櫻田柳
双見中央学園高等学校、一年C組の教室。
一人の女子生徒が自分の席でミステリ小説を読んでいた。
彼女の名前は櫻田柳、16歳。
家族構成は父・大学生の兄・公立高校に通う兄・中学生の妹の5人家族。
誕生日は4月上旬、血液型はB型。趣味は読書と人間観察で、自分のことを
「僕」と呼ぶちょっと変わった女の子である。
入学して約1か月が経っているが、クラスに馴染むことができずに
休み時間ではほぼ一人で読書をして時間潰しをすることが彼女の日課と
なっていた。
授業が終わり、掃除当番を済ませた櫻田は帰り支度をして早々と教室を
出て行った。向かった先は下の階にある図書室。
図書室はあまり人気がなく、いたとしても図書委員の生徒と司書
の教師と2、3人ほどの生徒しか見たことがない。
そんな別世界のような静かな部屋へと行くのが楽しみで彼女は毎日学校へ
と通っているようなものだった。
図書室へとたどり着いた櫻田は、ゆっくりと扉を左手で引いて中へと入って
行く。そして、読み終えた小説を返却してミステリ小説が置かれてある棚か
らまだ読んでいないものを探す。
「あっ、これCMでやってたやつだ」
彼女が目を付けたのは、今年1月に放送されたミステリドラマの原作本。
テレビを付けた際に何回もそのCMを見ていたために覚えてしまっていた
のだ。
「今度はこれにしよう」
だが、まだ図書委員や司書の教師がいないために持ち帰ることが出来ない。
そこで待っている間、空いている席で読むことにした。
「どこで読もうかな…」
現在、彼女以外は誰もいないため、自由に選べるということから迷ってしま
う櫻田。しばらく席を眺めて考えた結果、一番端っこの窓側の席へと座ること
にした。
椅子に腰かけて、足元に鞄を置いてすぐに小説のページをめくって読み始め
た。
誰もいない図書室で、誰にも邪魔されない世界へと彼女は入り込もうと
していたのに…それは、ある一人の人物によって阻止されてしまう。
扉が開く音にびくっと反応して、思わず顔を扉の方向へと向く。
図書委員か司書の教師かと思っていたが、彼女の予想は大きく外れた。
そこにいたのは…金髪の不良だった。