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人見知りする碧  作者: くぃかそ 南晶 EARTH 白かぼちゃ うわの空
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変な友人

 香坂沙耶歌。

 彼女はこんな田舎村では相当目立つ変人であり、私が普通の猫でないことを知っている数少ない友人でもある。

 私としては遭う度に追い掛け回されるので忘れられない存在ではあるのだが、レイも覚えているということはもしかして彼もなにか被害にあったのだろうか?


 レイはしばらく考えていたが思い出せなかったようで首を傾げながら電話に手をかけた。


「もしもし、私は潮騒図書館のレイと申します。図書の返却についてお話があるのですが沙耶歌さんはご在宅でしょうか?」


 しっかり言えてはいるのだが、どことなくぎこちない印象を与えるレイの敬語。喋りにくいなら喋らなければいいと思うのだがそうもいかないのが人間なのだろう。猫でよかったと思える瞬間だ。


「沙耶歌さんですか? 潮騒図書館のレイと申します。図書の返却期限が過ぎていますので返却をお願いします」


 なにやら会話を続けているとレイが困ったような顔になる。


「はい、ではしばらくしたら伺わせていただくのでよろしくお願いします」


 レイは頭を下げて受話器を下ろすとため息をついた。


「どうかした?」


「なんか返すから取りに来て欲しいんだって。電話かけ終ったら行ってくるよ」



  ◆



 私たちの眼前にそびえ立つ立派な門構え。電話をかけ終わったレイが美鈴さんの許可を得てやってきたのは、この村でも一、二を争う旅館だった。

 彼女と遭遇するのはいつも外だったので知らなかったがまさかこんな家に住んでいたとは。まぁあの変人がごく普通の家に住んでいても驚くのだけど。


 さすがに表から入っていくわけにもいかず裏に回り住居部のチャイムを鳴らす。

 しばらくすると家の中からバタバタという足音が聞こえてきた。


「やあやあ少年久しぶり。おお、猫ちゃんもいるではないか」


「ああ、沙耶歌ってクロさんのことだったのか」


 勢いよく扉を開け出てきた彼女がクロさんこと沙耶歌である。

 背中に届く長い黒髪にスラリとした身体つき。黙っていればおそらく美人といわれる人間なのだろう。黙っていれば。

 

 ちなみにクロさんというのはレイの名前について聞いた彼女が自分の髪を指し、「ならば私のことはクロと呼んでくれ」と言ったためついた名前だ。

 一応本名も聞いてはいたのだが、それからずっとクロさんと呼んでいたのでレイも彼女の本名は忘れていたのだろう。たしかに考えてみればこんな濃い人物はレイでも覚えていて当然かもしれない。


「でもクロさんなんであんな丁寧な喋り方をしてたのさ。普通に喋ってくれてれば電話のときに分かったのに」


「少年が分かってなさそうだったから、からかってやろうと思ってな」


「だから取りに来てって言ったの?」


「もちろんだ」


 なんとも迷惑なことを堂々と言う彼女だがこれで平常運転なのだからどうしようもない。


「猫ちゃんも久しぶり。いいネギを取り寄せたんだが一本どうだい?」


「断固として遠慮する」


 いい笑顔で言ってくる彼女の言葉を即座に切り捨てる。

 彼女は私が人間と同じ食事を取れると知ったときから普通の猫が食べられないものをちょくちょく勧めてくるのだ。

 ネギ入り料理は食べてあげたのだが彼女としてはそのままで食べてほしいらしく納得しない。生ネギの味、苦手なのに。


「やれやれ手厳しいな。生で食べても甘いと評判のネギだぞ?」


「はいはいそこまで。そんなこと言ってないでクロさん本返してよ」


 途端、饒舌だった彼女の口が止まり目が泳ぎ出す。


「それなんだが……。すまんな、まだ見つかっていないのだ」


 なんでも電話を受けて探し始めたのだが見つからなかったらしい。見つける前に来てくれと言ったことより、見つからなくてすまなさそうにしていることにびっくりだと言ったら失礼だろうか。


「本当に申し訳なく思っている。お詫びにと言ってはなんだがこれを納めてほしい」


「名前リスト?」


「名前を付けるのが大変だと聞いていたからな。私がいいと思った名前を書きとめておいたのだ」


 彼女にしてはなんとも気が利いている。私も内容が気になったので、レイにしゃがんでもらい一緒に見てみた。

 なになに、『暴威(ボーイ)』、『主人公(ヒーロー)』……っと。


「これ破ったら?」


「そうだね」


 レイの手によって丁寧にバラされていく名前リスト。


「ひ、ひどい!」


「ここにある名前の方がひどいと思うよ」


「猫の視点からも同意」


「私のセンスに時代が追いついていないのか……」


 私は長いこと生きてきたから世の中何が起こるかわからないことを知っている。でもそんな時代は来ないと断言しよう。


「まぁいいや。バイト中だしもう僕は戻るからまた自分で返しに来てね」


「今日はすまなかったな」


 彼女はすまなさそうに頭を下げて謝った。普段はふざけていても謝るべきところはしっかり謝る。そういったことができるから代名詞が変人でありながらも評判は地に落ちていないのだろう。


 そんな彼女にレイが手を、私が尻尾を振って図書館に戻った。

 バイトの息抜きにはなったのかな?



三番手、白かぼちゃでした。

リレー小説なんだしこんなイロモノな回があってもいいよ……ね?


ではEARTH様よろしくお願いします。



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