下山は1合目でよく怪我をする
遅くなってすいません
まさか投稿ミスしてるとは思わなかった……
本当に直書きしてなくてよかった…………
森の中をひた走る。と言っても、
和装のハルカや体力の無いアキラを気遣って
そこまでのスピードはない。せいぜい早歩き程度だ。
確かに急がないといけない状況とはいえ、
下手に転んで怪我をしても仕方ないし、
アキラを担ぐとなると逆にスピードは絶望的なものになるだろう。
時刻的には昼過ぎといった時間だが、
枝葉で遮られて森の中の視界はすでに良くない。
光量ももちろん、視界も良いものではなかった。
先頭を歩くのは私、次に体力もあって、
見つかっても言い逃れできそうな美鈴さん、
次にハルカ、レイ、沙耶歌、アキラ、大道の順になっている。
体力的に大道が先頭に出て道を作ってもらったほうが良いし、
本人もその気だったのだが、万が一の時にアキラを担げる人間がいるという事で、
大道は最後を歩いている。
(速度を考えるとアキラに前を歩かせる事は出来ない)
壁の穴を抜けた後は黙々と歩き、誰も話さない。
私を含め、皆緊張しているからだろうし、
何よりそれぞれに考える事が多すぎた。
あの村で見た事、聞いた事、
アキラとハルカ以外は日帰り旅行よりも短い時間で、
あまりにも多くの事があった。
きっと、思うところも多いだろう。
しばらく進むと、大きな木を回り込むように道が迂回し、
薄い茂みの向こうに見覚えのある道が見え、そこにT字に合流していた。
「ここは来る時通った道に繋がっていたんだな」
大道は感心したように呟く。
秋乃が適当に整備しているのだろう、
手で少しかき分ければどかせられる様に
茂みを薄く動かしやすいように、意図的に調整してあった。
「ついに……」
ここからは今までのスピードでも
5分もあれば十分山を下りれる。
感慨深げにアキラが呟いたとき、
「待った!」
静かに、けれどはっきり皆に静止をかける。
丁度茂みをかき分けようと手を伸ばしていた大道が
ギクリと手を止めた。
「…………人だ」
合流した先の道を、少し村よりに行った所に、
大人の男が二人立っているのが見えた。
二人は何か話しているらしいが、
ここから7~8mほど離れていて流石の私でも聞き取れない。
「何を話してるんだろう?
というか、あれはあの村の人なのかな?」
沙耶歌が首を傾げると、
アキラがすぅっと目を細め、ブツブツと喋りだした。
「ま…………ない、ほん……のか
…………のいう事……そん……」
「どうしたんだい?」
美鈴さんがアキラの顔を覗き込むように尋ねると、
アキラは首をフルフルと振り、
「あれは村人だ。僕らを待ち伏せしている。
そんな内容の会話をしていた」
「聞こえたのか!?」
「いや、読唇術です」
「どくしん……じゅつ」
大道が口をパクパクしている。
大道、頭の中で誤変換してるな。
「心を読むほうではなくて、
唇の動きで相手の台詞を探る技術です」
「し、知ってる!」
「大道……」
美鈴さんの目線がいつも大道に向くものとは違った、
哀れむようなものになっている。
「でもなんでそんな技術を……」
レイの質問に、ふっと、
アキラは懐かしむように笑い、
「昔、とある人を守りたくてね。
色々と練習したのさ、
例えば声帯模写、『声真似とかね』」
と、レイそっくりの声で言い、
声を戻して男たちの言葉を片言で読み取り始めた。
「『ここに、くるということに、なっている』
『しかし、からのくるまが、みつかってから
かなりの、じかんがたって、いる
やはり、いったん、もどったほうが』
『いや、そんちょう、はわれわれに、
ここのけいびを、おまかせになった
ほかのばしょは、ほかのやつらに、まかせればいい』
『その、ほかのやつらに、なにかあったのかも、
しれないから、いってるんだ』
『いちばん、たいせつなのは…………
だいにの、はるかそんちょうを、ださないことだ』」
「ちょ、ちょっと待て。ハルカ村長!?」
大道が混乱気味にアキラとハルカを交互に見比べる。
ハルカは…………黙って俯いていた。
「おい」
誰にも聞こえないように、アキラに囁く。
「どういうつもりか説明してもらおう。
場合によっては――」
私はすっと爪を出し、喉元に狙いを定める。
「別に、彼女にも前に進んで欲しいと思っただけさ。
それと、これは重要な事なんだけど」
「?」
「僕はこれから何も『聞こえない』からね」
アキラは自分の耳元を指でトントンと叩いた。
「聞こえない?」
「あれだよ」
アキラが指差したほうを見ると、
背を向けていて一見分かりにくいが、
男の一人が鎖状に繋がった鈴を持っている。
「『聞こえない』は分かったが、
何故『これから』なんだ?」
私が訪ねると、アキラはまるで面白がっているように、
ひらひらと手をふり、
「いや、たぶんもうすぐ見つかると思ってね」
「何?」
ブーン
何処からか聞こえるハチ独特の羽音。
「さっき見つけたんだけど、
すぐそばにハチの巣があってね」
視界の端で何か小さなものが飛び、
沙耶歌の手に止まる。
「ここに長居は出来ないと思うんだ」
「きゃー!」
ハチに刺された紗弥歌の悲鳴、
そしてそれを聞きつけて駆け寄ってくる
二人の男達が視界の端で見えた。
以後こんな事が無いよう注意致します……
次話は白かぼちゃさんです
お願いします