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学園抗争歌戦姫~スクール・ストライフ・ソング・ヴァルキュリア~  作者: 十参乃竜雨
第三章 抗争、抗争、抗争。少年は拳を振るう。流れる歌に想いを乗せて。
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運命の抽選

「緊張してきたんだおっぉおおおおぉおお!」

「ウルサイ! この豚野郎‼」

 俺は機嫌が悪かった。理由は簡単。見たくもない夢を見たからだ。

 目に映る醜いものには罵声を浴びせたくなる。手が出ないだけ良心的だと思ってほしい。

「むしろ、その罵声はご褒美なんだお!」

 変態は放っておいて、今俺はスレイナの信奉者達二〇名とともに控室にいた。千人は入るように作られているため、あまりにも閑散としているのだが。

 そして、今モニターの前に一同が集まっていた。今は抗争開始まで二時間。今からエリアの抽選が行われようとしている。少しでも優位な場所になるように信奉者たちは願っていた。焦るのも無理もないだろうな。

 場所が場所なら完全にチェックメイト。終わりだ。

 その時は潔く、棄権をすることも方法の一つに入れている。

『では続いて、生徒会長フリージア選手と奇跡の歌姫の妹スレイナ選手の大将戦の抽選ですね。さっそくひいちゃいましょう』

 注目の二つのカードとあってなんか司会らしき者がついて抽選のボタンを押す。

 モニターが様々な場所を映し出していく。これが止まった場所が抗争エリアとなる。

 信奉者の多くが両手で祈っている。

 そして、数秒した後、ある場所に止まり、場所が確定した。その場所は……。

『荒野』

「「「「「「おわったあああああああああぁぁぁぁぁぁああぁあああ」」」」」」

 一斉に声を上げ始める。とにかくウルサイ。一人ずつぶん殴って黙らせたいくらいだ。

「せめて『廃墟』ぐらいならまだ奮戦できていたんだお」

「一番いいのは『迷宮』だったでござるよ」

 それぞれが思ったことを口にしている。そんなことを気にしている余裕はない。

「ほら、お前達、作戦会議をやるぞ」

「ま、まつんだお、そんなことしても意味が……」

 ああ、ほんとにこいつらは。

「確かに負ける為の作戦会議は無駄だな」

「だったらなんで……」

「何言っているんだ。俺がいつ負けるって言った。勝つために作戦会議をするんだよ」

 その言葉にその場に衝撃が走る。誰もが俺の言葉を受け入れられなかったようだ。

「い、意味がわからないんだお、『荒野』は数あるステージの中でも開けた広大な場所。そんなところで戦えば、囲まれて袋叩きになるんだお!」

 確かにその言葉は事実だ。でもこいつは勘違いをしている。

「お前の言うとおりだが、一つ思い違いをしている。『荒野』が全て開けた場所だとおもったら大間違いだ」

 俺はエリア全部の地形を全て頭に叩き込んだ。

 それで導き出した答えだ。『荒野』には俺達が優位に戦える場所が存在している。

 俺はその場にあった電子板には『荒野』の全体地図を表示させる。

「荒野には本拠地となるステージの後ろ側に峡谷が存在している」

 その峡谷のステージの裏には小さな川が流れているが流れも速く、普通では泳げない。

「そこであれば通路も狭いし、大勢に囲まれる心配はない」

「その前にその峡谷はそのステージにいたるまで三本もあるんだお、囲まれないからといっても相当きついんだお!」

「そりゃ、圧倒的に数の差があるんだからどう作戦を立てようがきつい」

 五〇倍の戦力差があるのだどんなに好条件がそろおうとも楽になることはない。

「作戦の内容はこうだ」

 俺は全員の目の前で作戦の内容を話し始めた。

 まず、『荒野』ではエリアの中央部分にある開けた部分でお互いの本陣が見える状態でスタートする。そこで俺達はすかさず本拠地を放棄。その渓谷に向けて全速力で移動する。

 そこで渓谷に押しとどまって籠城する。

「それで、その三本を各一人ずつで守備する」

「なんで一人ずつなんだお! そんなの無理に決まっているんだお!」

「かといってお前らがいたって何になる。数を減らすだけの結果になる」

 籠城する理由は相手の数を減らすことになる。そして相手は全体のエリアを制圧しなければならない。そこにはもちろん人数をある程度割かなければならない。

「それで肝心のその三人なんだが……。まず、一番大きいこの渓谷をアイリアに頼みたい」

「…………わかった」

 そうスレイナの隣でいるアイリアがそう言って黙り込む。

 彼女はこの信奉者の中では最大の戦力だ。おそらく俺を含めたこの中の者でそこを守れるのは彼女だけといってもいいだろう。

 すんなりと了承したアイリアに他の信奉者は驚いている。

 まぁ、コイツと交わした約束は誰も知らないのだから仕方がないだろう。

「そして、次の渓谷はこの俺が守る」

 これに関しては異論はないだろう。

 そして最後の一本の渓谷だ。もう誰が守るかは決まっている。

「アルディ、お前だ」

 俺は隅の壁に寄りかかっているアルディに呼びかけた。

 俺の声に合わせてそこにいる信奉者たちは一斉にアルディに注目する。

「フハハァ! ついに我に堕ちた神の信託が下ったか」

 アルディが額に手を当てて言う。相変わらず中二病全開だな。

「アイリア氏と哉芽氏はまだわかるんだお、でもアルディ氏でその渓谷が守れるんだお?」

「アルディには策を預けるから問題ない。それよりもお前たちはそれでいいのか?」

 俺は後に河豚狸を含めた他の信奉者達に向けて俺は言った。

「むしろ自分に白羽の矢が当たらなかったことに安心している奴もいるみたいだな」

 調整者が軍師の役割であるに対して、統括者は信奉者を強くするための教官としての役割がある。で方法は二種類。教え導く正攻法と、あえて敵になりたきつける方法。

 俺は前者のように器用なマネをできるような奴ではない。

「悪いが、そんな根性だと、お前たちの想いはたいしたことないな」

 俺のその一言に全体が明らかな敵意を示す。

「まぁ、この一戦でよく考えることだな。後は個々に細かな指示を出す。アイリア、アルディ、河豚狸の三人はこっちへ来い。あとは戦いに備えておけ」

 俺がそう言うと呼んだ者が俺の周りに集まってくる。

 そのわずかな間で隅で控えていたスレイナと目が合う。

 心配そうな目でこちらを見ていた。

 俺は内心舌打ちした。やっぱりあの優しい目は俺の心締め付ける。

 三人が俺のところに集まると作戦のすべてを彼らに話した。

 すべてはこの試合に勝つために。


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