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第2話

 俺の驚きと戸惑いを誰か理解出来るだろうか?

 何処とも知れぬ惑星に何故か流れ着いてしまった俺。惑星を解析してみると、どうやら、地球とほぼ変わらない環境のようで、確かに、知的生命体が存在する可能性はあった。かなり高かったと言ってもいいだろう。

 でも、誰がこんな状況を予測出来るっていうんだ?俺の運命を操って笑い転げている神様って奴がもしもいるのなら、そいつは完全にイかれてる。きっとそいつは、絶望とか、戸惑いとか、そういうのが大好きなんだろう。だから、こうやって訳の分からないことをやり始めるんだ。

 俺の目の前には、一匹のドラゴン。ファンタジー物のゲームや漫画を見たことがある人なら簡単に思い浮かべることが出来るであろう、あの西洋竜が、俺の目の前にいる。

 全体的に色は銀色で、陽の光を受けてキラキラと輝いている。

 俺はまだ海から上がっていない。体はまだ完全に海水の中にある。俺とドラゴンの距離は約100m程離れているが、お互いに相手から目を離さない。いや、離せないのだ。相手が自分にとって驚異となるのかがどちらも測りきれていないから。

 まあ、俺はただ驚いて動けないってのが大きいけどね。だって、空想の中の存在がいきなり目の前に現れたんだぜ?おまけに、相手が日本語で話しかけてきたんだから。別に、翻訳システムが作動したわけじゃなさそうだし、こいつは日本語を喋れるってことか。

 ・・・ってことは、会話が出来るってこと・・・だよな?とりあえず、こうして睨み合っててもしょうがないし、こっちからアプローチしてみるか。

「・・・あー、その、初めまして。俺、春木幸平って言います。・・・あの、話してることわかりますか?」

「うむ。伝わっておるぞ。儂はグラムドラゴンのレインじゃ。もっと長い名前なのじゃがな、レインで構わん。」

「は、はあ・・・。」

「ところで、お主、いつまでそこにいるつもりなのかの?上がってくるがよい。」

 そう言ってレインは巨大な体を反転させ、砂浜の近くの森の手前まで戻っていく。

 よかった・・・。話が通じるドラゴンだった・・・。

 安堵して俺が海から砂浜に上がると、それを見ていたレインの瞳が怪しく光ったような気がした。

「その体・・・なるほど、<バージリン>共の手先だったのか。お主は安全だと思ったのじゃが、儂の目も狂ってきたのかの・・・。」

「は・・・?」

 その途端、俺の視界いっぱいに大きく表示が出る。




『種族:グラムドラゴン』

『材質:グラム鉱石・ドラゴンドライブ』

『体長:35・7m』

『驚異度:推定Sランク』

『危険です、危険です、危険です、危険です、危険です』




「は、はあ・・・!?」

 その表示は一瞬で消え、次の瞬間には新しい表示が視界に広がっていた。



自動戦闘開始(オープン・コンバット)



 その瞬間、俺の体は風になった。

 30mを超えているハズの巨体は、まるでその重量など初めから存在しないかのようにドラゴンに迫った。右手が一瞬で剣に変形し、レインの喉を狙う。

 しかし、レインはそれを右に少しだけ体をスライドさせることで紙一重で回避した。ギャリンと嫌な音が響く。レインは完全には回避出来なかったようで、喉の部分の鱗が数枚剥がれて宙に舞う。

「ふん!」

 だが、それを気にした様子も無く、レインはその体勢から俺の頭目掛けて頭突きをしてきた。

「う、うわ・・・!」

 ガンっという音と共に彼は弾かれる。どうやら、障壁に阻まれたようだ。こちらの左手が彼に迫るが、彼は弾かれたと同時に背中の巨大な翼を使い、後ろに飛んでいた。

 着地した彼と俺は距離を計り、ジリジリと近づいていく。

「っは・・・!?」

 あまりにも突然始まったことに思考が飛んでいた。いやいや、意味がわからない。何で俺はレインと戦っているんだ?俺は、戦おうとなんて思っていないし、今も体を動かしていない。

「嘘、だろ・・・?」

 あの変態は殺したはずだ。俺を縛り、操る人間はもう居ないはずだろう!?何で、止まらないんだよ・・・!?

「止まれ、糞、止まれよ!止まれって、言ってんだろ!」

 しかし、俺の視界には、



『アクセス拒否。レベル1のアクセス権限では自動戦闘を解除出来ません。レベル3以上の権限を持つ責任者のアクセスでのみ、終了することが出来ます。』



 なんだよ・・・それ?

 俺以上の権限?それは、あいつの事か?

 俺の脳裏にあの悪夢が黄泉返る。燃えている街。逃げ惑う人々。俺を狙う戦闘機。あいつの笑い声。ガレキの山。潰れ、引き裂かれ、消し炭になった人間。あいつの笑い声。笑い声。笑い声。笑い声・・・・・・。



『エラー、エラー、エラー、エラー』

『原因不明のエラー発生。戦闘行為を一時中断します』



★★★



 突然、敵の動きが止まった。

 何故かは分からないが、ここは好機と見るべきか、それとも、罠なのか?

「しかし、此方もこれ以上はキツイしのう・・・。」

 戦闘行為自体が好きではないのだから、精神的に疲れるのも仕方がないが。おまけに、<バージリン>の連中はやっぱりタチが悪い。あんな子供の頭を惑星制圧用の<カイン>に乗っけるとは。

 恐らく、本物の人間を使っているんだろう。既に生きてはいないだろうが、コンピュータでも脳に仕込んで、生前の行動や思考を読んで実行しているんじゃないだろうか。

「全く、相変わらず、胸糞悪くなる連中だわい。」

 確かに、思考コンピュータとして人間を使うほうが効率はいいのだろう。しかし、奴らならば自前で高性能AIくらい楽に作れるだろうに、こんな少年の脳みそを使うとは。恐らく、自分たちの楽しみを優先したということだろう。そういう連中だ。

「・・・儂がお主を開放してやろう。」

 大きく息を吸い込む。体内の魔力をドラゴンドライブへ集約する・・・!ドラゴンドライブは激しく輝き、その魔力が口内へと溜まっていく。

「さらばじゃ!」

 そして、ついにその口から終焉の炎が吐き出される。その色は銀。その名は<ドラゴンブレス>。

 その炎は対象を一瞬にしてグラム鉱石へと変化させ、次の瞬間砕け散った。

 キラキラと銀色の砂が舞い散る。・・・そこには、何も残っては居なかった。



★★★

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