』と呼ばれている、フリージアの数多くいる信奉者の最強の四人だ。

 実力も当然のようにあり、『四騎士』のそれぞれが、『信奉者能力』を有している。

 ゲンは哉芽という男の言い放った挑発にただ腹を立てていた。

「安心しろ、ゲン、勝負は必ず勝つ主義だから、手心は加えん」

「しかしですねぇ、他の者にも示しがぁ」

「それより、ゲン。お前に頼みたいことがある」

 フリージアは話を切り替えた。

「あの部隊を手筈通り動かしてくれ、作戦は変更なしで頼む。それで終わりにする」

「了解しやした!」

 そう言って大きい巨体でステージから飛び降り、その部隊の方へと歩いていくゲン。

「私は念のために一曲歌って加護を強めようと思うから、白音、ステージから降りて警護に専念してくれるか」

「はいにゃ! わかったにゃ!」

 そう言って白音は軽やかに立ち上がりステージから降りて行った。

 それを見たフリージアはもう一度戦いが起こっている一画を見る。

 その中央で戦っている敵の青年を、彼女は見つめる。

 おもわず称賛のため息をつきたくなるのだった。

 彼女がそこまで彼に執着するのは理由があった。

(あの時見た、あのままの姿だな。私が夢見たあの姿のまま)

 彼女は初めて彼を見たのはテレビの中。自分よりも年下の男の子が、人気の歌戦姫抗争のプロリーグで自分の一回り二回り大きな相手をこれでもかというぐらいになぎ飛ばしていた。自分の仲間がピンチであればさっそうと現れ、敵をなぎ飛ばす。自分の信奉する歌戦姫のピンチには必ず現れて、敵をなぎ飛ばす。それはまるで姫と勇者だった。

 幼いころに見た彼女の目には、彼はヒーローにしか見えなかった。

 そして、その少女は夢を持った。その少年の歌戦姫になって一緒に戦いたいと。

(それを惚れたと言うのは間違っているだろうか、いや間違っていない!)

 そして、あの『歌戦姫界の悲劇』のあと、少年がプロの部隊から消えてしまったことを残念に思いながら、いつか復帰することを願い、少女は来る日も来る日も努力した。

 人が休んでいる時も努力をやめなかった。

 いつか彼と一緒に歌う日がくるという想いを胸に。

 そして、今は敵同士だが、自分の夢が近くにいることに、興奮を覚えていた。

 でも、わかっていた。

 彼はもうこの世にいない歌戦姫をいまだに信奉していることを。だから、信じる信奉者がいないことで、数多あった『信奉者能力』が使えないということも気付いていた。

 しかし、あの『欠陥品』というのは誰が考えたのだ。

 彼女はそれを考えた者を殴り飛ばしたい気分だった。

 でもそんな小事はもうどうでもよかった。

(だったら私は、歌戦姫界の伝説を超える、そしてこの私が君の姫になって見せよう)

 彼女はそれでしか、自分に振り向いてくれないだろうと思った。

 だから、彼女は自分の想いを歌に乗せて、歌を歌う。

(私の想い、君に届け…………)

 そして最強の歌姫は想いを自分の口で奏で始めた。


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