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学園抗争歌戦姫~スクール・ストライフ・ソング・ヴァルキュリア~  作者: 十参乃竜雨
第三章 抗争、抗争、抗争。少年は拳を振るう。流れる歌に想いを乗せて。
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クリス(Rank.56) VS リンドウ(Rank.12) (2)

「それで、今の気分はどうや? クリスはん」

 今ウチは相手のステージ上で立っている。そのステージの周りはウチの信奉者で埋め尽くされていた。

「といっても聞いてないんやね」

 ウチは膝をついて先ほどから言葉を発しないクリスはんを一瞥する。眼はもう生気がないようだ。勝つことは一つの目的であるが、それだけではない。

 その目的をウチは今果たす。

「そういやクリスはん、あんたの事調べさせてもらったで、あんたさん、年の離れた姉さんいるんやろ? それも『元』歌戦姫のね」

 いままで意気消沈したクリスが反応を示した。ウチの思ってた通りや。

「それもあの『歌戦姫界の悲劇』で、歌戦姫をやめたようやね」

「…………ヤメナサイヨ」

 彼女が小さい声でつぶやいた。何を言っているかわかっていたが聞こえないふりをする。

「あの悲劇の後、あなたの姉は戦うことやめ、部屋に引きこもったんやね」

「…………ヤメテ」

「格式高いエルハーベント家の当主であるあんたのお父様はある判断をしたんやね」

 徹底的につぶす。

「あなたの姉を別荘で軟禁状態にし、後継者を彼女からアンタにうつした。…………使えなくなったからといって簡単にそんなことをするんやな。酷い話やわ」

「アンタに何がわかるのよぉお!」

 いままで失意に沈んでいたクリスはんがゆっくりと立ち上がろうとしていた。

「何ひとつ分からへんよ。あんたの事なんか」

 わかっていたからと言って何ができるというのか、手を抜いてあげたのか。

 それは、否。手を抜くわけあらへん。

 ウチにはそれができないほどの想いがあるんや。

「……なら、いい。それにまだ勝負は終わってないわ」

 完全に立ち上がってクリスはんはウチをにらみつける。確かにまだウチは相手のマイクを奪うという勝利条件を満たしてはいない。

「それに、あんたこそいいの? こんな手を使ってあんたの今後の将来にもかかわってくるんじゃないの」

 別にウチはどうなったって別にかまへん。ウチは大事なフリージアが最強でいられればそれでいいんや。ウチはそれを邪魔しうる存在のすべてを排除するだけの存在やから。だから周りに何を言われようが気にせえへん。

 たとえ地獄に落ちようともな。

 それほどにウチはフリージアに返せんほどの借りがあるんや。

「ウチの心配より、自分の心配したらどうやの? エルハーベント家の跡取りさん。いや『元』つけなあかんな」

「ああああぁぁぁぁぁぁぁああああぁあぁぁぁ――――‼」

 ウチの挑発にかかった彼女がウチ目掛けて駆けてくる。

 ウチの後ろに控えていた信奉者が一歩前に踏み出したがウチはそれを制した。

 その信奉者は抗議の視線を送ってくるのでウチは言った。

「たしかにクリスはんは戦闘面も優れているってデータにも出てたんやけど……」

 それはあくまでデータ上、実戦では変わってくる。ウチはひらりとクリスはんの突進を回避する。彼女は綺麗な長い金髪の髪を揺らして、勢いよく前に倒れ込む。

 倒れ込んだ彼女にウチはそっと近づき耳にかかったマイクセットをそっと取り上げ、耳打ちをする。

「どうやら、クリスはん。あんたには妹がいるみたいやな、血のつながっていない後妻の子の」

 ターゲットの事は一から百まで調べ上げる。それで浮かび上がってきた弱点。


「今度はあんたが代わる番やね」


 私がマイクを取り上げたため、辺りのモニターからウチの名前と『WIN』という文字が浮かび上がる。

「ああぁぁぁぁぁああああぁあぁぁぁぁあぁぁぁあああ‼」

 彼女は大きな慟哭を揚げる。

 ごめんな、クリスはん。あんたは新チーム『フェルクレイリィ ヒナ』の中でも有望株やったんや。若い芽を早めに摘ませてもらったわ。

 だから、堪忍してとは言わへん。言い訳もしまへん。

 アンタの怒りと恨み、それらのごうを背負ってウチは生きていくさかい。

 ウチは一度だけクリスはんを見た後、そのステージから去った。

 その慟哭は遠くまで響いとった。ウチはそれをBGMにしてその場を後にした


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