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人見知りする碧  作者: くぃかそ 南晶 EARTH 白かぼちゃ うわの空
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アキラの気持ちと逃走計画

「そうと決まれば話は早い。さっさとこんな村おさらばしよう!」


 話がまとまったところで間髪いれず沙耶歌が意見を出した。驚くほどの思い切りの良さに皆ついていき切れないが、唯一アキラだけが平然と対応する。


「それでこそ香坂さん。でもそれはちょっとまずいと思うんだ」


「見つかる前にぱーっと逃げちゃだめなのか?」


「それが出来れば今から出発してもいいんだけどね」


 アキラは肩をすくめて沙耶歌に笑いかける。そして私達にも聞かせるつもりなのだろう、周りを見回して視線が集まっていることを確認すると指を二本立てて説明を始めた。


「まず理由の一つ目。いくら注意を逸らしたといっても昼じゃさすがに人目が多い」


「それはそうだと思います。いくら抜け道を使ってもこの人数じゃ見つかってしまうかもしれません……」


 アキラの言葉に賛同するようにおずおずと手を挙げハルカが応じた。

 確かにこの人数で昼中移動するのは極力避けたいところではある。もし見つかってしまえば一般女性のハルカのいるこちらは走って逃げ切ることは難しいだろう。そして車に乗ったとしても、万一向こうにも車で追いかけられてしまえば最悪、私達の村の位置が知られてしまうかもしれない。それだけは絶対に避けなければならない事態だ。


「理由の二つ目。すぐ帰るつもりだったから抜け出してきたけど、それなりで戻らないといないことに気付かれる可能性が高い。それで追っ手がでてくるのは望ましくない」


 これには全員が異論なしと頷いた。別に私達は大立ち回りを演じたいわけではないのだから気付かれるのは遅ければ遅いほどいい。アキラの言葉を信じるならこれは夜中に出発で問題ないだろう。


「それなら夜中に出発したほうが良さそうだね。それにこっそり出て行くとはいえあんた達だって多少なり準備があるだろ。みんなはどう思う?」


 美鈴さんはぐるりとみんなを見回した。私も安全だというなら夜中に出発することに異論はないし、周りを見る限りみんなも同じ考えのようだ。


「よし、決まりだね。じゃあ深夜一時ぐらいにここを出て車に向かうことにしようか。アキラくんも遅れないようにね」


「わかりました。では僕はもう屋敷に戻りますね」


「しっかり脱出してくるように。先輩として言っておくとコツは気配を消すことだ」


 沙耶歌が親指を立てて訳の分からないアドバイスらしきことをしている。そんなことができれば脱出に苦労があるわけもなし、なんとも無意味なアドバイスだ。

 アキラも面白そうに親指を立てて返事をしている。そして出て行こうとするアキラにレイが声をかけた。


「絶対に来てくださいね」


「もちろん。絶対くるよ」


 もしかして来ないんじゃないだろうか。そんな不安を感じたのだろうレイの言葉にアキラはしっかりと答えを返した。その姿があまりに迷いがないように見え、私は思わず首をかしげた。


「なんでそこまで迷いがないんだ? さっきまで自分はここに残るっていってたじゃないか」


 さきほどまでの様子を見るに、アキラがここに残るといっていたのはそれが最善だと心の底から信じた上での判断だったはずだ。それをいくらレイに説得されたからといえ、ここまで短期間にはっきり変わるものなのだろうか。私の問いにアキラは苦笑して答える。


「さっきまでは残ることが最善だと、せめてもの罪滅ぼしだと思っていたんだ。でもレイに言われて、自分のしていることがただの自己満足だと気付かされて考えが変わった。そうしたらなんていうかな、逃げ出すことが楽しみに思えてきてね」


「楽しみ?」


「だってそうでしょ。レイにしたことを棚上げにして言わせてもらうと、僕はこの村の人たちが嫌いでね。そんな人たちが急にいなくなった禍神に気付いて大パニック。考えるだけで笑えてくるよ」


 アキラは本当に楽しそうに笑っていて――こいつ性格よくないな。

 私の視線に気付いたのか気付いていないのかアキラは楽しそうな笑いを引っ込める。


「それでレイについていって罪滅ぼしをするんだ。自分で自分を許せるぐらいに、もしかしたら一生かかってもできないのかもしれないけどね」


 穏やかな顔は今までのアキラとは比べ物にならなくて本当に憑き物が落ちたように感じられた。私としてもアキラのことをすぐに許せるとは思えないし、許す気もない。それでもこの村で禍神を続けているのに比べたらほんの一秒ぐらい、早く許してやらなくもないかもしれない。そう思った。


いつも安定の遅さで申し訳ないです……。


お次はEARTHさん、よろしくお願いします。

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