ガーデニングの最後の花
「夏のホラー2011 ~夏の夜には怪談を~」企画の参加作品です。
企画参加意思は非表明ですが、冷や奴くらいの涼をどうぞ。
┌――‐‐‐
わ
たし わ
わたし は花を
そだててる。の。
ずっと 見に
来 てくれ る
の ま て たの
に。
だれ より さ
き に見に き て
欲し か た
の
に!
で も
も うす ぐ。
会い に い
け ます。
会 え ま
す。
花はだれ
に も
さわら
せ
な
い。
‐‐‐――┘
┌――‐‐‐
ちが
う。
あな た だ
け を ま
て いる
の に。
だ
れ?
この 花 だけ
は さ
わら せ
な い。
さい ご
の
アカ
あか い
花
だけ
は。
あ な た
が。
だ れ
な
の。
だ
れ!
だれ!
見
な い
で!
みぃ な
いぃ
でぇ
触 ら な
いぃ
でぇ ぇ
だれ 摘ませな
い!
誰に も!
だれ
に!
も!
触
見
‐‐る―――┘
な ル
ナ
て
電話機まで伸ばされた片手が、受話器ごと電話機を掴む様に触れる。
口から小刻みに漏れ出て震える息。その所為で苦しくなる呼吸。
それでも頭の中では、受話器を手に取る事しか考えられなくなっていた。
さっき叫び声をあげながら崩れた腰も足も、震えるばかりで、立てる
気がしない。
恐怖の為に何度も指先や手の甲で弾いていた電話機を、やっとの思い
で捕まえたのだった。
「電話… 電話を!」
今度は、電話機を掴んだ手が中々離れない。
ひっ… ひっ…
ひきつる様な声が喉から鳴るのを止められない。
それでも握った手を更に小さく握り込む様に受話器を手に納めたら、
リダイヤル『1』のボタンを押して、受話器を耳元に強く押し当てた。
―― 暫く、続いたコール音が途絶え。
受話器の向こうから、自分の名前を呼ぶ声を聞いた途端に。
私は助けを乞う声をあげる事だけで、精一杯になっていた。
「助けて! お願い、今すぐ来てよ!
女が居たのよ! お… 女が居たの!
私の部屋に女が立っていたのよっ! みまっ 見間違いじゃないの。
服が、血で真っ赤で、目が… ああっ そう、
ひっ ひっ…
目から花が咲いていたのよおお!!!
あの女。 きっとあの女だよ。
10年前の事件の… きっとこの家だったのよ!
あんなの、あの事件で見つかった女に決まってるわ! あんな姿!
来て! 来てよ!… 」
まだ、ずっと見られている気がした。
動こうとするだけで、現れる気がして、動けなかった。
ドアが鳴る。
鍵の開く音がなって、自分の名前を呼ぶ、待ちわびた声。
部屋の扉が開いて、荒い息をついて、その人は助け出しに来てくれた。
「その、…スコップはなに?」
┌――‐‐‐
お
か
え
り
な
さ
い
‐‐‐――┘