6.薫風る
「ほんとにいいんですの?」
蘭、晶子、朱里、稟月の四人は、中庭で昼食を取っていた。
「なに、蘭」
晶子は落ち着いて言う。
「なにじゃありませんよ。あの人ですあの人」
蘭は名前も言いたくない様子で、こちらを見る。可愛いなぁー。頭触ったら、怒りそう……。
それより、質問はあれだろう。あれ。
「‥‥もういいかなーって」
「なにが?」
と稟月は蘭の隣を勝ち取っていた。
「うーん、面倒、いや、諦め__」
「とても恋の話とは思えないね」
朱里は場所を負け、朱里の言ったとおり、今日も晶子の隣……であった。
「付き合い長いしね」
「晶子、わたくしには責任の一端があると思ってますの」
真剣な眼差しに、言葉を挟まずに聞く。
「ですから、なんでも相談してくださいね」
「気にしないでよ。どちらかというと、それはこちらの台詞。蘭こそ、なんでも言ってね」
見つめ笑い合う二人と、それを見てまた笑う二人、爽やかな風は夏の始まりを告げそうだ。
「聞いてよー、晶子」
なんでも__を逸早く使ったのは朱里だった。もちろん、朱里に言った言葉ではないのは、この場の誰もが承知していた。
「なんだね朱里さん」
こういう朱里は、と冗談めに返す。
「最近、二組の熊川と三組の兎田が上手くいきそうなんだよ」
誰?その捕食関係を考えてしまう二人は。
「へー、あの二人が」
「あー、お聞きしますわよね」
「え?」
「晶子って、疎すぎる」
「はっ!なんかいい歌詞が……うーん」
脈絡なく、唐突に声に出す。軽音楽部の稟月は、新曲の歌詞に悩んでいるらしい……。なにが引っ掛かったのだろか。歌詞?ん?何か引っ掛かる__
「あ、小説どうしよう」
「わかった、晶子からもらって、『幼馴染と恋は発生しない』これでいこう」
「え、恥ずかしすぎる」
「悩んでるときから、恥ずかしかったよ」
「え〜」
「なんの話ですの?」
項垂れる晶子をよそに話は盛り上がる。
〈おまけ〉
「ねぇ?」
なにとこちらを見る馨。
「休日まで、あなたに付き合っているのよ?」
「うん」
「なにかないの?」
突然家に来て馨に誘われたために、しょうがないかと誘いを受け、公園の出店でアイスクリームを食べていた。
「付き合ってくれて、ありがとう」
恥ずかしそうにお礼を言っている。どうせ演技だろう。
「そっちじゃない」
これまた恥ずかしそうに顔を傾げている。
「付き合いましょう」
煩わされるくらいなら、こちらから断ち切るまでだ。
「き、君が言うの」
おや、顔が真っ赤だ。そろそろ夏だし……なんてボケなわけもない。これは、ずっとしっかり照れていたのか。これは面白い。もう少しからかってもいいな。
馨の赤面と、晶子の浮つきが上がった。




