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人見知りする碧  作者: くぃかそ 南晶 EARTH 白かぼちゃ うわの空
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変わる

EARTHです。

ごぶさたしてます。


しばらく黙々と歩いた。

いつまで歩くのかと思っていると秋乃が立ち止まる。

私は思わず見上げた。

目の前に現れたそびえ立つ壁を。


「ここをくぐりぬけて、まっすぐ走って」


秋乃は壁にあいている大道がぎりぎり体をねじ込めるかくらいの穴を指さして言った。

滝の音が遠くに聞こえる。

心なしか、それも私達を追いたてる唸り声に聞こえた。


「秋乃さんは…?」

「レイ、そんな奴心配することないぜ」

「大道!」


また大道が声を荒立てる。

秋乃は徐に瞬きをしてレイを見つめた。


「レイ、私はね、占い師なの」


何にそうしているのか、言い聞かせるように秋乃は言った。


「どういう、意味ですか」「そのままの、意味よ」


レイだけでなく、みんな分からないと言う顔をしている。

アキラだけが何もかもわかっているようにあくびをした。


「もう一度言うわ。私は、占い師よ。だから過去や現在のことはもちろん、未来だって視れる…でも神様じゃあない」


非力な占い師は乾いた声で笑った。


「本当はね、この道を私は教えちゃいけなかったのよ。貴方達はあの大きな岩をよけて、走って捕まって殺される運命だったの…だけど、私は」


言葉が切れる。

不思議に思って耳を澄ますと、滝の音に混じって、狂ったような人間達の声がした。


「さ、くぐって。無駄なことを話している暇はなかったわ。ここを誰が知っていたかは解らないけど、じき追手が来る」


秋乃は穴に美鈴、沙耶歌と順々に押し込んでいく。

ハルカ…そして苦労して大道を押し込んでいったん作業をやめた。


「レイ、アキラ。私は貴方達が嫌い」

「ああ」

「はい」

「…だけど、貴方達の母親は、大好き。だからあの子に変わって言うわ」


秋乃は何かを思い出すように言葉を切った。


「『どうか元気で…貴方達は私の宝物よ。生まれてきてくれてありがとう…』」


サァ…と風が吹いた。

秋乃にかぶってレイとアキラによく似た女性が視えたのは気のせいだったろうか。

アキラは無言で穴まで行くとかがんで皆の待つほうへと向かった。


「秋乃さん…あなたも…」


レイが穴をくぐり抜ける準備をしながら言った。


「私はここからは行けないわ。占い師は唯一、未来を意図的に変えられる者で、変えてはいけないものなのよ。悪いけれど私が貴方達にできるのはここまで」

「そう…ですか」

「それにやらなきゃいけないことも残っているしね」

「…あの」

「なに?」

「ありがとう…ございました。どうか、貴女も…お元気で」

「…えぇ」


レイは小さく会釈して穴の向こうへ行った。

私も続いてくぐり抜けようと入り口に前足をかける。


「ねぇ」

「なんだ?」


呼び止められて頭だけ振り向く。


「…変われると、思う?」

何が、とは聞かなかった。


「さぁ…」


沢山の殺気が近づいてくる。村人達だろう。


「…そう、ありがとう。二人を、よろしくね」

「ああ、こちらこそ。ありがとう」


そう言って、もう振り向かず穴を走り抜けた。

意外と悪いやつではなかったのかも、と一人で思いながら。



「待たせたな」



少し遅い私を心配していたのか、6つの顔に出迎えられた。


「いや」


沙耶歌が言った。

壁はあまり厚くはなかった。

なのに穴から完全に抜け出たら滝の音も、追っ手の気配も消えていた。


「行こう」


先が闇に消えた一本道を私達は歩き始めた。

おわった…。


次はうわの空さんです!

お願いします。

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